
電話に出た瞬間、敬語や取り次ぎの言い方が頭から抜けてしまう。保留してよいのか、折り返しにするのか、相手の名前をどう聞き直すのか――電話応対は、知識があってもその場で判断することが多く、苦手意識につながりやすい仕事です。『新版 電話応対&敬語・話し方のビジネスマナー』は、受電・架電の流れ、敬語、クレーム対応を中心に、チャットや来客、ホウレンソウまでイラストと具体例で整理しています。
この記事では、本書の要約と目次、読んだ感想、4つの基本が役立つ理由、注意点、向いている人・向いていない人、類書との違いまで整理します。電話応対だけを深く学びたいのか、仕事の会話全体を一冊で見渡したいのかを考えながら読むと、自分に合う本か判断しやすくなります。
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要約|どんな本か・何が学べるか

電話応対の基本から受電・架電まで学べる
本書は、電話応対を中心に仕事のコミュニケーションを学ぶ初心者向けのビジネスマナー本です。前半では「正確に・簡潔に・迅速に・にこやかな表情で」という電話応対の4つの基本から始まり、電話を受ける流れ、電話をかける流れ、取り次ぎ、伝言、問い合わせ対応まで順を追って確認できます。
受電では、電話に出る、名乗る、相手の会社名・名前・用件を確認する、取り次ぐか自分で対応する、最後にあいさつして切るという流れが整理されています。架電でも、事前準備、名乗り、相手の都合の確認、用件の伝達という順序が示されているため、「電話で何を言えばいいのか分からない」という状態から、まず型を持つために使いやすい構成です。
敬語・クッション言葉・NG表現を場面別に確認できる
電話の流れと並んで、本書で大きな比重を占めるのが敬語です。敬語の基本、敬語変換一覧、立場に合わせた使い分け、ありがちなNG敬語、敬意表現、クッション言葉などがまとめられています。
単に「正しい敬語」を並べるのではなく、よくある誤りと適切な表現を見比べたり、場面別の言い方を確認したりできるため、迷ったときに必要な箇所へ戻りやすいです。電話だけでなく、対面での会話やお願い・謝罪などにもつながる言葉遣いの土台として使えます。
クレームや電話トラブルへの対応も扱う
Part4では、通常の受電・架電だけではなく、クレームや電話トラブルへの対応まで扱います。クレーム対応は、相手の言い分を聞く、お詫びする、状況を確認する、対応策を提案する、最後にお礼を言うという流れで整理され、NGワードや上司へ引き継ぐ判断も確認できます。
そのほか、英語で電話がかかってきた場合、セールス電話、間違い電話、イタズラ電話など、日常業務で起こりやすい困りごとも取り上げています。電話応対の基本を知ったあと、「想定外の場面でどうするか」まで見渡せるのが特徴です。
電話以外のビジネスコミュニケーションまで広がる
本書は電話だけの専門書ではありません。チャットで連絡する際のマナー、来客対応、ビジネス会話、ホウレンソウ、質問、謝罪、お願い、断り方、人間関係をよくする話し方まで扱います。
出版社公式でも、ロングセラーを令和に合わせてリニューアルした新版として、オールカラーのイラストとマンガ、チャットアプリなど時代に合わせたマナーが特徴として挙げられています。電話を入口に、仕事で人とやり取りするときの基本を一冊で見渡したい人に向く守備範囲です。
目次|本書の構成を確認する
著者について
監修者の尾形圭子氏は、公式プロフィールで、株式会社ヒューマンディスカバリー代表取締役、人材育成パートナー・講師/キャリアコンサルタントとして紹介されています。航空会社で接遇やOJTのノウハウを学び、その後は大手書店で採用・人材育成や店舗実務を経験。2000年から講師として活動し、2004年に研修会社を設立しています。
電話応対やビジネスマナーを、単なる言葉遣いではなく、相手に伝わるコミュニケーションとして扱ってきた経歴は、本書の構成ともつながっています。言葉の正しさだけでなく、相手への配慮や仕事を進めるための判断まで視野に入れている点が、本書の特徴です。
感想|実際に読んで分かったこと

電話は「即興の会話」ではなく流れのある業務に見えてきた
本書を読んで強く残るのは、電話応対を「正しい敬語を覚える作業」だけで捉えない方がよいということです。敬語は大切ですが、実際の電話では、相手の名前や用件を聞き取り、必要に応じて復唱し、取り次ぐのか、自分で対応するのか、折り返すのかを判断しなければなりません。
受電にも架電にも一定の順序があります。こうして流れで見ていくと、電話は完全な即興会話ではなく、いくつかの分岐を持った業務に近く見えてきます。言葉を一つずつ覚えるより、まず「次に何を確認するか」を持つ方が、電話への苦手意識を整理しやすいと感じました。
3コール・30秒は「次の判断」の目安として理解しやすい
本書には「3コール以内」「30秒以上かかりそうなら折り返しを提案する」といった具体的な目安が出てきます。数字だけを見ると暗記項目に感じますが、読んでいくと重要なのは、その数字自体よりも相手を待たせたままにしないことだと理解しやすくなります。
何秒なら絶対に正しいという話ではなく、「このまま待たせるのか、次の対応へ切り替えるのか」を判断する基準として読むと実務に結びつきます。電話応対を細かなルールの集合ではなく、相手の負担を減らすための判断の連続として見られるようになります。
敬語は「知っている」と「使える」が別だった
敬語の一覧では、間違った言い回しと適切な表現が並ぶため、自分が迷いやすいところを確認しやすいです。一方で、一覧を一度読んだからといって、すべての敬語がとっさに出るようになるわけではありません。
頻繁に使う表現から少しずつ使える形にしていく必要があります。「知識として正解を知ること」と「電話中に自然に使えること」には距離がある。この違いを意識できると、本書を暗記本ではなく、必要な表現へ何度も戻る参照本として使いやすくなります。
クレームも順番が分かると整理しやすい
クレーム対応でも、単に謝るだけではなく、相手の言い分を聞く、お詫びする、状況を確認する、対応策を提案する、最後にお礼を言うという流れが示されています。感情的になりやすい場面ほど、「何から手を付けるか」が分かることの意味は大きいです。
もちろん、重大なクレームや補償判断は会社ごとのルールが必要で、本書だけで専門対応まで完結するわけではありません。それでも、まず聞く、状況を確認する、必要なら上司へつなぐという基本の順序を持つことで、電話応対を敬語の正答率だけで測らなくてよいと分かります。聞き取り、復唱、待たせ方、要点整理、相手の状況確認、相談判断まで含めて応対だと捉え直せることが、読後に残るポイントでした。
4つの基本が、細かなフレーズに迷ったときの戻り場所になる

本書の特徴の一つは、細かな敬語やフレーズへ入る前に、「正確に・簡潔に・迅速に・にこやかな表情で」という4つの基本を置いていることです。これは単なるチェック項目ではなく、迷ったときに戻れる上位の判断基準として機能します。
正確に|復唱と言い換えで聞き間違いを防ぐ
「正確に」は、相手の名前や用件を一度で聞き取ることだけではありません。聞き取れなければ確認し、必要なら復唱し、間違いやすい言葉は別の表現に言い換えて確かめる。曖昧なまま先へ進まないことが中心です。
電話では文字が見えないからこそ、分かったつもりで処理するより、確認の手間を入れる方が結果的に仕事を進めやすくなります。
簡潔に|結論と理由を整理して伝える
「簡潔に」は、早口で短く話すことではありません。何を伝えたいのか、理由は何か、相手に次に何をしてほしいのかを整理して話すことです。
用件を長く話し続けるより、要点をまとめた方が相手も判断しやすくなります。電話だけでなく、チャットやホウレンソウにもそのままつながる考え方です。
迅速に|相手を待たせ続けない
「迅速に」は、何でもその場ですぐ答えることではなく、相手を放置しないための判断です。確認に時間がかかるなら折り返しを提案する、分からなければ早めに相談するなど、次の対応へ切り替えることも含まれます。
3コールや30秒といった目安も、この「待たせ続けない」という基準と一緒に読むと、数字だけを暗記するより意味が分かりやすくなります。
にこやかな表情で|声の印象まで応対の一部になる
顔が見えない電話でも、表情と声は無関係ではありません。緊張すると声が硬くなったり、早口になったりしやすいため、本書は言葉の正しさだけでなく、相手にどう聞こえるかまで応対の一部として扱っています。
この4つを持っておくと、細かなフレーズに迷ったときも「正確に伝わっているか」「長引かせていないか」「待たせていないか」「感じの悪い声になっていないか」と立て直せます。全部の言い回しを暗記する前でも行動を修正できることが、この4つの基本の強みです。
電話だけで終わらず、チャット・来客・ホウレンソウまでつながる

本書は、電話応対を独立した技能として終わらせず、仕事のコミュニケーション全体へ広げています。ここに、電話特化本とも一般的な総合マナー本とも少し違う、本書の「中間の広さ」があります。
チャット|手軽さほど相手への配慮が必要になる
チャットでは、送信先の確認、早めの返信、簡潔な内容、重要事項や個人情報を安易に送らないこと、就業時間、スタンプやグループ連絡への配慮などが整理されています。
電話とは手段が違いますが、「相手の状況を想像する」「必要な情報を簡潔に渡す」という軸は共通しています。手軽に送れるからこそ、送る前の確認が必要になる点が分かりやすいです。
来客・対面会話|「どう伝わるか」まで意識する
後半では、初対面でのあいさつ、日常のあいさつ、名刺交換、来客対応など、対面での基本も扱います。電話では声だけ、対面では表情や姿勢も加わりますが、「相手にどう受け取られるか」を考える点は共通しています。
電話で学んだ言葉遣いや相手への配慮を、対面の場面へ切り替えて考えられるため、電話だけを別物として覚えずに済みます。
ホウレンソウ|情報を整理して伝える力につながる
ホウレンソウの章では、事実と自分の意見を分ける、問題点を整理する、詳細は書面も使う、相談は早めにするといったポイントが示されています。
これは電話で相手の用件を整理したり、クレーム時に状況を確認したりする場面ともつながります。電話が苦手だと思っていても、実際には「何を聞き、何を整理し、誰へ渡すか」という情報整理でつまずいていることもあると分かります。
人間関係|正しさだけでなくレスポンスの質も大切になる
Part7では、人間関係をよくする会話術、印象のよいあいづち、意見の伝え方、断り方、話しにくい人とのコミュニケーションなどへ広がります。
ここまで読むと、本書が伝えたいのは「正しい敬語だけ」ではないことがはっきりします。相手の話を受け止め、必要な情報を返し、場面に合わせて言葉を選ぶ。電話で必要な基本が、そのまま仕事の会話全体へつながっていることが本書の選択価値です。
注意点|読む前に知っておきたいこと

広く学べるぶん、電話特化本ほど深くはない
守備範囲の広さは本書の強みですが、そのまま注意点にもなります。電話、敬語、クレーム、チャット、来客、ホウレンソウ、人間関係まで一冊で扱うため、特定分野を専門的に深掘りする本ではありません。
コールセンターのように複雑な問い合わせを日常的に受ける仕事、難しいクレームを専門的に扱う仕事、営業電話やテレアポを重点的に学びたい人には、より専門的な教材が必要です。本書は「まず全体像をつかむ」用途に強い本です。
敬語は読むだけでは身につかない
敬語の一覧やNG表現は確認しやすい一方、知識として理解した表現を、とっさの会話で使えるようにするには反復が必要です。本書は敬語を整理する入口としては便利ですが、反復練習だけに特化したトレーニング本とは役割が違います。
敬語を重点的に鍛えたい人は、本書で基本を確認したあと、場面別の練習教材へ進む方が目的に合いやすいでしょう。
3コール・30秒などは職場ルールとも照合したい
本書にある3コールや30秒などの目安、チャットの使い方、来客対応や書類の扱いは、職場によって正式ルールが異なる場合があります。
本書を「これだけ守れば正解」という規則集にするのではなく、共通の基本を知り、自分の職場の運用と照合するための土台として使う方が安全です。特にクレームや補償に関わる判断は、自社のルールや上司への確認を優先する必要があります。
全部を一度に覚えず、必要な場面から引く方が使いやすい
本書は扱う範囲が広いため、最初から全部を覚えようとすると負担が大きくなります。受電の流れ、不在時の言い方、敬語、クレームなど、自分が直近で困っている場面から読む方が使いやすいです。
短い項目や一覧、ケースが多いので、一度通読して終わるより、困ったときに戻る参照本として使う方が本書の特徴を生かせます。そこから「電話をもっと深めたい」「敬語を練習したい」と次の課題が見えたら、専門書へ進む使い方が自然です。
向いている人・向いていない人

向いている人
本書は、電話だけを極める前に、仕事のコミュニケーションの基本を一度見渡したい人に向いています。
- 新社会人で、電話応対の基本から学びたい人
- 電話に苦手意識があり、まず受電・架電の流れを把握したい人
- 敬語、チャット、来客、ホウレンソウまで一冊で見渡したい人
- 文章中心の専門書より、イラストやマンガで学びたい人
- 困った場面であとから引ける参照本がほしい人
「電話が苦手」と感じていても、原因が敬語なのか、聞き取りなのか、取り次ぎなのか、まだ自分で分かっていない段階があります。本書は広い範囲を見渡せるので、自分がどこで詰まりやすいかを見つける入口として使いやすいです。
向いていない人
一方、すでに課題が明確で、その分野を専門的に深めたい人には、より絞った本の方が目的に合う場合があります。
- コールセンターなど、専門的な電話訓練を求める人
- 高度なクレーム対応だけを深く学びたい人
- 敬語の反復トレーニングに特化した教材を探している人
- 会話の心理理論や背景を詳しく読みたい人
本書は「基本を広く、すぐ確認できる」ことに強みがあります。特定分野の専門性を最優先する場合は、本書を入口にしたうえで、電話特化・敬語特化の本へ進む方が満足しやすいでしょう。
似た本との違い|選び分けのポイント

本書を類書と比べるときは、何を起点に学びたいかで選ぶと分かりやすいです。電話を中心に仕事の会話全体へ広げたいのか、電話だけを深めたいのか、それとも社会人マナー全般から学びたいのかで、適した本が変わります。刊行年もあわせて見ると、各本がどの時期のビジネス環境を前提にしているか判断しやすくなります。
| 書籍 | 刊行年 | 主なテーマ | 電話への比重 | 周辺マナー | 向いている目的 |
|---|---|---|---|---|---|
| 新版 電話応対&敬語・話し方のビジネスマナー | 2020年 | 電話+敬語+仕事の会話 | 高め | チャット・来客・ホウレンソウまで | 電話を入口に基本を広く学ぶ |
| [新版]一生使える「電話のマナー」 | 2025年 | 電話応対 | 高い | 電話中心 | 電話業務を重点的に深める |
| 改訂新版 入社1年目 ビジネスマナーの教科書――イラストでまるわかり! | 2023年 | 社会人マナー全般 | 総合項目の一部 | 社会人基礎を広く扱う | 仕事のマナー全体を学ぶ |
[新版]一生使える「電話のマナー」
電話応対そのものをさらに深く学びたいなら、『[新版]一生使える「電話のマナー」』が比較候補です。2025年刊行の新版で、電話の受け方・かけ方から、電話で起きる困りごとまで、電話応対を中心に学ぶ位置づけです。
一方、『新版 電話応対&敬語・話し方のビジネスマナー』は、電話を入口に敬語、チャット、来客、ホウレンソウまで広げたい人に向きます。「電話だけを深めたいのか」「仕事の会話全体も一緒に見たいのか」が選び分けの軸です。
改訂新版 入社1年目 ビジネスマナーの教科書――イラストでまるわかり!
社会人マナー全般を起点にしたいなら、『改訂新版 入社1年目 ビジネスマナーの教科書――イラストでまるわかり!』が比較候補になります。2023年刊行の改訂新版で、電話だけでなく、社会人として必要な基本を幅広く学びたい人に向く総合型です。
本書は総合型でありながら、電話応対と敬語にかなりの比重があります。電話への苦手意識が本選びの出発点なら本書、社会人マナー全体が出発点なら『入社1年目 ビジネスマナーの教科書』という違いで考えると整理しやすいです。
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敬語力トレーニング ビジネスマナー編
本書の敬語一覧やNG例を読んで、「知識として分かるだけでなく、場面ごとに練習したい」と感じたなら、『敬語力トレーニング ビジネスマナー編』が次読候補です。
PHP研究所の公式説明では、基本編、社内編、社外編、電話編、文書編などのシチュエーションで敬語表現を学ぶ構成です。2007年刊行とやや前の本ですが、敬語の基本を場面別に反復して身につける目的なら、本書とは役割を分けて使えます。
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