
1on1を続けているのに進捗確認で終わってしまう、あるいは導入前から「正しい型」を探して迷っている。『1 on 1 ミーティング――「対話の質」が組織の強さを決める』は、会話術の本としてではなく、1on1を何のために行い、部下の成長や組織の成果にどうつなげるかを立て直す一冊です。
この記事では、その問題意識が章立てや事例、後半の「場外効果」や専門家対談にどう表れているかを追いながら、要約だけで足りる本か、どんな読者に読む意味があるかまで判断しやすい形で整理していきます。
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結論|この本はどんな人に向いている?

この本をひとことで言うと
この本は、1on1を「何となく続ける面談」から、「部下の成長と組織成果につなげるための仕組み」へと捉え直したい人に向く一冊です。会話のコツだけを増やす本ではなく、そもそも何のために1on1を行うのかを整理し、その目的に合った運用へ立て直すための本だと考えると分かりやすいです。短い面談時間の回し方だけでなく、その前後の関わり方や、対話が仕事の質にどう波及するかまで視野を広げてくれます。
向いている人
向いているのは、まず1on1を導入しているのに手応えが薄い人です。毎回時間は取っているのに、結局は進捗確認や雑談で終わってしまう、部下の成長や組織の変化につながっている実感がない、という悩みがあるなら相性がいいはずです。
次に、人事や制度運用の立場で、導入の意味を整理し直したい人にも向いています。本書は、信頼関係の構築、経験学習の促進、フィードバック、動機づけ、情報把握といった複数の役割を整理しながら、異業種の事例や専門家の知見まで含めて考えさせるつくりです。導入の是非ではなく、どう設計すべきかを考える材料がほしい人に合います。
また、部下育成に力を入れたい管理職にも有用です。特に、1on1を面談スキルの問題としてだけでなく、日常の対話や仕事の質まで含めて見直したい人には読み応えがあります。
向いていない人
逆に、すぐ使える質問例や短いフレーズ集だけを求めている人には、少し遠回りに感じる可能性があります。この本は、会話の型を配ることより、1on1の目的そのものを立て直すことに重心があるからです。
また、1on1を単なる進捗確認や個別面談の代替として考えている人にも、少し重たく映るかもしれません。後半に進むほど、理論や運用の再学習に比重が移るため、軽く全体像だけ知りたい読者には向き不向きがあります。
先に結論(買う価値はある?)
結論から言うと、1on1を本質から理解し直したい人には、買う価値があります。理由は、面談をどう進めるかという表面の話で終わらず、目的整理、事例比較、働き方の変化、日常への波及、専門家の理論まで、一段深くつなげて考えられるからです。
とくに、導入済みなのに効果を言語化できない人や、運用を見直したい人には相性がいいはずです。反対に、即効性だけを求めるなら別の本のほうが合う場合もありますが、1on1を長く使える形で理解したいなら、この本は十分に検討に値します。
要約|この本の内容を3分でつかむ

重要ポイント3つ
この本の第一のポイントは、1on1を「うまく進める面談技法」としてではなく、「何のために行うのか」から捉え直していることです。序盤では、信頼関係の構築、経験学習の促進、フィードバック、モチベーション向上、組織に必要な情報の把握など、1on1が持つ役割を整理し、面談そのものが目的化しないように視点を整えていきます。
第二のポイントは、1on1を個人の会話スキルの話で終わらせず、組織運営の実践として扱っていることです。異業種の導入事例を並べることで、特定企業の成功例をそのまま移すのではなく、導入条件や工夫の違いを比較しながら、自社に引きつけて考える読み方ができるようになっています。
第三のポイントは、面談の時間そのものだけでなく、その前後の関わり方まで含めて1on1を見ていることです。後半では、対話が普段の仕事の質にどう波及するかという視点や、組織開発・経験学習・カウンセリング・コーチングの知見が重ねられ、1on1をより広い文脈で理解できる構成になっています。
著者が一番伝えたいこと
本書全体を通して著者が伝えようとしているのは、1on1には決まった型や流儀を探す前に、まず目的をはっきりさせる必要があるということです。冒頭では、1on1が広まるにつれて、傾聴や質問の技術ばかりが注目され、本来の目的が見えにくくなっているという問題意識が置かれています。だからこそ本書は、うまく聞けたか、いい雰囲気で終われたか、といった表面的な評価ではなく、その対話が部下の成長や組織の成果にどうつながるのかを軸に据え直しています。
その主張は構成にも表れています。まず基本と目的を整理し、次に複数の企業での実践を見せ、さらに働き方の変化や個の尊重という文脈につなげ、終盤で運用の深掘りと理論的な裏づけに進む流れです。つまり著者が伝えたいのは、1on1は単独の面談テクニックではなく、組織の対話をどう設計するかという問題だということです。
読むと得られること
この本を読むと、まず自社や自分の1on1が何を目的にしているのかを言葉にしやすくなります。何となく続けていた面談が、信頼づくりの場なのか、学びを促す場なのか、フィードバックの場なのか、それとも情報把握の場なのかを整理できるので、運用のずれに気づきやすくなります。
加えて、導入事例と理論の両方が入っているため、今の1on1を見直す視点を持ちやすいのも利点です。進捗確認や雑談に偏っていないか、面談の前後まで含めた設計になっているかを点検する材料になります。読後には、1on1をどう回すかだけでなく、何を生み出すために続けるのかという問いが手元に残るはずです。そうした意味で、導入前の人にも、すでに運用していて手応えの薄い人にも、考え方の軸を立て直す助けになる一冊です。
内容の全体像|章(目次)の流れと読みどころ

全体の設計(章の流れをざっくり)
本書の流れは、とても素直です。まず1on1が何のための時間なのかを整理し、そのうえで実際に導入している企業の姿を見せ、そこから「なぜ今それが必要なのか」という背景に進み、最後は運用の深い部分と理論的な裏づけへ入っていきます。最初に定義と目的を置いてから、事例、再考、実践、理論へと進むので、読者は途中で置いていかれにくく、理解を一段ずつ積み上げやすい構成です。
この順番が効いているのは、1on1を会話の技術だけで理解させないためでしょう。序盤では共通認識を整え、中盤で「自社ではどう考えるべきか」に視野を広げ、終盤で面談の外側にまで話を広げていく。全体として、1on1を単発の面談ではなく、組織の対話や学習の仕組みとして捉え直すように導かれていきます。
前半は導入を考える読者向け、後半はすでに実践している読者向けという二段構えになっているのも特徴です。最初から最後まで一本道ではありますが、読む目的に応じて入口を変えやすい本でもあります。
大見出し目次(短い目次)
- 第1章 1on1とは何か
- 第2章 企業の取り組みを知る
- 第3章 なぜ1on1なのか
- 第4章 1on1の「場外効果」
- 第5章 専門家の知見に学ぶ
各章の要点
第1章は、1on1を何のために行うのかを整理する土台の章です。信頼関係、学習、フィードバック、動機づけ、情報把握といった機能が並ぶことで、面談を単なる進捗確認で終わらせない見方がつかめます。
第2章は、導入事例を通して「実際にどう広がっているのか」を確かめる章です。業種の違う組織を並べることで、万能の成功例を示すというより、導入条件や工夫の違いを比較する読み方がしやすくなっています。
第3章は、前半と後半をつなぐ橋渡しの章です。事例を受けて、働き方の変化や個の尊重という視点から、1on1が今の職場でどんな意味を持つのかを考え直します。単なる事例集で終わらせないための転換点になっています。
第4章は、本書の実践的な核といえる章です。面談のスクリプトを置きつつ、重要なのはその場だけではなく、その前後の関わり方だと掘り下げていきます。1on1の効果を日常の仕事へどうつなぐかが、ここで一気に具体化します。
第5章は、組織開発、経験学習、カウンセリング、コーチングの知見を重ねる章です。実務書として読んできた内容を、最後に理論面から支え直す役割があり、全体を浅いノウハウ本で終わらせない締め方になっています。
忙しい人が先に読むならここ
導入をこれから考える人事や管理職なら、先に事例の章から入るのが分かりやすいです。実際の運用イメージをつかんでから、基本整理の章に戻ると、「自社で何を目的に置くべきか」が見えやすくなります。そのあとで必要性を考える章まで読むと、制度として導入する理由も整理しやすくなります。
すでに1on1を回しているのに手応えが薄い人は、実践を深める章を優先したほうが得るものが大きいはずです。面談の時間だけに意識が集まりやすいところを、本書はその前後の対話や仕事の質まで含めて見直させてくれるからです。そこで引っかかりを見つけてから、基本整理の章へ戻る読み方が合います。
理論まで押さえたい人や、研修設計に使いたい人は、最後の専門家パートまで読む価値があります。特にこの本は、前半で理解し、後半で深めるつくりなので、時間が限られていても「基本整理」「実践の深掘り」「理論補強」の順に拾っていくと、本書の意図をつかみやすいです。
感想|読んで印象に残ったことと注意点

特に印象に残ったポイント
いちばん強く残ったのは、この本が1on1のやり方を教える本というより、そもそも何のためにやるのかを立て直す本だったことです。面談をうまく回すことより先に、部下の成長、信頼関係、学び、モチベーション、そして組織の成果までをどうつなげて考えるかに重心がありました。1on1を単なる面談手法ではなく、組織のコミュニケーション設計として捉え直そうとする姿勢が、読み終えたあとも残ります。
とくに腑に落ちたのは、テクニック偏重への違和感です。傾聴や質問の巧さだけが前に出ると、本来の目的がぼやけてしまうという見方にはかなり納得感がありました。型を探す前に目的を見失わないことのほうが大事だ、というメッセージが全体を貫いているので、読んでいて軸がぶれません。
もう一つ印象的だったのは、面談の時間だけで価値を測らないところです。短い時間をどう「いい場」にするかだけで終わらせず、その前後の日常の仕事や関係にどう返ってくるかまで見ようとしている。この視点があるから、単発の会話術の本ではなく、長く使える本として読めました。6つの目的を並べて整理している部分も、1on1を必要以上に特別扱いせず、実務の中で何を担うものなのかを落ち着いて見せてくれます。
すぐ試したくなったこと
読んですぐに試したくなったのは、今やっている1on1が何を目的にしているのかを、いったん言葉にし直すことです。信頼づくりなのか、学びを促す場なのか、フィードバックなのか、情報を得る場なのかが曖昧なまま続けていると、面談の質以前に方向がずれてしまう。そのことがかなり腑に落ちました。
もうひとつは、1on1の時間だけを評価しないことです。本書では、面談そのものより、その前後の対話や仕事の質まで見なければいけないという感覚が強く残ります。だからこそ、終わったあとのフォローや、次の1on1までの関わり方を見直したいと思えました。どう回すかより、何を生み出すために続けるのかを意識するだけで、運用の見え方がかなり変わりそうです。
読んで気になった点
気になったのは、販売ページの印象と実際の読み味に少し差があることです。導入事例や専門家との対談が並んでいるので、実践的な続編として手に取りやすい一方で、実際にはそれ以上に「1on1をどう理解するか」を問い直す本でした。質問例や会話の型をすぐ持ち帰りたい人には、少し重たく感じられる可能性があります。
また、ヤフーでの実践知が核にあるので、そこをどう読むかは大事だと思いました。著者自身はそれを唯一の正解として押しつけていないのですが、読み手の側が成功モデルとしてそのまま移植しようとすると、本書の慎重さを取りこぼしてしまいそうです。読んでいて信頼できたのは、まさにその押しつけのなさでしたが、逆に言えば、即効性だけを求める人には向き不向きがはっきり出る本でもあると思います。
実践編|この本を読んだあと、どう行動する?

今日からできること
本書は、読んで納得して終わるより、今の1on1を見直すために使う本です。特に大事なのは、会話の型を増やす前に、目的と運用を点検することだと思います。今日から始めるなら、次のような動きが現実的です。
- いま行っている1on1の目的を一つずつ書き出す。信頼づくり、学びの促進、フィードバック、情報把握のどれが中心なのかをはっきりさせる。
- 直近の1on1を振り返り、進捗確認や雑談だけで終わっていないかを点検する。
- 次回の1on1で「話すこと」ではなく、「終わったあと相手にどうなっていてほしいか」を先に決める。
- 面談の30分だけでなく、その前後にどんな関わりがあるかを書き出してみる。
- 異業種の事例は成功例としてまねるのではなく、自社との違いを比べる材料として読む。
- 実践パートのスクリプトは正解集としてではなく、自分ならどう言い換えるかを考える叩き台にする。
- 理論パートを後回しにせず、気になる章と行き来しながら、自分の1on1の前提を見直す。
- 「部下のための時間」という言葉だけで理解せず、成果や学びとのつながりまで意識して読み返す。
1週間で試すならこうする
一週間で試すなら、全部を大きく変えるより、今の運用を可視化しながら一つずつ整えるほうが続きやすいです。無理のない流れにすると、次のような組み立てになります。
- Day1:今の1on1の目的を整理する。自分の組織で何を期待している場なのかを短く言語化する。
- Day2:直近の面談を振り返る。信頼形成、学び、フィードバック、情報把握のどれに偏っていたかを見る。
- Day3:事例の章を読む。自社に近い事例と遠い事例を一つずつ比べて、導入条件の違いをつかむ。
- Day4:次の1on1の設計を変える。聞く項目を増やすのではなく、面談後に残したい状態を一つ決める。
- Day5:面談前後の関わり方を見直す。終わったあとに何をフォローするか、次回までに何をつなぐかを考える。
- Day6:実践パートと理論パートを行き来する。会話の流れだけでなく、その背景にある考え方も押さえる。
- Day7:一週間の気づきを整理する。来週から変えることを一つに絞り、続ける前提で小さく改善する。
この本は、短期間で劇的に会話がうまくなる本というより、1on1の軸を立て直す本です。だからこそ、一週間でも「何を目的に続けるのか」が見えてくるだけで十分前進だと思います。
つまずきやすい点と対策
いちばんつまずきやすいのは、すぐ使える会話術を求めてしまうことです。本書は近道のノウハウ集ではなく、土台から考え方を組み直す本なので、即効性だけを期待すると遠回りに感じやすいです。対策としては、まず「何のための1on1か」を一文で言えるようにすることを先に置くと、読みどころがはっきりします。
次に起こりやすいのは、他社事例を成功パターンとしてそのまま持ち込もうとすることです。本書が事例を並べているのは、正解を配るためというより、背景や共通点を多面的に理解するためです。自社で使うなら、「何を真似るか」より「何を参考にするか」と考えたほうがずれにくくなります。
もう一つは、1on1をその場の30分だけで評価してしまうことです。うまく話せたか、雰囲気よく終わったかだけで判断すると、本書が重視している日常への波及が抜け落ちます。対策は、面談後に普段の対話や仕事の進み方がどう変わったかを見ることです。ここまで含めて初めて、本書がいう1on1の価値をつかみやすくなります。
比較|似ている本とどう違う?

『増補改訂版 ヤフーの1on1――部下を成長させるコミュニケーションの技法』との違い
比較の軸で言えば、いちばん大きいのは「実用性の出し方」と「深さ」です。基礎から実践手順をつかみたいなら『増補改訂版 ヤフーの1on1――部下を成長させるコミュニケーションの技法』、1on1の目的や運用の意味をあらためて問い直したいなら本書です。
本書は、1on1を面談技法として覚えるより、何のために続けるのかを整理し直すことに重心があります。信頼関係、学習、フィードバック、情報把握といった複数の役割を並べたうえで、導入事例や理論までつなげて考えさせるので、読むほど視野が広がっていくタイプです。一方で『増補改訂版 ヤフーの1on1――部下を成長させるコミュニケーションの技法』は、同じ系譜にある本のなかでも、ヤフー流1on1の基本設計や実践ステップを押さえたい人に向いています。
向いている人も少し違います。本書は、すでに1on1を導入しているのに手応えが薄い人や、制度として続ける意味を整理し直したい人に合います。反対に、まずはヤフー流の基本をつかみたい、実践の入口を明確にしたいという人は、『増補改訂版 ヤフーの1on1――部下を成長させるコミュニケーションの技法』のほうが入りやすいはずです。
『シリコンバレー式 最強の育て方 ―人材マネジメントの新しい常識 1on1ミーティング―』との違い
ここでの比較軸は「テーマ」と「読者層」です。日本の組織で1on1の意味を整理し直したいなら本書、1on1を異なるマネジメント文化の前提から見比べたいなら『シリコンバレー式 最強の育て方 ―人材マネジメントの新しい常識 1on1ミーティング―』です。
本書は、流儀や会話のうまさに議論が偏ることへの違和感から出発し、部下の成長と組織成果をどう結びつけるかに焦点を当てています。異業種の事例、面談の前後まで含めた運用、さらに背景理論まで扱うので、日本企業の現場で1on1をどう位置づけるかを考えやすい構成です。一方で『シリコンバレー式 最強の育て方 ―人材マネジメントの新しい常識 1on1ミーティング―』は、1on1を米国型のマネジメント文化の文脈から学びたい人に向いています。
選び方もはっきりしています。自社の1on1が形だけになっていて、目的を立て直したい人は本書のほうが合います。逆に、日本の職場とは違う前提で1on1がどう考えられているのかを知りたい人、マネジメントの文化差まで含めて比較したい人は『シリコンバレー式 最強の育て方 ―人材マネジメントの新しい常識 1on1ミーティング―』を選ぶと読み分けやすいです。
迷ったらどれを選ぶべき?
迷ったときの基準はシンプルです。いまの悩みが「1on1をどう始めるか」なら『増補改訂版 ヤフーの1on1――部下を成長させるコミュニケーションの技法』、「1on1をどんな文化や前提で捉えるか」まで広げたいなら『シリコンバレー式 最強の育て方 ―人材マネジメントの新しい常識 1on1ミーティング―』、そして「導入したのに手応えがない」「面談が目的化している」「対話を成果につなげる設計を見直したい」なら本書です。
この本の強みは、テクニックを増やす前に、1on1の意味そのものを立て直せるところにあります。会話の型より先に、何を生み出すための時間なのかをはっきりさせたい人には、いちばんフィットしやすい一冊です。
著者はどんな人?|この本を書いた背景

著者プロフィール
本間浩輔 は、刊行当時の紹介ではZホールディングス株式会社の常務執行役員。早稲田大学卒業後、野村総合研究所を経てスポーツナビ創業に参画し、その後はヤフーの人事領域を歴任しています。『ヤフーの1on1』などの著書もあり、人事・組織運営の文脈から1on1を扱ってきた人物です。
吉澤幸太 は、刊行当時の紹介ではヤフー株式会社 ピープル・デベロップメント統括本部 ビジネスパートナーPD本部所属。2005年にヤフーへ入社し、2012年以降は人事部門で1on1の導入と浸透を推進してきました。制度をつくるだけでなく、社内で定着させる実務に関わってきた点が、この本の実践性につながっています。
このテーマを書く理由
この本が1on1を単なる会話術ではなく、組織成果につながる仕組みとして扱っているのは、著者の仕事領域と内容がきれいにつながっているからです。本間浩輔は人事・組織変革を担ってきた立場から、1on1を制度設計や組織運営の問題として捉えています。吉澤幸太は導入と浸透の推進役として、現場でどう根づかせるかという実務に向き合ってきました。
本書は、前作のあとに1on1への関心が広がった一方で、流儀やテクニックの違いばかりが注目され、目的が曖昧になっているという問題意識から始まります。そこで、基本の整理、異業種の事例、面談の前後まで含めた運用の視点、さらに専門家との対話までを一冊にまとめ、1on1をもう一度土台から捉え直そうとしているのが本書の企画意図です。共著であることにも意味があり、組織変革の視点と導入・浸透の視点が並ぶことで、制度と現場の両面から話が組み立てられています。
この本が信頼できる理由
この本が信頼しやすいのは、著者が1on1を万能の正解として押し出していないからです。自分たちの実践を土台にしつつも、それをそのまま唯一の型として広げるのではなく、まず目的を整理し、異業種の導入事例を並べ、さらに組織開発、経験学習、カウンセリング、コーチングの専門家との対話に接続しています。実務の話だけでも、理論だけでも終わらない構成です。
もうひとつ大きいのは、焦点が一貫していることです。本書は、1on1をどう上手に回すかより先に、何のために行うのかを問い直します。信頼関係、学習、フィードバック、動機づけ、情報把握といった複数の機能を整理したうえで、面談の30分だけでなく、その前後の関わりまで視野に入れているため、現場の運用論に偏りすぎません。制度の背景、導入の工夫、実践上の難所を同じ土俵で考えられる点が、この本の確かさにつながっています。
よくある質問(FAQ)

要約だけ読めば十分?
結論から言うと、目的次第です。1on1の本質を手早くつかみたいだけなら、要点整理だけでも全体像は見えます。この本が何を問題にしていて、1on1を面談技法ではなく組織成果につながる仕組みとして捉え直していることは、要約でも十分つかめます。
ただし、自社に導入したい人や、すでに運用していて手応えの薄さを感じている人は、要約だけでは足りません。本書の価値は、目的の整理、異業種の事例、面談の前後まで含めた運用視点、背景理論までを順につないで理解できるところにあるからです。とくに「何のために続けるのか」を考え直したいなら、本文を読んだほうが得るものは大きいです。
初心者向け? 中級者向け?
結論としては、入口は初心者向けですが、読み終えると中級者向けの厚みもある本です。前半では1on1の定義や目的を整理してくれるので、これから学ぶ人でも入りやすくなっています。進捗確認と何が違うのか、何を生み出す時間なのかを押さえるには向いています。
一方で、後半は抽象度が少し上がります。面談そのものだけでなく、その前後の関わりや背景理論まで踏み込むため、すぐ使えるフレーズ集だけを求める人にはやや重く感じやすいです。すでに1on1を回していて、運用の浅さや形骸化に悩んでいる人ほど、本書の強みが生きます。
どこから読むべき?
結論は、読む人の状況で変えて大丈夫です。1on1そのものがまだ曖昧なら、まず序盤から入るのが自然です。定義と目的を押さえてから事例に進むと、なぜ各社でやり方が違ってよいのかが見えやすくなります。
導入を検討している人事や管理職なら、事例の章を先に読んでから基本整理に戻る読み方も合います。すでに実践している人なら、面談の外側まで含めて考える章や、専門家の知見に触れる終盤から入るのも有効です。本書は最初から順に読むだけでなく、自分の課題に合わせて行き来しやすい構成になっています。
忙しくても実践できる?
結論として、全部を一気に取り入れなくても実践はできます。本書は軽いテンプレート集ではありませんが、読後すぐにできることはあります。たとえば、自社の1on1の目的を棚卸しする、雑談や進捗確認に偏っていないか点検する、面談後のフォローまで見直す、といった動きはすぐ始められます。
ただし、短時間で即効性だけを求める読み方とは少し相性が違います。この本は、すぐ使える一言よりも、運用の軸を整えることに強いからです。忙しい人ほど、まずは目的の確認と現状点検の2つに絞って読むと、本書の実用性を無理なく引き出せます。
まとめ|結局、この本を読む価値はある?

この本の価値を3つで言うと
第一に、1on1を面談のテクニック集としてではなく、部下の成長と組織成果をつなぐ仕組みとして捉え直せることです。やり方の違いよりも、そもそも何のために続けるのかを問い直してくれるので、制度だけが先に走っている職場ほど効きます。
第二に、短い面談時間の中身だけでなく、その前後の対話や仕事の質まで視野を広げられることです。1on1を「いい30分」にする話で終わらず、普段の関わりや運用全体へ視点を戻してくれる点に、この本の実務的な強さがあります。
第三に、基本整理、導入事例、再考、実践の深掘り、背景理論までが一本につながっていることです。すぐ使える万能マニュアルではありませんが、そのぶん考え方の軸が整います。形だけ導入して空回りしている組織には、むしろその慎重さが価値になります。
この本をおすすめできる人
おすすめできるのは、1on1の導入や運用を担う人事担当者、部下育成を任されている管理職、そして1on1が形骸化している制度を立て直したい人です。とくに、対話が本当に成長や成果につながっているのか曖昧になっているなら、本書は役に立ちます。
逆に、最短で使える質問フレーズや会話の型だけを探している人には、少し重く感じやすいはずです。この本の強みは即効性よりも、1on1の目的設計と運用の見直しにあります。
今すぐやること
今日やるなら、次の1on1の前に15分だけ使って、「この時間は進捗確認なのか、部下のための時間なのか」を紙かメモに一文で書き分けてください。そのうえで、自分の1on1で重視したい目的を一つだけ選ぶのが最初の一歩です。
本書の価値は、知識を増やすことよりも、対話の置き場所をはっきりさせるところにあります。全部を変えようとせず、まず目的を言葉にするだけで、この本の読み方はかなり実務に近づきます。
次に読むならこの本
- 『増補改訂版 ヤフーの1on1――部下を成長させるコミュニケーションの技法』:同じ著者の基礎・実践寄りを確認したいときに自然につながる一冊です。
- 『シリコンバレー式 最強の育て方 ―人材マネジメントの新しい常識―』:導入や運用を別の角度から比べたい人に向いています。
- 『世界標準の1on1 科学的に正しい「対話の技術」のすべて』:研究や調査ベースで、頻度や質問設計まで補強したい人に合います。
1on1ミーティングついて学べるおすすめ書籍

1on1ミーティングについて学べるおすすめ書籍です。
本の「内容・感想」を紹介しています。
- 1on1ミーティングが学べるおすすめの本ランキング
- 離職率ゼロ!部下が辞めない1on1ミーティング!
- 増補改訂版 ヤフーの1on1 部下を成長させるコミュニケーションの技法
- シリコンバレー式 最強の育て方 ― 人材マネジメントの新しい常識 1 on1ミーティング―
- 1on1ミーティングの極意
- マンガでよくわかる1on1大全
- 1 on 1 ミーティング――「対話の質」が組織の強さを決める
- 世界標準の1on1 科学的に正しい「対話の技術」
