悩み・目的から選ぶ 本の選び方

チームがまとまらないときは何の本を読む?今の状態から学ぶテーマを決める

チームがまとまらないときは何の本を読む?今の状態から学ぶテーマを決める

「チームがまとまらない」と感じて本を探しても、チームビルディング、マネジメント、心理的安全性、リーダーシップなど、さまざまなテーマの本が見つかります。けれども、同じ悩みに見えても、職場で実際に起きていることによって必要な学びは変わります。会議を増やしても話がかみ合わないのか、メンバーが意見を出しにくいのか、役割や判断の基準が曖昧なのかでは、探す本の方向も同じではありません。

この記事では、おすすめ本を先に決めるのではなく、今のチームで確認できる状態を手がかりに、まず何について学ぶ本を探せばよいのかを整理します。


チームがまとまらないときは、原因ではなく「今起きていること」から本を選ぶ

チームがまとまらないときは、原因ではなく「今起きていること」から本を選ぶ

「チームがまとまらない」と感じたとき、すぐにコミュニケーションや心理的安全性、チームビルディングの本を探したくなるかもしれません。しかし、「まとまらない」という言葉だけでは、今のチームに必要な学びまでは決まりません。同じように見える悩みでも、職場で実際に起きていることは異なるからです。

たとえば、メンバーごとに優先している仕事が違う、誰が何を担うのか曖昧、話し合っているのに認識がそろわない、意見や質問がほとんど出ない、判断や仕事がリーダーへ集中している、といった状態では、それぞれ本を選ぶときに注目するテーマが変わります。最初から「コミュニケーション不足だろう」と決めてしまうと、必要な学びと選ぶ本がずれることがあります。

有効なチームを一つの要因だけで捉えない例として、Google re:Workが紹介するProject Aristotleでは、Google内の調査から、心理的安全性だけでなく、互いに仕事を任せられること、役割や目標などの構造と明確さ、仕事の意味や影響といった複数の要素が整理されています。これは、すべての職場をそのまま分類できる診断表ではありませんが、「チームの状態は一つの観点だけでは捉えきれない」と考える手がかりにはなります。

また、良いチームとは、全員が同じ意見を持ち、いつも仲良くしているチームとも限りません。意見の違いがあっても、必要な情報を共有し、役割を果たしながら一緒に仕事を進められるなら、その違い自体を問題と決めつける必要はありません。

本を選ぶ前に見るべきなのは、「まとまらない理由」を推測することではなく、職場で繰り返し何が起きているかです。目標や役割なのか、話し合いなのか、発言や相談の出にくさなのか、チームの動き方なのか。まずそこまで言葉にできると、自分が何について学ぶ本を探せばよいのかを絞り込みやすくなります。


目標・役割・決め方がそろわないなら、チーム設計やマネジメントを学ぶ

目標・役割・決め方がそろわないなら、チーム設計やマネジメントを学ぶ

チーム内で会話が行われていても、何を目指すのか、誰が何を担うのか、最終的に誰が判断するのかが曖昧なら、仕事はまとまりにくくなります。このような状態が繰り返し見られるなら、会話の量を増やす本だけでなく、目標や役割、意思決定、チーム運営を扱う本が候補になります。

見るべきなのは、目標や役割が「あるかどうか」だけではありません。それらが日々の仕事で判断に使える状態になっているかを確認すると、本の方向を選びやすくなります。


目指すものが人によって違うなら、目標や優先順位を扱う本

会社や部署の目標が掲げられていても、メンバーごとに「今は何を優先するべきか」の判断が大きく違うことがあります。たとえば、ある人はスピードを優先し、別の人は品質を優先するなど、それぞれが合理的に動いているのに、チームとして見ると仕事がかみ合わない状態です。

このとき確認したいのは、全員が目標を一字一句同じように説明できるかではありません。日々の仕事で迷ったときに、何を優先するかを考える共通の手がかりになっているかです。

目標を掲げることと、その目標が実際の判断基準として共有されることは別です。優先順位のずれが繰り返し起きているなら、目標共有やチーム設計、成果へつなげるマネジメントを扱う本を探す方向が考えられます。

ここで「メンバーの意識が低い」と決めつける必要はありません。それぞれが何を基準に動けばよいのかが十分に共有されていない可能性もあるため、本を探す段階では人の姿勢より仕事の組み立て方へ目を向けます。


誰が何を担い、どう決めるか曖昧なら、役割・意思決定を扱う本

役割分担が決まっていても、それだけでチームとして協働できるとは限りません。「ここまでは誰の責任なのか」「担当同士を誰がつなぐのか」「意見が分かれたとき誰が最終判断するのか」が分からなければ、仕事の抜けや重複、判断待ちが起こりやすくなります。

たとえば、自分の担当業務は分かっていても、その前後の仕事とのつながりが見えていなければ、各自が自分の範囲だけを終わらせる状態になりかねません。また、判断する人が曖昧なら、話し合いを重ねても結論が出ないことがあります。

こうした状態が複数の仕事で繰り返し見られるなら、役割、責任範囲、意思決定、チーム運営の仕組みを扱う本が候補になります。マネジメント本を探す場合も、部下への接し方だけではなく、目標や役割を成果につなげるチーム運営まで扱っているかを見ると、今回の悩みに合う本を見つけやすくなります。

チームビルディングの本でも、関係づくりだけでなく目標や役割など全体設計を扱うものは候補になります。テーマ名だけで決めるのではなく、自分が整理したい範囲を実際に扱っている本かどうかを見ることが、本選びの次の手がかりになります。


話し合いが機能しないなら、対話・関係性と心理的安全性を分けて考える

話し合いが機能しないなら、対話・関係性と心理的安全性を分けて考える

「会議をしているのにまとまらない」「コミュニケーションがうまくいかない」と感じると、会話を増やす方法や心理的安全性の本を探したくなるかもしれません。しかし、同じように話し合いが機能していないように見えても、起きている状態は同じとは限りません。

会話は十分にあるのに認識がかみ合わないのか、それとも意見や質問、懸念そのものが表に出てこないのか。この違いを見ると、対話・関係性を中心に学ぶべきか、心理的安全性を中心に学ぶべきかを判断しやすくなります。


話しているのに認識がかみ合わないなら、対話・関係性を扱う本

会議では発言があり、メンバー同士でも会話している。それでも、話し合ったはずの内容について理解が食い違ったり、決めたことが行動につながらなかったりするなら、単純に「コミュニケーションの量が足りない」とは言い切れません。

たとえば、同じ「顧客を優先する」という言葉を使っていても、ある人は対応速度、別の人は品質を重視していることがあります。言葉を交わしていても、その背景にある考え方や前提まで共有されていなければ、話し合いの後も判断がばらつきます。

こうした状態が繰り返し見られるなら、対話、相互理解、関係性、ファシリテーションなどを扱う本が候補になります。メンバー同士の協働や共通理解まで広く考えたい場合は、対話や場づくりを扱うチームビルディングの本も選択肢に入ります。

見るべきなのは会話の回数ではなく、異なる考えや前提を持ち寄り、それを意思決定や協働につなげられているかです。会議の進め方だけに絞る前に、何をすり合わせるための対話が必要なのかを扱う本かどうかを見ると、選ぶ方向が定まりやすくなります。


意見・質問・失敗が出にくいなら、心理的安全性を扱う本

話し合いの内容以前に、必要な発言そのものが出てこない場合は、別の方向から本を探す余地があります。

分からないことがあっても質問が出ない、問題を抱えていても相談が遅れる、反対意見や懸念が表に出ない、失敗が共有されない、新しい提案がほとんど出てこない。こうした状態が複数の場面やメンバーで繰り返しているなら、心理的安全性を扱う本が候補になります。

ここでいう心理的安全性は、単に仲が良いことや、何を言っても許される状態を意味するものとして扱わない方が本を選びやすくなります。今回注目するのは、質問や相談、異論、懸念、失敗といった、仕事を進めるために必要な情報がチーム内へ出ているかどうかです。

発言が少ないという事実だけで、心理的安全性が低いと決めることはできません。そもそも会議の目的が分からない、誰に判断権があるのか不明確、必要な知識が足りないといった別の状態が重なっている可能性もあります。

そのため、「意見が出ないから心理的安全性の本」とすぐに決めるのではなく、必要な発言や相談がさまざまな場面で出にくいかを見ます。その傾向が続いているなら、率直な発言、相談、挑戦、失敗からの学習、リーダーの反応やチーム環境を扱う本を探す方向が考えられます。

対話・関係性と心理的安全性の両方が当てはまることもあります。その場合も無理に一つへ絞らず、今のチームでより強く変えたい状態を見ながら、最初に読むテーマを選んでいきます。


リーダーが抱え込み、メンバーが受け身なら、主体性と関わり方を学ぶ

リーダーが抱え込み、メンバーが受け身なら、主体性と関わり方を学ぶ

目標や役割がある程度共有され、意見も出ているのに、最終的な判断や問題解決がいつもリーダーへ戻ってくることがあります。この状態を「メンバーにやる気がない」「主体性がない」と決めつけるだけでは、本の方向を選びにくくなります。

見るべきなのは、メンバーの内面ではなく、実際に誰が考え、誰が判断し、誰が仕事を引き受けているかです。複数のメンバーが継続的に指示を待ち、リーダーがいないと仕事が進みにくいなら、主体性を引き出すチーム運営やリーダーシップを扱う本が候補になります。


判断や仕事がリーダーへ集中しているなら、全員で動くチーム運営を扱う本

問題が起きるたびにリーダーが解決し、判断に迷えばすべてリーダーへ確認が戻り、仕事が滞れば最後はリーダーが巻き取る。こうした状態が複数のメンバーに共通しているなら、一人ひとりの意欲だけを見るより、チーム全体の動き方を扱う本を探す方が状況に合う可能性があります。

候補になるのは、主体性、チームワーキング、任せ方、参加型のチーム運営などを扱う本です。単に仕事を割り振る方法ではなく、メンバー自身が考え、判断し、互いに働きかけられるチームをどのように運営するかまで扱っているかを見ると、本の守備範囲を判断しやすくなります。

ここで「任せる」を、リーダーが何もせず仕事を渡すことと捉える必要はありません。今回の本選びで確認したいのは、役割を渡したあとも判断がすべてリーダーへ戻っていないか、チーム内で考える余地が残されているかという点です。


メンバーの考えや強みを活かせていないなら、リーダーの関わり方を扱う本

仕事を任せていても、進め方や答えをほとんどリーダーが決めていると、メンバーの考えがチーム運営へ入りにくくなることがあります。会議でも意見は出るものの、最後は毎回リーダーの答えを待つ形になるなら、リーダー自身の関わり方を扱う本も候補です。

この方向では、リーダーシップ、任せ方、メンバーの強みを活かす運営、意思決定への参加のさせ方などを扱う本を探します。目的は「リーダーがもっと指導する方法」を学ぶことに限定されません。チームの中で誰が考え、誰が判断するのかを見直し、メンバーの考えを運営へ取り込む視点を学べる本かどうかが選書の手がかりになります。

なお、受け身に見える状態が特定の一人だけに集中しているなら、チーム全体の主体性とは別に考える余地があります。その場合は、個別の任せ方や成長支援を扱う部下育成という方向も含めて、読むテーマを見直します。


個人の問題かチーム全体の問題かを分けて、最初に読むテーマを決める

個人の問題かチーム全体の問題かを分けて、最初に読むテーマを決める

ここまでで、自分のチームに近い状態がいくつか見えてきたら、次は「その状態がどこまで広がっているか」を確認します。同じように見える悩みでも、特定の一人に集中しているのか、複数のメンバーに共通するのか、さらに部署や制度まで広がっているのかで、探す本の守備範囲は変わります。


特定の一人に偏るなら、部下育成を学ぶ方向も候補にする

「指示を待つ」「報告が遅い」「仕事を任せても戻ってくる」といった状態が、ほかのメンバーにはほとんど見られず、特定の一人に集中しているなら、チーム全体を扱う本だけに絞らない方が選びやすくなります。

その場合は、任せ方、フィードバック、成長支援などを扱う部下育成が候補です。個別の育成を優先したいなら、部下育成の本・書評から、自分の状況に近い本を探せます。

これは「その人に原因がある」と決めるための区別ではありません。問題が見えている範囲に合わせて、チーム全体の運営を学ぶのか、一人への関わりを中心に学ぶのかを分けるための判断です。


複数人や複数部署に広がるなら、扱う範囲を広げる

同じ状態が複数のメンバーに見られるなら、個別育成だけではなく、チーム全体の設計や協働を扱う本が候補になります。目標や役割、意思決定を見直したいならマネジメントの本・書評、対話や協働、主体性までチーム単位で考えたいならチームビルディングの本・書評というように、今確認できる状態に合わせて探す範囲を決めます。

さらに、同じ問題が複数のチームや部署で繰り返され、制度や組織構造まで関係しているなら、一つのチームだけを扱う本では範囲が狭いこともあります。その場合は組織開発の本・書評まで候補を広げます。

反対に、一つのチーム内で起きていることまで何でも組織全体の問題として捉える必要はありません。読む本の範囲を、実際に状態が広がっている範囲に合わせます。


複数テーマが当てはまるなら、今いちばん変えたい状態から選ぶ

実際のチームでは、目標も曖昧で、意見も出にくく、リーダーへ判断が集中しているなど、複数の状態が同時に見えることがあります。このとき、どれが「本当の原因」なのかを一つに決める必要はありません。

最初の一冊を決めるなら、今いちばん変えたい状態を中心に考えます。迷う場合は、何度も繰り返しているか、仕事への影響が大きいか、自分が働きかけられる範囲かも判断材料になります。

今確認できる状態まず候補にする学習テーマ探す本の方向
目標・優先順位・役割・決め方が曖昧チーム設計・マネジメント目標、役割、意思決定、チーム運営を扱う本
話しているのに認識がかみ合わない対話・関係性・チームビルディング対話、相互理解、ファシリテーションを扱う本
意見・質問・相談・失敗が出にくい心理的安全性率直な発言、相談、挑戦、学習環境を扱う本
リーダーへ判断・仕事が集中する主体性・リーダーシップ任せ方、参加型運営、チームワーキングを扱う本
特定の一人だけに問題が集中する部下育成任せ方、フィードバック、成長支援を扱う本
複数チーム・部署・制度に広がる組織開発/広いマネジメント関係性、構造、組織変革を扱う本

たとえば、意見や相談が出にくい状態を先に理解したいなら、心理的安全性の本・書評から具体的な本を探せます。別の状態を優先するなら、それに対応するテーマから探せばよく、一冊目にすべての課題への答えを求める必要はありません。

「チームがまとまらない」という言葉から本を選ぶのではなく、自分の職場で何が起き、どこまで広がり、今何を変えたいのかを整理する。そこまで決まれば、最初に読む本のテーマも絞りやすくなります。



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兼松 学

書評サイト「本のものさし」運営者。ビジネス書・実用書を中心に年間約80冊を読み、採用・面接・人材育成に約9年携わった実務経験も踏まえて執筆しています。実際に読んだ本の要点だけでなく、向いている人や類書との違いまで整理し、自分に合う一冊を選ぶための判断材料を届けることを大切にしています。

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