悩み・目的から選ぶ 本の選び方

敬語に自信がないときの本の選び方|知識・口頭練習・話し方から決める

敬語の本を読んだのに、いざ上司や取引先を前にすると言葉が出てこない。「この言い方で失礼ではないか」と考えているうちに会話が止まる。そんなとき、もう一冊敬語本を買えばよいのか、それとも別のテーマを学ぶべきなのか迷いやすくなります。

敬語に自信がないからといって、次の一冊も必ず敬語本とは限りません。正しい敬語そのものが分からないのか、知っているのに会話で出てこないのか、敬語を使わない場面でも話しにくいのかで、先に学ぶテーマは変わります。この記事では、今の困り方から「何について学ぶ本を探すか」を整理します。


敬語に自信がないときは、まず学ぶテーマを分ける

「敬語が苦手」という言葉だけで本を選ぶと、自分が困っていることと本の内容がずれることがあります。尊敬語と謙譲語の使い分けに迷う人と、正しい表現は知っているのに会話中に出てこない人では、必要な学びが違います。

さらに、敬語を使わない説明や発表でも同じように言葉が出ないなら、中心課題は敬語だけではない可能性があります。最初に「どの敬語本がよいか」を決めるのではなく、次の3方向から今の困り方を確認します。

今の状態先に探す本の方向見分けるポイント
時間をかけても正しい敬語が分からない敬語の仕組み・誤用を学ぶ本尊敬語・謙譲語や正誤の判断に迷う
正しい表現は分かるが、その場で出てこない声に出して練習できる本あとからなら適切な言い方を思い出せる
敬語を使わない場面でも話しにくい話し方・緊張・伝え方を扱う本説明・面接・会議などでも同じ困り方がある


正しい言い方に迷うなら、敬語の仕組みと誤用を学ぶ

「おっしゃられる」のような表現が正しいのか迷う、尊敬語と謙譲語の使い分けに自信がない、相手や場面が変わると適切な言い方を判断できない。こうした状態なら、まず探したいのは敬語の仕組みやよくある誤用を整理できる本です。

この方向では、フレーズを大量に覚えることよりも、「なぜその言い方になるのか」「どこが間違いやすいのか」を理解できるかが本選びの中心になります。知識の土台が曖昧なまま会話例だけを増やしても、初めての場面で応用しにくいからです。

その学習方向を具体化する一冊として、日本実業出版社の『敬語力の基本』があります。敬語を使う理由から定番表現、間違いやすい敬語、場面による使い分けまでを扱っているため、正誤の判断軸を整理したい人に向いています。


知っているのに口から出ないなら、声に出す練習がある本を選ぶ

文章で見れば正しい表現が分かるのに、電話や対面ではすぐに出てこない。あとから「あの言い方を使えばよかった」と思い出す。こうした場合は、敬語知識をもう一度読むだけでなく、声に出して反応する練習が含まれる本へ方向を変える意味があります。

ここでの学習テーマは「敬語を知ること」より、知っている表現を、実際のやり取りで取り出せるようにすることです。会話例が多いか、音読・ロールプレイのように口を動かす使い方ができるかを確認します。

PHP研究所の『社会人なら絶対おさえておきたい 敬語きほんのき』は、声に出す自主トレーニングを前提に、あいさつ、上司との会話、社外の人との応対、電話、報告・連絡・相談などを扱っています。知識を会話へつなげたいときに検討しやすい一冊です。


敬語以外でも話しにくいなら、話し方や緊張を扱う本まで広げる

敬語を使う場面だけでなく、初対面、面接、プレゼン、会議などでも言葉に詰まりやすいなら、探す本を敬語だけに限定しない方がよい場合があります。敬語表現を増やすことと、人前で考えをまとめて話すことは同じ学習テーマではありません。

敬語を外した会話でも同じ困り方があるなら、敬語本だけを読み足しても目的とずれる可能性があります。その場合は、話す前の考え方、伝え方、緊張する場面でのコミュニケーションなどを扱う本まで候補を広げます。

日本実業出版社の『どんなに緊張してもうまく話せる!』は、初対面、プレゼン、面接、スピーチなど緊張しやすい場面を広く扱う本です。敬語そのものを学ぶ本ではないため、正しい敬語を覚えたい人ではなく、敬語以外の場面でも話しにくさがある人の選択肢になります。


敬語本をもう一冊読むかは、困り方の境界で決める

3方向のうち、どれか一つにきれいに分かれるとは限りません。敬語の知識にも不安があり、会話でもとっさに出てこない人はいます。そこで「何ができないか」だけでなく、条件を変えたときに困り方が残るかを確認します。


調べれば分かるが会話では出ないなら、知識より口頭練習を厚くする

メールを書くときや会話後に振り返ると正しい敬語を選べるのに、その場では出てこない。この違いを自分で確認できるなら、次の一冊も敬語知識中心にするより、会話例を声に出せる本の方が今の目的に近くなります。

反対に、時間をかけて考えても正しい言い方が分からないなら、口頭練習だけでは判断の土台が不足します。この場合は、敬語の仕組みや誤用を整理する本を先にします。


敬語を使わない場面でも同じなら、敬語の外へ範囲を広げる

友人との会話では問題ないが、上司や取引先になると適切な敬語が分からないので止まる。この場合は敬語の学びが中心です。一方、敬語を使わない説明や発表でも頭が真っ白になりやすいなら、話し方・伝え方まで含めた本の方が扱う範囲は一致しやすくなります。

「仕事で話せないから敬語本」と短く結びつけず、敬語を外しても同じ困り方が残るかを確認することが、敬語本を買い足すか別テーマへ進むかの境界になります。


複数の悩みがあるときは、読む順番を決める

知識・口頭練習・話し方の複数が当てはまる場合、3種類の本を同時に広げるより、先に一つの課題を減らした方が選書の目的が明確になります。ここでは3方向をもう一度分類するのではなく、どの順番で学ぶかを決めます。


正誤を判断できないなら、敬語の知識を先にする

正しい表現かどうかを自分で判断できない状態では、会話練習を増やしても誤った言い方をそのまま反復する可能性があります。尊敬語・謙譲語の使い分け、よくある誤用、相手による言葉の変化に迷うなら、まず判断の土台を作ります。

知識が整理されたあとに「分かるのに言えない」が残れば、その時点で口頭練習へ進めます。最初から一冊ですべて解決しようとせず、判断できるようになることを一段目に置くと順番を決めやすくなります。


正誤は分かるなら、次は口頭練習を優先する

時間をかければ適切な言い方を選べる人は、敬語の説明をさらに増やすより、必要な表現を短時間で取り出す練習へ進みます。電話、来客、報告など、自分が実際に困る場面の会話例を声に出せる本を選ぶと、知識と実際の応答をつなげやすくなります。

ここでの目的は新しい敬語を大量に覚えることではありません。すでに知っている表現を、相手を前にしても使える状態へ近づけることです。


敬語を外しても困るなら、話し方の本を先にしてもよい

敬語の正誤を確認しても、口頭練習をしても、人前になると考えがまとまらない、緊張して声が出にくい、説明そのものが組み立てられない状態が残るなら、敬語より広いテーマを先にする選択肢があります。

敬語の学習をやめる必要はありません。ただ、今ほしい変化が「正しい敬語を知ること」より「人前で話せること」に近いなら、話し方・伝え方・緊張への対処を先に学び、残った敬語の課題へ戻るという順番でも構いません。


方向が決まったら、そのテーマの本を具体的に比べる

ここまでで「敬語の知識」「口頭練習」「話し方・緊張」のどこを先に学ぶかが決まれば、次の段階ではその方向の中で本を比較できます。知識なら説明の深さ、口頭練習なら会話例や練習形式、話し方なら自分が困る場面を扱っているかを確認します。

敬語そのものを学ぶ方向に決まった人は、その次に「基本を体系的に学ぶのか」「場面別の表現を引くのか」「自然な言い換えまで学ぶのか」といった敬語本の比較基準へ進めます。

具体的な敬語本を幅広く比較したい場合は、敬語のおすすめ本ランキングで候補を見比べることもできます。この記事で整理した学習方向と照らしながら見ると、自分の目的に近い本を比較しやすくなります。

敬語に自信がないとき、答えが必ず「もっと敬語を勉強する」になるわけではありません。正誤に迷うなら知識、知っていても出ないなら口頭練習、敬語以外でも話しにくいなら話し方まで広げる。今の困り方に合う学習テーマと読む順番を決めてから本を選ぶことが、次の一冊を無駄にしないための出発点です。


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兼松 学

書評サイト「本のものさし」運営者。ビジネス書・実用書を中心に年間約80冊を読み、採用・面接・人材育成に約9年携わった実務経験も踏まえて執筆しています。実際に読んだ本の要点だけでなく、向いている人や類書との違いまで整理し、自分に合う一冊を選ぶための判断材料を届けることを大切にしています。

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