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【書評】チームが機能するとはどういうことか ― 「学習力」と「実行力」を高める実践アプローチ

【書評】チームが機能するとはどういうことか ― 「学習力」と「実行力」を高める実践アプローチ

会議で意見が出ない、失敗が改善につながらない、部署を越えると連携が止まる。『チームが機能するとはどういうことか』は、こうした問題を人選や相性ではなく、学びながら協働する「チーミング」の仕組みから捉え直す本です。

本記事では、心理的安全性、フレーミング、失敗、組織の境界がどう結びつくのかを整理し、読みやすさや注意点、実務への活かし方まで検討します。購入前に、自分の悩みに合う本か、今読む価値があるかを判断しやすくなるように紹介します。


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結論|この本はどんな人に向いている?

結論|この本はどんな人に向いている?

この本をひとことで言うと

『チームが機能するとはどういうことか』は、優秀な人材を集めても連携がうまくいかない組織に対して、心理的安全、失敗からの学習、組織の境界、リーダーシップを通じて、協働しながら成果を出す仕組みを考える本です。


向いている人

特に向いているのは、会議で意見や懸念が出ない、部署同士で情報を共有できない、失敗が改善につながらないと悩んでいる管理職やチームリーダーです。本書は、こうした問題をメンバーの性格や能力不足だけで判断せず、仕事の捉え方、発言への不安、失敗への反応、階層や専門分野の隔たりといった複数の角度から整理します。

部門横断プロジェクトや、専門の異なる人が協力する仕事に携わる人にも合っています。固定されたメンバーで時間をかけて関係を築く方法より、状況や参加者が変わっても協働を成立させる「チーミング」に重点を置いているためです。また、心理的安全性を単なる話しやすさではなく、組織学習や成果との関係まで含めて体系的に理解したい人にも適しています。


向いていない人

一方、すぐに使える声かけ集や、短時間で実践できるチーム運営のコツだけを求める人には、やや合わない可能性があります。研究、概念、組織事例を積み重ねながら論点を掘り下げる本なので、簡潔な入門書というより、チームが機能する条件をじっくり考える経営組織論に近い読み味です。

性格診断を使ったメンバー編成法、懇親会のアイデア、リモート会議ツールの使い方を知りたい人にも、目的が異なります。心理的安全性だけを短く学びたい場合も、本書はフレーミング、失敗、組織境界、仕事の性質まで扱うため、範囲が広く感じられるでしょう。


先に結論(買う価値はある?)

チームの連携不全を表面的な人間関係の問題で終わらせず、組織の仕組みとして理解したい人には、買う価値があります。チームを一度完成させるのではなく、その場にいる人々が知識を出し合い、学習しながら実行し続けるという視点を得られるからです。

特に、リーダーがすべての答えを示すことに限界を感じている人や、心理的安全性を導入しても成果につながらないと悩んでいる人には、問題を見直す枠組みになります。手軽なノウハウ本ではありませんが、変化の多い仕事で協働を成立させる原理から学びたいなら、時間をかけて読む意味のある一冊です。


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要約|この本の内容を3分でつかむ

要約|この本の内容を3分でつかむ

重要ポイント3つ

1つ目は、チームを固定された集団ではなく、仕事を進めながら協働関係をつくる活動として捉えることです。本書が扱う「チーミング」では、最初から理想的な人材や役割分担がそろっていることを前提にしません。立場や専門性の異なる人が、質問や情報共有、相互調整を重ねながら、必要な連携をその場で形成していきます。

2つ目は、心理的安全性、フレーミング、失敗からの学習、境界を越えた協働が、別々の施策ではなく一連の仕組みとして扱われていることです。率直に発言できるだけでは、チームの成果にはつながりません。異論や懸念、失敗から得た情報を共有し、部署や専門領域の壁を越えて次の判断や改善に生かすところまでが、学習するチームには求められます。

3つ目は、仕事の性質に応じてチームの動かし方を変える必要があることです。進め方がある程度定まった業務と、複雑で予測しにくい業務、正解そのものを探すイノベーション業務では、必要な管理や学習の方法が異なります。本書は、どの職場にも同じ成功法則を当てはめるのではなく、業務の不確実性を踏まえて協働のあり方を考えます。


著者が一番伝えたいこと

本書全体を貫いているのは、変化が激しく複雑な仕事では、学習を終えてから実行するという順序が成り立たない、という主張です。一人の管理者や専門家が必要な知識をすべて持つことは難しく、立場や分野の異なる人々が、仕事を進めながら情報を出し合い、考えを修正し続けなければなりません。

そのため、重要なのは「理想的なメンバーをそろえること」よりも、今いる人々が協働できるプロセスをつくることです。本書は、チーミングの基本を示したあと、フレーミング、心理的安全、失敗、組織の境界へと論点を広げ、最後に仕事への適用とケースへ進みます。協働の必要性を理解するだけでなく、認識と実践の隔たりを埋めるところまでが、本書の狙いです。


読むと得られること

本書を読むと、チームが機能しない原因を、メンバーの性格や能力不足だけで判断しにくくなります。会議で意見が出ない背景には何があるのか、失敗が共有されても改善につながらないのはなぜか、部署や専門の境界がどこで情報を止めているのかを、複数の視点から整理できるようになります。

実務では、プロジェクトの目的や前提を「計画どおりに進める仕事」と決めつけず、学習を必要とする仕事として捉え直すことにつながります。リーダーは答えを急いで示すのではなく、質問や懸念を引き出す問いを考え、失敗を個人の責任だけで終わらせず、判断や業務プロセスとの関係を検討できるでしょう。

読み終えたあとに残るのは、よいチームは人選だけで決まるのではなく、率直に関わり、学び、修正し続ける行動によってつくられるという視点です。チームの問題を人間関係の話だけで終わらせず、組織の学習力と実行力の問題として捉え直せることが、本書から得られる大きな価値です。


内容の全体像|章(目次)の流れと読みどころ

内容の全体像|章(目次)の流れと読みどころ

全体の設計(章の流れをざっくり)

本書は、チームが機能しない原因をいきなり個別の手法で解決するのではなく、まず「チームとは何か」という前提から組み替えていきます。序盤で、固定された集団ではなく、状況に応じて協働するプロセスとしてチーミングを定義し、なぜ現代の仕事に集団で学ぶ力が必要なのかを説明します。

中盤では、協働の重要性を理解していても実践できない理由を、仕事の捉え方、発言への不安、失敗への反応、部署や専門の隔たりから掘り下げます。終盤では、それまでに整理した条件を実際の仕事へ接続し、業務の性質によってリーダーシップや協働方法を変える必要性をケースで確かめる流れです。全体は「概念を捉え直す→協働を妨げる要因を理解する→実務で使う」という順で設計されています。


大見出し目次(短い目次)

  • 序文 エドガー・H・シャイン
  • 第1部 チーミング
    第1章 新しい働き方
    第2章 学習とイノベーションと競争のためのチーミング
  • 第2部 学習するための組織づくり
    第3章 フレーミングの力
    第4章 心理的に安全な場をつくる
    第5章 上手に失敗して、早く成功する
    第6章 境界を超えたチーミング
  • 第3部 戦略実行しながら学習する
    第7章 チーミングと学習を仕事に活かす
    第8章 成功をもたらすリーダーシップ


各章の要点

第1章では、チームを人の集合ではなく、協働しながら学ぶ活動として捉え直します。以後の章を理解するための基本概念と、実行しながら学ぶ必要性を押さえる章です。

第2章では、チーミングがどのような行動によって成り立ち、何がそれを妨げるのかを整理します。概念説明から具体的なリーダーシップ行動へ移る橋渡しになります。

第3章では、仕事や役割、目的をどう意味づけるかが、メンバーの行動を左右することを扱います。計画を守ることだけに意識を向ける状態から、未知のことを学ぶ姿勢へ切り替えるための章です。

第4章では、質問、懸念、異論、失敗を共有するために必要な心理的安全を掘り下げます。ただし、居心地のよさそのものではなく、学習行動を可能にする条件として扱われています。

第5章では、失敗が発生しただけでは組織は学ばないことを示し、原因と状況を結びつけて改善へつなげる考え方を整理します。心理的安全を実際の学習へ進める章でもあります。

第6章では、部署、階層、専門職、組織などの間にある境界が、知識共有を妨げる問題を扱います。個々のチーム内の関係から、組織横断の協働へ視野を広げる位置づけです。

第7章では、前章までの考え方を日常業務に組み込み、継続的に学習・改善する方法へつなげます。理論から実践へ移る中心的な橋渡しとなっています。

第8章では、ルーチン業務、複雑な業務、イノベーション業務を比較し、仕事の性質によって有効なチーミングが変わることを検討します。本書全体の考え方を、異なる状況に当てはめて確かめる最終章です。


忙しい人が先に読むならここ

時間が限られている場合は、まず第1章で「チーミング」が一般的なチームづくりとどう違うのかを押さえるのが先です。この前提を飛ばすと、心理的安全性や失敗の章を個別の施策として受け取りやすくなります。

次に読むなら、第4章、第5章、第6章の順がよいでしょう。発言できる条件、失敗を学習に変える方法、部署や専門を越えて知識を共有する難しさがつながり、本書が心理的安全性だけを扱う本ではないことが分かります。

最後に第7章を読むと、各論点を現場でどう結びつければよいかを整理できます。仕事による違いまで確認したい場合は、第8章へ進むと、すべてのチームに同じ運営方法を当てはめられない理由まで理解しやすくなります。


感想|読んで印象に残ったことと注意点

感想|読んで印象に残ったことと注意点

特に印象に残ったポイント

最も印象に残ったのは、チームを完成された集団ではなく、仕事を進めながらつくり続ける活動として捉える考え方です。チームが機能しないとき、メンバーの能力や性格、相性に原因を求めたくなります。しかし本書を読むと、発言を妨げる環境や失敗の扱い方、部署間の境界、リーダーの関わり方にも目を向ける必要があると気づかされました。

心理的安全性が、本書全体の一要素として位置づけられている点も印象的でした。意見や懸念を言いやすくするだけではなく、そこで共有された失敗や異論を学習に変え、部門や専門領域の壁を越えて次の行動へつなげるところまで扱っています。心理的安全性を単なる居心地のよさではなく、学習と成果を結びつける条件として理解できたことは、大きな収穫でした。

第1部でチーミングの考え方を示し、第2部でフレーミング、心理的安全性、失敗、境界横断を掘り下げ、第3部で仕事の実行へ接続する構成にも納得感があります。個別のテーマを並べるのではなく、それぞれがどのように支え合っているかを順番に理解できました。


すぐ試したくなったこと

すぐに試したいと思ったのは、会議やプロジェクトの開始時に、目的や役割だけでなく、メンバー同士がどのように依存しているのか、現時点で何が分かっていないのかまで言葉にすることです。計画を確定させてから動くのではなく、未知の部分を共有した状態で仕事を始めるほうが、質問や情報交換が生まれやすいと感じました。

もう一つは、リーダーがすぐに答えを示すのではなく、現場の知識を引き出す質問を増やすことです。著者は、協働の重要性を理解していても行動を変えられないという問題を扱っています。だからこそ、大がかりな制度変更だけを考えるのではなく、会議で誰が話し、どの情報が表に出ているかを見直すことから始めたいと思えました。

失敗についても、個人の責任だけで終わらせず、そのとき得られていた情報や業務条件、組織の仕組みと結びつけて振り返る視点を取り入れたくなります。失敗を責めるか許すかではなく、次の判断に使える情報へ変えるという考え方が実践的でした。


読んで気になった点

気になったのは、扱う範囲の広さと、出版社が前面に出している印象的な事例との間に少し差があることです。本書はチリ鉱山救出やIDEOなどの事例を入口にできますが、実際の読み味は、フレーミング、心理的安全性、失敗、境界横断、プロセス知識、仕事の種類といった概念を積み上げる研究ベースの実務書に近いものでした。

そのため、心理的安全性の章だけを読んで、すぐに使える声かけや会話の型を得たい人には、必要な答えへたどり着くまでが長く感じられるかもしれません。各テーマを独立したノウハウとして拾うより、チーミング全体の仕組みとしてつなげて読むことで価値が見えてくる本です。

一方で、この広さは弱点だけではありません。仕事の性質や組織の状況によって協働のあり方が変わることを、簡単な成功法則にせず扱っているからこそ、チームが機能しない原因を一面的に決めつけずに考えられます。軽く読み流す本ではありませんが、時間をかけて職場の前提を見直したい読者には、その密度が強みになると感じました。


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実践編|この本を読んだあと、どう行動する?

実践編|この本を読んだあと、どう行動する?

今日からできること

本書の考え方は、大きな制度改革を始めなくても、会議やプロジェクトでの問いかけから試せます。まずは、今いるメンバーが情報を出し合い、仕事をしながら学べる状態をつくることが出発点です。

  • 会議の冒頭で、今回の目的と「何が決まれば前進できるか」を共有する。
  • 担当範囲だけでなく、誰の仕事が誰に影響するのかを確認する。
  • 現時点で分かっていないことや、判断に不足している情報を言葉にする。
  • 結論を出す前に、懸念や異論、見落としている点がないか全員に尋ねる。
  • リーダーは答えを先に示さず、現場から状況や判断根拠を引き出す。
  • 失敗が起きたら、個人だけでなく業務条件や当時の情報も振り返る。
  • 部署や専門職の間で、必要な情報が止まっている場所を一つ探す。
  • 振り返りで得た学びを、次に変える行動まで決めて終える。

最初からすべて実行する必要はありません。まずは会議の最後に「今日分かったこと」と「まだ分からないこと」を確認するだけでも、実行と学習をつなげる一歩になります。


1週間で試すならこうする

Day1:現在の協働状況を観察する
一つの会議を選び、誰が発言しているか、どの情報が共有されずに終わったかを記録します。

Day2:目的と未知の部分を整理する
進行中の仕事について、目標、役割、他者との依存関係、まだ分からないことを書き出します。

Day3:質問の仕方を変える
答えや指示を伝える前に、現場が把握している事実や懸念を引き出す質問を一つ加えます。

Day4:発言しにくい情報を確認する
会議の終盤で、反対意見、心配な点、見落としの可能性を尋ね、出てきた内容を否定せず受け止めます。

Day5:小さな失敗を振り返る
最近うまくいかなかった出来事を選び、本人の責任だけでなく、当時の情報や業務条件まで整理します。

Day6:情報を止める境界を探す
部門、役職、専門性の違いによって共有されにくくなっている情報を一つ特定します。

Day7:学びを次の実行へつなげる
1週間で分かったことを振り返り、続ける行動を一つ、修正する行動を一つ決めます。

この1週間の目的は、すぐに理想のチームを完成させることではありません。仕事の中で発言、共有、振り返りを繰り返し、協働の仕方を少しずつ更新することにあります。


つまずきやすい点と対策

心理的安全性を高めようとして、「何でも自由に発言してよい」と伝えるだけで終わることがあります。しかし、発言が歓迎されるかどうかは、その後の反応で判断されます。最初は一つの会議で懸念を尋ね、出てきた意見を遮らず、次の判断にどう使うかまで示すと始めやすくなります。

失敗から学ぼうとして、すべての失敗を肯定的に扱うのもズレが生じやすい点です。本書の考え方は、失敗を無条件に歓迎することではありません。まず一件だけを対象に、何が起きたか、当時何が分かっていたか、どの業務条件が影響したかを分けて確認すると、責任追及と安易な容認の両方を避けられます。

リーダーが質問を増やそうとして、答えを出さずに現場へ丸投げする状態になる場合もあります。学習を促すことと、方向性を示さないことは同じではありません。目的や判断基準は明確にしたうえで、方法や現場情報について問いかける範囲から始めるのが現実的です。

また、部門間の境界を越えようとして、最初から大勢を巻き込むと調整だけで終わりかねません。情報が止まっている具体的な箇所を一つ選び、その情報を必要とする相手と共有方法を決めるところから始めると、チーミングを日常の仕事へ落とし込みやすくなります。


比較|似ている本とどう違う?

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まず違いを一覧で整理

3冊はどれもチームを扱いますが、中心となる問いが異なります。『チームが機能するとはどういうことか』は、流動的なメンバーが学習しながら成果を出す仕組みを広く扱い、『恐れのない組織』は心理的安全性を深く掘り下げます。『THE TEAM 5つの法則』は、チームを実務的な五つの枠組みから整理した本です。

重心 向いている人
『チームが機能するとはどういうことか』 協働と組織学習の全体像 流動的なチームを機能させたい人
恐れのない組織 心理的安全性の理解と構築 沈黙や発言の不安を深く考えたい人
THE TEAM 5つの法則 チーム運営を五つの法則で整理 実務に使いやすい枠組みを求める人


『恐れのない組織』との違い

『チームが機能するとはどういうことか』は、心理的安全性をチーミングを支える条件の一つとして扱います。フレーミング、失敗からの学習、部署や専門領域を越えた協働、仕事の性質に応じたリーダーシップまで含め、学習しながら実行する組織の仕組みを広く理解できる点が特徴です。一方の『恐れのない組織』は、発言への不安や沈黙が生まれる理由、心理的安全性を組織で築く方法に重点を置いています。

心理的安全性そのものを深く学びたい人には『恐れのない組織』が合います。心理的安全性を失敗共有や境界横断、組織学習、成果までつなげて捉えたい人には、本書のほうが目的に合いやすいでしょう。


『THE TEAM 5つの法則』との違い

THE TEAM 5つの法則』は、目標設定、人員選定、意思疎通、意思決定、共感創造という五つの枠組みでチームを整理します。チーム運営で何を確認すべきかを実務的に把握しやすいのが特徴です。本書はそれよりも、なぜ意見や失敗が共有されないのか、変化するメンバーがどう学びながら協働するのかを、研究や概念、事例を通して掘り下げます。

チーム運営の要点を整理し、職場で使いやすい型をつかみたい人には『THE TEAM 5つの法則』が向いています。人材や役割の設計だけでは解決しにくい問題を、組織文化や学習の仕組みまでさかのぼって考えたい人には、本書が適しています。


迷ったらどれを選ぶべき?

  • 流動的なチームの協働と学習を考えたい人:本書
  • 心理的安全性を深く理解したい人:『恐れのない組織
  • チーム運営の枠組みを実務で使いたい人:『THE TEAM 5つの法則

本書を選ぶべきなのは、チームが機能しない原因を、メンバーの能力や相性だけで終わらせたくない人です。発言しにくさ、失敗の扱い方、部署間の壁、リーダーの関わり方を一つの仕組みとして捉え、今いる人々が仕事をしながら協働できる状態を考えたい人に合っています。


著者はどんな人?|この本の信頼性を確認する

著者はどんな人?|この本を書いた背景

著者プロフィール

エイミー・C・エドモンドソン氏は、ハーバード・ビジネススクールのNovartis Professor of Leadership and Managementです。リーダーシップ、チーム、組織学習、心理的安全性を主な研究・教育分野とし、心理的安全性を扱った『恐れのない組織』などの著作もあります。Thinkers50では2021年と2023年に1位、2025年に2位に選ばれています。


著者の経験が本書にどう活きているか

エドモンドソン氏の専門領域は、本書が扱うチーミングの問題と直接つながっています。本書では、単にチームの人間関係を良くする方法を説くのではなく、心理的安全性、組織学習、失敗の共有、異なる専門領域を越えた協働、リーダーシップを一つの仕組みとして整理しています。

そのため、本書の信頼性は肩書きの高さだけにあるわけではありません。著者が研究・教育してきたチームや組織学習の領域を土台に、なぜ人は職場で質問や異論を控えるのか、どのような環境なら学習と実行を両立できるのかを体系的に扱っている点にあります。心理的安全性だけに限定せず、協働が成果へつながるまでの過程を広く理解するための背景を持つ著者です。


よくある質問(FAQ)

よくある質問(FAQ)

要約だけ読めば十分?

本書の大枠を知りたい人や、購入前に自分の悩みと合うか判断したい人は、要約を押さえるだけでも十分です。チームを固定された集団ではなく、学習しながら協働関係をつくる活動として捉えることが、本書の中心だと分かれば全体像はつかめます。

一方、職場で実践したい人は本文まで読んだほうがよいでしょう。心理的安全性、失敗からの学習、部門や専門領域の境界がどのようにつながるのかは、個別の結論だけでなく、概念や事例を順番に追うことで理解しやすくなります。


初心者でも読める?

組織論や心理的安全性の専門知識がなくても読めますが、手軽な入門書というより、研究や概念、事例を積み上げて理解する実務書です。チーム内で意見が出ない、情報共有が進まない、失敗を改善へつなげられないといった具体的な関心があれば、各テーマを自分の職場と結びつけやすいでしょう。

ただし、フレーミングやプロセス知識スペクトルなど、すぐにはイメージしにくい概念も登場します。結論だけを急がず、各章が何を解決するために置かれているのかを意識すると読み進めやすくなります。


どこから読むべき?

基本的には、第1章から順に読むのが適しています。チーミングの定義を押さえたあと、協働を妨げる要因を学び、最後に実務への適用へ進む構成だからです。各章の概念は互いに関連していますが、目的に応じた部分読みも想定されています。

時間が限られている場合は、第1章で基本概念を確認し、第4章の心理的安全、第5章の失敗、第6章の組織境界へ進むと、本書の中心的な問題意識をつかめます。その後、第7章を読むと、個別の論点を仕事へどう接続するかを整理できます。


読む前に注意点はある?

心理的安全性だけを詳しく扱った本や、すぐ使える声かけ集を期待すると、内容とのずれを感じる可能性があります。本書は、心理的安全性をフレーミング、失敗、境界横断、仕事の性質と結びつけて扱うため、テーマの範囲が広く、簡単な成功法則にはまとめていません。

また、失敗をすべて歓迎する本でも、階層やリーダーを不要とする本でもありません。失敗の背景を区別して学習へ変えることや、リーダーが答えを与えるだけでなく学習を促す環境を整えることが主題です。短時間で使えるテクニックを探すより、チームが機能しない原因を構造から見直すつもりで読むと、本書の価値を受け取りやすくなります。


まとめ|結局、この本を読む価値はある?

まとめ|結局、この本を読む価値はある?

この本の価値を3つで言うと

1つ目の価値は、チームが機能しない原因を見る視点が変わることです。問題をメンバーの能力や相性だけに求めず、発言を妨げる環境、失敗の扱い方、部署間の境界、リーダーの関わり方まで検討できるようになります。「誰を集めるか」だけでなく、「今いる人々がどう協働するか」を考える土台が得られます。

2つ目の価値は、心理的安全性を組織の成果までつなげて理解できることです。本書では、発言しやすい雰囲気をつくるだけで終わりません。異論や失敗から得た情報を共有し、部門や専門領域を越えて次の判断や改善へ生かすところまで扱うため、心理的安全性を単独の施策として捉えにくくなります。

3つ目の価値は、仕事の性質に応じて協働のあり方を考えられることです。ルーチン業務、複雑な業務、イノベーション業務では、必要な管理や学習の方法が同じとは限りません。簡単な成功法則を当てはめるのではなく、自分の職場に何が必要かを判断するための視点を持ち帰れます。


この本をおすすめできる人・合わない人

本書をおすすめできるのは、会議で異論が出ない、失敗が改善につながらない、部署や専門職の間で情報が止まると悩んでいる管理職やプロジェクトリーダーです。心理的安全性を単独で学ぶのではなく、組織学習やリーダーシップまで含めて理解したい人にも向いています。

一方、性格診断によるチーム編成法や、すぐに使える声かけ、懇親会のアイデアを求めている場合は、期待とずれる可能性があります。研究と概念を積み重ねながら、チームが機能する条件を深く考える本として選ぶのがよいでしょう。


読むならどう活かす?

最初に持ち帰りたいのは、チームを完成された集団ではなく、学び続ける活動として見る視点です。今日、進行中の仕事を一つ選び、計画どおりに進めればよい部分と、実行しながら学ばなければならない部分を分けて考えてみてください。

次の会議では、リーダーが結論を示す前に、分かっていないこと、懸念、異なる見方を引き出す問いを一つ投げかけるだけでも十分です。本書を一度に制度へ落とし込むより、普段の問い方や失敗の振り返り方を小さく変えるところから使うと、内容を現場へつなげやすくなります。


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兼松 学

ビジネス書・実用書を中心に、年間約80冊を継続して読んでいます。採用・面接・人材育成に関わる実務経験をふまえ、実際に読んだ本をもとに要約・感想・比較レビューを執筆しています。本の内容だけでなく、向いている人、得られる学び、仕事や日常への活かし方まで伝わる記事を心がけています。

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