
友人の合格や同僚の昇進、SNSで見た誰かの成果と自分を比べて、続けていた勉強や仕事、趣味への意欲が急になくなることがあります。比べた後に行動が止まっても、羨ましさが消えないのか、目標そのものに迷い始めたのか、相手の速さに合わせて疲れたのかによって、役立つ本は変わります。
この記事では、止まった行動を再開するために、感情・目標・小さな習慣という三つの方向から本を選び、向かない場合と購入前の確認点まで紹介します。
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人と比べてやる気をなくしたときは、止まった理由から本を選ぶ

誰かの成果を見たとき、悔しさが残る人もいれば、自分の目標に意味を感じなくなる人もいます。あるいは、やりたいことは変わらないのに「相手と同じ量をこなさなければ」と考えて、取りかかれなくなる場合もあるでしょう。同じ「やる気がなくなった」という言葉でも、本で学びたいことは異なります。
最初に思い出したいのは、比較する前まで何に取り組んでいて、比較したあと何ができなくなったかです。例えば創作活動を続けていた人がSNSで人気作品を見たとき、「羨ましくて自分の作品を作る気になれない」なら感情の扱い方が問題になります。「人気を得るために始めたのだろうか」と迷い始めたなら目標の確認が先です。毎日作品を投稿しようとして挫折したなら、取り組む単位を見直す方向が考えられます。
| 比較したあとに起きたこと | 本で確かめたいこと | 最初に読む候補 |
|---|---|---|
| 相手を羨む気持ちが強く、自分の行動が止まった | 羨ましさから何を学び、どう動くか | 『嫉妬を今すぐ行動力に変える科学的トレーニング』 |
| 人の成果を追ううち、目標の意味が分からなくなった | 自分で目標を選び、進捗を捉え直す方法 | 『科学的に証明された 自分を動かす方法』 |
| 相手と同じ量を目指して、普段の作業にも着手できない | やる気の強さによらず小さく始める方法 | 『小さな習慣』 |
表の三つは性格の分類ではありません。自分にいくつも当てはまる場合は、今いちばん戻りたい行動を一つ挙げ、その行動を妨げているものに近い行を選んでください。ここで重視するのは「誰に負けたのか」ではなく、次の一歩を踏み出すために、どの知識が足りないかです。
羨ましさや悔しさで手が止まったなら『嫉妬を今すぐ行動力に変える科学的トレーニング』
同僚が評価された、友人の作品が注目された、同世代の人が目標を達成した。そんな出来事を知って「自分もやりたい」と思う一方、相手の姿が頭から離れず、取り組む気力をなくしてしまうことがあります。具体的に羨ましい点があるのに、気持ちを抑えるだけで終わっているなら、その感情を分析して行動につなげる本が役立つかもしれません。
永井竜之介著の『嫉妬を今すぐ行動力に変える科学的トレーニング』(秀和システム)は、嫉妬を一律に悪い感情と捉えず、自分を成長させる方向に生かす方法を扱います。嫉妬のよい面と悪い面を整理し、比較する相手との関係を考え、羨ましさの正体を掘り下げていく構成です。気持ちを励ます言葉を読むだけではなく、どこに自分の関心が向いているのかを具体化していきます。
特に参考になるのが「分解する嫉妬ツリー」と「育成する嫉妬ツリー」です。相手の成功を漠然と「すごい」と受け止めるのではなく、どの部分に惹かれたのかを分け、自分が取り入れたいことを考えます。例えばSNSで注目される作品を見たとき、表現、構成、発表方法など、自分が羨ましいと思った要素を具体的にする読み方ができます。他人の成果を眺めて止まるのではなく、自分が試す行動を選びたい人に合う一冊です。
一方、誰かに特に羨ましい点があるわけではなく、自分の存在価値まで否定している場合は、嫉妬を行動に変える方法より自己受容を扱う本が適しているかもしれません。また、相手に勝つためだけに努力量を増やそうとすると、かえって疲れる可能性もあります。本書の方法は自分が伸ばしたい要素を見つけるために使い、競争を義務にしないことが大切です。
人の成果を追って目標が分からなくなったなら『科学的に証明された 自分を動かす方法』
友人が資格に合格したから自分も受験しようとした、同僚が昇進したから肩書を目標にし始めた。ところが、比べているうちに、もともと何を得たくて取り組んでいたのか分からなくなることがあります。この場合は、もっと強く自分を励ます言葉よりも、自分にとって意味のある目標とその進み具合を見直す知識を探す方向が合います。
アイエレット・フィッシュバック著、上原裕美子訳の『科学的に証明された 自分を動かす方法』(東洋経済新報社)は、目標の選び方からモチベーションの持続、複数目標の調整、周囲の人との関係までを扱います。第1部には目標とタスクの違い、数字の意味、楽しさや内発的モチベーションについての章があり、他人と同じ数字を達成することが本当に目指したいことなのかを考える入口になります。
例えば「同僚より早く昇進する」を追っていた人も、本来望んでいたのは専門性を磨くことや、やりたい仕事を担当できるようになることかもしれません。そうであれば、他人の肩書ではなく自分の能力や経験の変化を進捗として確かめられます。第2部では進捗や途中の停滞、否定的なフィードバックについて説明するため、「自分だけ何も進んでいない」と感じる場面を捉え直す手掛かりになります。
さらに第4部には、他人の存在のもとで目標を追うことや、他人とともに目標を追うことを扱う章があります。競争相手の存在と自分の目標を区別して考えたい人に向いています。ただし、本書は読み応えのある体系的な内容です。すでに自分の目標が明確で、今日の作業に取りかかることだけが難しいなら、次の『小さな習慣』の方が必要な方法を見つけやすいでしょう。
他人の速さに焦って始められないなら『小さな習慣』
同じ資格を目指す人が毎日何時間も勉強していると知り、自分もその時間に合わせようと予定を組み直す。けれど負担が大きくなり、以前は続けられていた短時間の勉強さえ止まってしまうことがあります。目標には納得しているのに、比較によって着手の基準を引き上げてしまった人には、行動の大きさを調整する本が向いています。
スティーヴン・ガイズ著、田口未和訳の『小さな習慣』(ダイヤモンド社)は、毎日実行する行動を非常に小さく決め、それを繰り返す方法を紹介します。著者の「腕立て伏せ1回チャレンジ」に象徴されるように、最初から大きな成果を目指すのではなく、行動の入口を小さくすることを重視する本です。
第3章ではモチベーションと意志の力について考え、やる気が高まるのを待つだけに頼らない方向へ読み進められます。第6章では小さな行動を決めて実行するための8ステップを扱います。例えば他人の勉強時間をまねする代わりに「帰宅したら問題集を開いて一問を見る」と決めることができます。これは本書の考え方を自分の生活に応用する一例です。
第7章では小さな習慣を続けるうえでのルールを扱っています。他人がどれだけ進んだかより、自分が今日始められるかを重視したい人には、試したい方法を見つけやすいでしょう。一方、目標そのものに納得できない場合は、行動を小さくしても疑問が残ります。自己否定や疲労が強いときに、無理やり自分を動かすための道具として使うことも避けたいところです。
3冊が合わない場合は、別の本や対処を選ぶ

ここまでの3冊は、他人との比較をきっかけに止まった取り組みを再開するための本です。しかし、今のつらさが行動の再開方法だけでは扱いきれない場合もあります。自己評価、身につけたい技能、心身の負担のうち、何がいちばん問題になっているかによっては、別の本や読書以外の助けを選んだ方がよいでしょう。
自分の価値まで低く感じるなら、自己受容を扱う本を考える
誰かの成果を見て「自分もあの技術を学びたい」とは思えず、「自分には価値がない」という考えが強くなることがあります。頑張って結果を出したときしか自分を認められない場合、行動量を増やすための本だけでは、苦しさが残るかもしれません。自分をどう評価しているのか、できたことと人としての価値を結びつけすぎていないかを考える方が合います。
この悩みについては、人と比べて落ち込むときの本の選び方で、自己受容や自分の望み、能力差について学ぶ本を探せます。今回の記事は比較のあと止まった行動を再開することが中心ですが、比較したことで自分自身を否定するつらさが強いなら、そちらの本選びから始めてもよいでしょう。
伸ばしたい能力が具体的なら、その分野の実用書を選ぶ
英語を流暢に話す友人を見てやる気を失ったとしても、実際に困っているのが文法や発音の知識不足なら、モチベーション本より語学教材の方が役立つ場合があります。仕事で資料作成が得意な同僚と比べて落ち込んだ場合も、改善したい点が文章構成や図解の技術なら、それを直接学べる本を選ぶ方が具体的です。
「明日、どんなことができるようになれば一歩進めるか」を考えてみてください。答えが技能や知識なら、教科別の参考書や実務書を選ぶ方向になります。一方、必要な教材は分かっているのに、羨ましさや悔しさが邪魔をして使い始められないなら、最初に紹介した感情と行動のつながりを扱う本に意味があります。選ぶべきなのは、気持ちを変える本なのか、技術を身につける本なのかという違いです。
疲れや不安が強いなら、本を読むより負担の調整を優先する
仕事や学校で無理が続いている、睡眠が足りていない、SNSを見るたびに気持ちが大きく沈む。そうした状況で行動できない理由を、単に他人との比較に弱いからだと決めつけることはできません。SNSを見る時間を減らしたり、予定を調整したり、十分に休んだりする方が先になることもあります。
不眠や強い不安、落ち込みが続いて日常生活に支障がある場合は、本だけで何とかしようとしないことも大切です。身近な人や学校・職場の相談窓口、医療機関などへ相談する方法も考えてください。読書すること自体が負担な日には、やる気を取り戻す課題を新しく増やす必要はありません。
買う前に目次を確認し、自分が試す一歩を決める

読みたい方向が決まったら、書名の印象だけで購入せず、目次と試し読みで今の疑問に答える内容があるかを確かめます。紹介した3冊をすべて読む必要はありません。最初に知りたいことが分かる章と、今の自分が無理なく読み進められる説明の深さを基準に、一冊を絞ってください。
目次と試し読みで、困りごとに答える章を見つける
『嫉妬を今すぐ行動力に変える科学的トレーニング』なら、羨ましさの扱い方を知りたい人は嫉妬の種類を扱う部分、具体的に行動へつなげたい人は嫉妬ツリーの説明に注目できます。『科学的に証明された 自分を動かす方法』なら目標を選び直す第1部、他人との関係を考える第4部が入口です。『小さな習慣』ならモチベーションと意志の力を扱う第3章、始める方法を知る第6章を確認するとよいでしょう。
試し読みができる場合は、内容が今の自分には難しすぎないか、具体例が役立ちそうか、一度に読む分量が負担にならないかも確認してください。感情を分析するワーク、目標を考える理論、小さな行動を試す手順では、読む目的が違います。すでに持っている本に必要な説明があれば、買い足す前に該当する章を読み直す方法もあります。
読んだあとは、他人ではなく自分を基準に小さく再開する
読書の目的は、他人と同じ速さに追いつくことではありません。羨ましさを分析する本を選んだなら、相手のどの要素を自分も学びたいか一つ挙げる。目標の本なら、現在の目標を続けたい理由を一文にする。小さな習慣の本なら、今日無理なくできる動作を一つ試す。読んだ内容を生活に結びつけるときには、こんな使い方が考えられます。
今の自分に必要な学びと、今日できる一歩を別々に決めることが、比較によって止まった行動を再開する手掛かりになります。羨ましさから学びたいなら『嫉妬を今すぐ行動力に変える科学的トレーニング』、自分の目標を選び直したいなら『科学的に証明された 自分を動かす方法』、取りかかる負担を減らしたいなら『小さな習慣』。人の達成量ではなく、今の困りごとに合う一冊を選んでください。