心理的安全性 ビジネス・経済・経営

【書評】心理的安全性とアジャイル |要約と感想、向いている人を整理

【書評】心理的安全性とアジャイル |要約と感想、向いている人を整理

アジャイルやスクラムを導入したのに、メンバーの発言や自律性が高まらない。『心理的安全性とアジャイル』は、その原因を手順やツールではなく、人間関係やチームダイナミクス、蓄積する「人的負債」から捉え直す本です。

この記事では、本書の要点や章の流れ、読んで印象に残った点、実践へのつなげ方、似ている本との違いまで整理します。内容の広さや著者の強い主張も含めて確認することで、自分の課題に合う本か、購入して読む価値があるかを判断しやすくなります。


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もくじ
  1. 結論|この本はどんな人に向いている?
  2. 要約|この本の内容を3分でつかむ
  3. 内容の全体像|章(目次)の流れと読みどころ
  4. 感想|読んで印象に残ったことと注意点
  5. 実践編|この本を読んだあと、どう行動する?
  6. 比較|似ている本とどう違う?
  7. 著者はどんな人?|この本の信頼性を確認する
  8. よくある質問(FAQ)
  9. まとめ|結局、この本を読む価値はある?

結論|この本はどんな人に向いている?

結論|この本はどんな人に向いている?

この本をひとことで言うと

『心理的安全性とアジャイル』は、仕組みやツールを導入してもチームが変わらない原因を、人間関係と心理的安全性の側から捉え直す本です。心理的安全性を単なる「働きやすさ」ではなく、メンバーが質問や異論を出し、失敗から学び、継続的に改善するための基盤として扱っています。アジャイルを開発手法として学ぶだけでなく、人を中心にしたチーム運営へつなげたい人に役立つ内容です。


向いている人

特に向いているのは、アジャイルや新しい業務プロセスを導入したものの、会議で本音や異論が出ず、現場の行動も変わっていないと感じる管理職やチームリーダーです。ルールやツールを増やすだけでは成果につながらない理由を、働き方だけでなく考え方や対話の質まで含めて整理できます。

また、離職、疲弊、問題の隠蔽、生産性の低下を、個人の能力や意欲だけの問題として扱うことに疑問を持つ人にも合います。本書独自の「人的負債」という視点を通して、人間関係や発言文化を後回しにしてきたツケが、組織にどのような形で表れるのかを考えられるからです。

心理的安全性を人事施策としてではなく、DX、DevOps、リモートワーク、チームの学習力や成果と結びつけて理解したい人にも適しています。経営者、人事・組織開発担当者、IT・開発部門の責任者まで、幅広い立場の読者が自分の課題へ接続しやすい内容です。


向いていない人

心理的安全性の定義だけを短時間で学びたい人には、やや情報量が多く感じられる可能性があります。本書は心理的安全性に加え、アジャイル、チームの発達、EQ、測定、リモートワークまで広く扱うため、要点だけを手早く確認する入門書とは性格が異なります。

すぐに使える会話例や声かけのフレーズ集を探している人にも、目的が合わないかもしれません。また、スクラムの役割やイベント、開発手順を体系的に学びたい人向けの実務マニュアルでもありません。具体的な手法だけでなく、その前提となるチームの状態や考え方を掘り下げたい人向けです。


先に結論(買う価値はある?)

アジャイルを導入したのに働き方が変わらない、または心理的安全性を成果や組織変革と結びつけて理解したい人には、買う価値があります。技術やプロセスを否定するのではなく、それらを機能させる前提として人とチームを重視している点が、本書の大きな特徴です。

著者独自の「人的負債」という概念も、感情や対話を後回しにした結果、沈黙や疲弊、協働不全が蓄積していく問題を整理する手がかりになります。ただし、心理的安全性を成果の「唯一のスイッチ」とする強い表現は、著者の主張として慎重に受け取る必要があります。それでも、制度やツールの導入だけでは解決できないチームの問題に向き合っている人なら、読む目的が明確になる一冊です。


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要約|この本の内容を3分でつかむ

要約|この本の内容を3分でつかむ

重要ポイント3つ

1つ目は、デジタル変革やアジャイル導入では、ツールやプロセスより先に人とチームの状態を考える必要があることです。新しい会議、ルール、システムを導入して働き方を変えても、メンバーが意見や懸念を表明できず、失敗を隠す状態のままでは、継続的な学習や改善は進みません。本書は、働き方であるWoWだけでなく、それを支える考え方であるWoTを変えることが欠かせないと論じます。

2つ目は、人間関係や対話を後回しにしたツケを「人的負債」と捉えている点です。感情、つながり、チームワークを軽視して生まれた問題は自然に消えず、沈黙、疲弊、離職、生産性低下といった形で組織に返ってきます。そのため、現場の問題を個人の能力や意欲だけに帰すのではなく、チームに蓄積した負債として見直す必要があります。

3つ目は、心理的安全性を仲のよさや居心地のよさと同一視していないことです。本書が重視するのは、対人関係上の不利益を過度に恐れず、質問、異論、懸念、失敗を共有できる状態です。健全な対立を避けるのではなく、異なる意見を出し合い、実験し、失敗から学べることが、高いパフォーマンスを生むチームの基盤になります。


著者が一番伝えたいこと

本書を貫いているのは、テクノロジーを導入するだけでは組織は変わらず、実際に仕事を担う人とチームを変革の中心に置かなければならないという主張です。著者は、心理的安全性を人事部門が余裕のあるときに扱う付加的なテーマではなく、共同作業、イノベーション、学習、リスク管理を成立させる業務上の条件として位置づけています。

話は、VUCAやデジタル化がもたらした組織課題から始まり、形式的なアジャイルの問題、チームの発達と健全な対立、心理的安全性の意味へと進みます。さらに、心理的安全性やEQを測定し、小さく継続的に改善する方法、リモート環境での柔軟な働き方まで扱います。抽象的な組織文化を一度に変えようとするのではなく、共同作業が行われるチームを単位に、人間中心の行動を積み重ねることが本書の中心的な提案です。


読むと得られること

本書を読むと、アジャイルを導入したのにチームが変わらない原因を、手順の不足だけでなく、人間関係や発言のしやすさから点検できるようになります。会議や振り返りで質問、異論、懸念、失敗報告が出ているかを確認し、形だけの運用になっていないかを見直す視点が得られます。

また、チームの目的や役割、協働方法を明確にし、感情や関係性を後回しにして蓄積した問題を洗い出すきっかけにもなります。大規模な改革を一度に進めるのではなく、小さく介入して頻繁に測定する発想や、勤務場所だけにとどまらない柔軟な働き方の考え方まで学べるため、心理的安全性を実際のチーム改善へつなげたい人に役立つ内容です。


内容の全体像|章(目次)の流れと読みどころ

内容の全体像|章(目次)の流れと読みどころ

全体の設計(章の流れをざっくり)

本書は、いきなり心理的安全性の定義や実践方法から始まるのではありません。まず、デジタル化が進む職場で人間関係や対話が後回しにされ、そのツケが「人的負債」として蓄積している現状を示します。そこから、制度やプロセスだけを変える形式的なアジャイルの限界へ進み、変革の対象を抽象的な組織全体から、実際に共同作業を行うチームへと絞っていきます。

中盤では、チームが形成されて成果を出すまでの過程を整理したうえで、心理的安全性を発言、健全な対立、学習、実験を支える条件として掘り下げます。後半は、心理的安全性やEQを測定して継続的に改善する方法へ進み、最後にリモートワークや柔軟な働き方へ応用する流れです。「問題の発見→チームへの焦点化→心理的安全性の理解→測定と改善→未来の働き方」と段階的に読者を導く構成になっています。


大見出し目次(短い目次)

  • 第1章 今日の仕事、明日の仕事
  • 第2章 プロセス vs. 人
  • 第3章 チームと好業績の探求
  • 第4章 心理的安全性――高いパフォーマンスのための唯一のスイッチ
  • 第5章 心理的安全性と感情指数を数字に置き換える
  • 第6章 ソフトスキルは難しい(ハード)
  • 第7章 次になにが起こるのか、そしてパンデミック以降の世界での働き方


各章の要点

第1章は、VUCAや急速な技術変化のなかで、人やチームを軽視すると何が起こるのかを整理する導入部です。「人的負債」が、本書全体を読み解く中心概念として提示されます。

第2章では、新しい会議やルールを導入しただけではアジャイルにならない理由を扱います。働き方であるWoWと、それを支える考え方であるWoTを分け、本書を単なる開発手法の解説から人間中心の変革論へつなぐ章です。

第3章は、抽象的な組織論からチームの具体的な関係性へ焦点を移す橋渡しになります。チームの発達段階、健全な対立、リーダーシップ、協働方法を通して、心理的安全性が必要になる背景を整えます。

第4章は本書の中心です。心理的安全性を仲のよさと切り離し、意見や懸念を表明し、実験や失敗から学ぶための業務基盤として説明します。

第5章では、心理的安全性や人的負債を抽象的な理想で終わらせず、測定と継続的な介入の対象として扱います。チーム単位で小さく、頻繁に改善するというアジャイルな実践へ接続する章です。

第6章は、感情、EQ、勇気、脆弱性、共感といった要素を、成果とは別の「柔らかい話」ではなく、チーム運営の難しい実務課題として捉え直します。

第7章では、これまでの議論をパンデミック後の働き方へ広げます。出社か在宅かという二択だけでなく、対話、柔軟性、連携をどのように設計するかを考える章です。


忙しい人が先に読むならここ

最初に読むなら第4章です。心理的安全性とは何か、何ではないのか、なぜ発言や学習につながるのかがまとまっており、本書の核を最も早くつかめます。ただし、成果を生む唯一の要因とする強い表現は、著者の問題意識を示す主張として読む必要があります。

次に第2章を読むと、アジャイルを導入してもチームが変わらない理由が、人とプロセスの関係から理解できます。そのうえで、改善方法まで知りたい人は第5章へ進むと、測定と小さな介入を繰り返す考え方につながります。

職場の疲弊や沈黙の原因を整理したい人は第1章、リモートチームを率いている人は第7章も優先度が高いでしょう。時間が限られている場合は、第4章→第2章→第5章の順で読むと、定義、問題の原因、実践へのつながりを効率よく押さえられます。


感想|読んで印象に残ったことと注意点

感想|読んで印象に残ったことと注意点

特に印象に残ったポイント

最も印象に残ったのは、人間関係や対話を軽視したツケを「人的負債」として捉える考え方です。会議で意見が出ない、問題が報告されない、メンバーが疲弊して離れていくといった状況を、個人の性格や能力だけで説明しない点に納得感がありました。目に見えにくい職場の問題も、放置すれば技術上の不具合と同じように蓄積し、やがて組織の成果を圧迫するという見方です。

心理的安全性の扱い方も印象的でした。本書は、仲がよくて居心地のよいチームをつくる話にとどめず、意見や懸念を伝え、異論を交わし、実験や失敗から学ぶための業務基盤として説明しています。幸福も直接の目的ではなく、勇気やオープンさを持って仕事に参加できる環境から生まれる結果として位置づけられており、心理的安全性を福利厚生の一種と考えていた見方が変わりました。

さらに、心理的安全性とアジャイルが別々のテーマではなく、一本の流れで結ばれている点も本書ならではです。新しい会議やルールなどの働き方だけを導入しても、それを支える考え方や人間関係が変わらなければ、アジャイルは形だけになってしまいます。テクノロジーより先に人を見るという主張が、人的負債、チームの発達、心理的安全性、測定と改善へつながっていく構成には一貫性がありました。


すぐ試したくなったこと

まず試したくなったのは、会議や振り返りで発言回数を見るのではなく、質問、異論、懸念、失敗報告が実際に出ているかを確かめることです。参加者が順番に話していても、無難な意見しか出ていなければ、学習や改善につながる対話が起きているとは限りません。本書を読むと、会議の形式よりも、そこでどのような対人的リスクが取られているかを見たくなります。

また、大きな改革を一度に進めるのではなく、小さな介入と確認を繰り返す考え方も試したくなりました。心理的安全性や人間関係は、制度を一つ導入すれば完成するものではありません。チームの目的や役割、協働方法を少しずつ見直し、変化を確かめるほうが、アジャイルの継続的改善ともつながります。

さらに、ツールや新しい働き方を導入したときに、「何を入れたか」ではなく「対話・実験・学習が増えたか」を問い直したいと思いました。仕組みの導入自体を成果にせず、人の行動がどう変わったかまで見るという視点は、デジタル変革やリモートワークを考える際にも役立ちます。


読んで気になった点

気になったのは、心理的安全性を高いパフォーマンスのための「唯一のスイッチ」とする著者の強い語り口です。問題意識や熱意は伝わりやすい一方、チームの成果には目標や役割の明瞭さ、能力、業務設計なども関わります。第4章の中心的な主張は、心理的安全性だけですべてを説明できるという確定的な結論ではなく、その重要性を強く訴える著者の立場として読むのがよさそうです。

扱う範囲の広さも、読者によって評価が分かれるところです。人的負債、アジャイル、チームの発達、心理的安全性、EQ、測定、リモート環境まで進むため、心理的安全性の基本だけを短時間で学びたい人には情報量が多く感じられるかもしれません。反対に、開発手法と組織文化を切り離さず、チーム形成から測定まで一つの流れで考えたい人には、この広さが本書の強みになります。


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実践編|この本を読んだあと、どう行動する?

実践編|この本を読んだあと、どう行動する?

今日からできること

本書の考え方は、大きな制度改革よりも、日々のチームで起きている対話を見直すところから試せます。まずは「心理的に安全か」を直接問うのではなく、発言・学習・協働につながる行動が実際に起きているかを確認してみましょう。

  • 次の会議で、質問・異論・懸念・失敗報告が何回出たかを意識して観察する。
  • 発言が少ない人に結論を迫らず、「気になる点はありますか」と意見を出せる余地をつくる。
  • 振り返りでは、できなかった理由を責める前に、そこから何を学べるかを一つ確認する。
  • 導入した会議やツールが、対話・実験・学習を本当に増やしているかを書き出す。
  • チームの目的、役割、連携方法について、認識が曖昧な部分を一つ見つける。
  • 感情や人間関係を後回しにした結果、言い出しにくくなっている問題を一つ洗い出す。
  • 改善案は一度に広げず、次の会議で試せる小さな変更を一つだけ決める。
  • リモート勤務では、働く場所だけでなく、相談方法や意思決定の流れも確認する。

最初は、会議でどのような発言が出ているかを観察するだけでも十分です。変える前に現状を具体的に捉えると、形だけの施策を増やさずに済みます。


1週間で試すならこうする

Day1:観察する
普段の会議を一つ選び、質問、異論、懸念、失敗報告がどの程度出ているかを記録します。発言量ではなく、発言の中身に注目します。

Day2:沈黙の理由を考える
言いにくそうな話題や、毎回避けられている問題がないかを振り返ります。個人の性格ではなく、場の進め方や反応のされ方に目を向けます。

Day3:共通認識を確かめる
チームの目的、役割、相談先、意思決定の方法について、曖昧な点を一つ選びます。全員が同じ理解をしているか、短く確認します。

Day4:小さな発言機会をつくる
会議の最後に、懸念点や見落としを尋ねる時間を設けます。すぐに解決しようとせず、まず声が出る状態をつくります。

Day5:学習に変える
最近の失敗や計画どおりに進まなかった出来事を一つ選び、責任追及ではなく、次に生かせる気づきを整理します。

Day6:一つだけ改善する
観察して見つけた問題から、会議の問い方や相談方法など、負担の小さい変更を一つ試します。複数の施策を同時に始めないことが大切です。

Day7:変化を振り返る
発言の内容や対話の流れに変化があったかを確認します。うまくいかなかった場合も、方法を小さく修正して次週へつなげます。


つまずきやすい点と対策

心理的安全性を「何でも肯定すること」にしてしまう
意見を出しやすくしようとして、反対や指摘を避けると、必要な対話まで弱くなります。まずは「人を否定せず、意見の違いは扱う」という小さな共通認識から始めるとよいでしょう。

発言を増やすことだけが目的になる
全員に順番で話してもらっても、無難な感想だけでは学習や改善につながりません。発言数ではなく、質問、懸念、失敗、異論が表に出たかを一つの確認基準にします。

大規模な施策を一度に導入する
心理的安全性を高めようとして、会議ルールや評価方法をまとめて変えると、何が有効だったのか分からなくなります。まずは一つの会議、一つの問い、一つの連携方法に絞って試します。

測定が人の評価に変わってしまう
心理的安全性や発言状況を確認する際、個人を順位づけすると、かえって本音が出にくくなります。誰が発言したかではなく、チームとしてどのような対話が起きたかを振り返ることが重要です。

ツールの導入を成果と考えてしまう
新しい会議やチャットを導入しただけで満足すると、形式的なアジャイルに戻ってしまいます。導入後に、相談、実験、学習、失敗共有が増えたかを一つずつ確かめましょう。


比較|似ている本とどう違う?

比較|似ている本とどう違う?

まず違いを一覧で整理

3冊はいずれも心理的安全性を扱いますが、目指すところが異なります。『恐れのない組織』は研究的な背景と事例、『心理的安全性のつくりかた』は日本の職場での具体的な実践、本書はアジャイルやデジタル変革と人間中心のチームづくりを結びつけることに重心があります。

重心 向いている人
『心理的安全性とアジャイル』 アジャイル・人的負債・チーム変革 技術や制度を入れても職場が変わらない人
恐れのない組織 研究的背景・定義・失敗と沈黙の事例 心理的安全性を土台から深く理解したい人
心理的安全性のつくりかた 日本の職場・4因子・行動分析 国内の現場で具体的に改善したい人


『恐れのない組織――「心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をもたらす』との違い

本書は、心理的安全性をアジャイルやデジタル変革へどう接続するかを広く扱います。人的負債、チームの発達、EQ、測定、リモート環境まで話を展開し、技術やプロセスだけでは変革が進まない理由を人とチームの側から掘り下げる本です。一方で『恐れのない組織』は、心理的安全性の研究的な定義や発展過程、失敗や沈黙が起きる事例を中心に理解を深める内容です。

心理的安全性そのものを基礎から学び、なぜ重要なのかを研究や事例から確認したい人には『恐れのない組織』が合います。すでに概念を知っており、アジャイル導入やデジタル変革が形だけになっている原因を考えたい管理職や開発リーダーには、本書のほうが課題に直結します。


『心理的安全性のつくりかた』との違い

心理的安全性のつくりかた』は、日本の職場を前提に、話しやすさ・助け合い・挑戦・新奇歓迎という4因子と、行動分析を用いた実践方法を扱います。現場で何を変えるかに焦点を絞りやすいのが特徴です。本書は具体的な改善にも触れますが、人的負債やアジャイルの考え方、チーム形成、測定、柔軟な働き方まで含めて、組織変革全体を広く捉えています。

日本企業で心理的安全性をどうつくるかを、整理された枠組みから実践したい人には『心理的安全性のつくりかた』が向いています。個別の行動だけでなく、なぜツールや制度を導入しても変革が失敗するのかまで考えたい人には、本書が合います。


迷ったらどれを選ぶべき?

  • アジャイルと組織文化を一緒に見直したい人:『心理的安全性とアジャイル』
  • 研究的背景と失敗事例を深く学びたい人:『恐れのない組織
  • 日本の職場で具体的な改善を進めたい人:『心理的安全性のつくりかた

本書を選ぶべきなのは、アジャイルや新しいツールを導入したのに、発言や学習が増えず、チームの働き方が変わらないと悩んでいる人です。心理的安全性だけを単独で学ぶのではなく、デジタル時代の変革を人間中心に組み立て直したい場合に、3冊のなかで最も目的に合います。


著者はどんな人?|この本の信頼性を確認する

著者はどんな人?|この本を書いた背景

著者プロフィール

ドゥエナ・ブロムストロム氏は、本書の原書刊行時、PeopleNotTechのCEO兼共同創業者を務めていました。同社は、心理的安全性と高業績チームのダイナミクスを扱う人材向けソフトウェア事業です。『Emotional Banking』の著者でもあり、講演や寄稿活動も行ってきました。現在は、著者・研究者・システム理論家として、リーダーシップや組織リスクについて執筆しています。

松本 裕氏は、『心理的安全性とアジャイル』の日本語版で翻訳を担当しています。


著者の経験が本書にどう活きているか

ブロムストロム氏は、心理的安全性とチームのパフォーマンスを扱う事業に携わり、「人的負債」という概念を提唱してきました。その経験が、心理的安全性を単なる働きやすさではなく、発言、学習、実験、継続的改善を支える業務上の条件として論じる本書の土台になっています。

また、ソフトウェア事業に携わりながら、テクノロジーよりも人を先に考える立場を取っていることが、本書の特徴につながっています。アジャイルやデジタル変革をプロセスの問題だけで終わらせず、人間関係、感情、チームワーク、測定と改善まで広げている背景には、同氏の活動領域との明確な接点があります。松本氏は、その議論を日本語読者へ届ける翻訳を担っています。


よくある質問(FAQ)

よくある質問(FAQ)

要約だけ読めば十分?

本書の大枠を知りたい人や、購入するか判断したい人なら、要約だけでも「人的負債」「心理的安全性」「アジャイル」の関係はつかめます。テクノロジーやプロセスより先に、人とチームの状態を考える本だと理解できれば、選書の判断材料としては十分です。

一方、職場で実践したい人は本文まで読んだほうがよいでしょう。心理的安全性を仲のよさと混同しないための説明や、チームの発達、健全な対立、測定と継続的改善まで追うことで、考え方を現場へつなげやすくなります。


初心者でも読める?

心理的安全性や組織開発を初めて学ぶ人でも読めますが、入門書としては扱う範囲が広めです。アジャイル、DevOps、WoW、WoT、EQなどの言葉が登場するため、ITや組織変革になじみがない場合は、用語を確認しながら読む必要があります。

ただし、会議で意見が出ない、制度を変えても現場が変わらない、メンバーの疲弊が続いているといった問題意識があれば、内容を自分の職場へ結びつけやすくなります。開発手法の知識よりも、人とチームの関係性への関心が読み進める助けになります。


どこから読むべき?

全体の問題意識から理解したいなら、第1章から順に読むのが適しています。人的負債の提示から、形式的なアジャイルの限界、チーム形成、心理的安全性、測定と改善へ進む構成だからです。

時間が限られている場合は、第4章で心理的安全性の中心論点をつかみ、第2章でアジャイルとの関係を確認し、第5章で測定と介入へ進む順番が効率的です。リモート環境の設計が目的なら、第7章を追加するとよいでしょう。


読む前に注意点はある?

本書は、すぐ使える声かけ集ではなく、デジタル変革、チームの発達、EQ、測定、柔軟な働き方まで扱う本です。短時間で簡単な会話術だけを得たいという期待で読むと、内容の広さと分量にズレを感じやすくなります。

また、心理的安全性は対立のない優しい職場を意味しません。異論や失敗を表に出せる状態を指しており、高い成果のための「唯一のスイッチ」という表現も、成果を決める唯一の要因ではなく、著者が重要性を強く示した主張として読むのが適切です。


まとめ|結局、この本を読む価値はある?

まとめ|結局、この本を読む価値はある?

この本の価値を3つで言うと

1つ目の価値は、DXやアジャイルが機能しない理由を、人とチームの状態から見直せることです。新しいツールや会議を導入しても、対話や人間関係を後回しにすれば「人的負債」が蓄積します。沈黙や疲弊を個人の問題だけで片づけず、組織環境の問題として捉え直せるようになります。

2つ目の価値は、心理的安全性を成果と結びついた業務基盤として理解できることです。本書が扱うのは、単に仲がよく居心地のよい職場ではありません。質問や異論、懸念、失敗を共有し、実験と学習を続けられるチームに必要な条件として整理されているため、自分の職場で何が欠けているのかを判断しやすくなります。

3つ目の価値は、心理的安全性とアジャイルを一続きの問題として考えられることです。働き方であるWoWだけでなく、それを支える考え方や関係性であるWoTまで変えなければ、改革は形だけになりかねません。チームの発達、EQ、測定、リモートワークまで含めて、人間中心の組織変革を広く捉えられる点が本書の特徴です。


この本をおすすめできる人・合わない人

おすすめできるのは、アジャイルやスクラムを導入したのに、メンバーの発言や自律性が高まらない管理職・開発リーダーです。制度や技術だけでなく、組織文化やチームの関係性からデジタル変革を見直したい経営者、人事・組織開発担当者にも向いています。

一方、心理的安全性の基本だけを短時間で学びたい人や、すぐ使える声かけ例だけを求める人には、扱う範囲が広く感じられる可能性があります。また、心理的安全性を成果のための「唯一のスイッチ」とする表現は、著者が重要性を強く示した主張として受け止める必要があります。


読むならどう活かす?

読後は、組織全体を一度に変えようとせず、まず自分が日常的に関わるチームを観察するのがよいでしょう。今日の会議後に5分だけ使い、質問・異論・懸念・失敗報告が実際に出ていたかを書き出します。

次に、導入済みの会議やツールが、対話・実験・学習を増やしているかを確かめます。改善点が見つかったら、一つの問い方や進め方だけを小さく変え、変化を継続して確認する使い方が本書の考え方に合っています。


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兼松 学

ビジネス書・実用書を中心に、年間約80冊を継続して読んでいます。採用・面接・人材育成に関わる実務経験をふまえ、実際に読んだ本をもとに要約・感想・比較レビューを執筆しています。本の内容だけでなく、向いている人、得られる学び、仕事や日常への活かし方まで伝わる記事を心がけています。

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