特に印象に残ったのは、著者自身が「甘やかしマネジメント」で失敗した経験を起点にしているところです。部下のためを思って仕事を引き取ることが、結果的には成長の機会を奪ってしまうという指摘は、読んでいて少し痛みもあります。構成は、ブレーキの正体から始まり、メンバー理解、フィードバック、委任、1 on 1へと進んでいく流れになっていて、言い方だけを直すのではなく、関わり方そのものを整えていく本だと受け取りました。
良かったのは、「部下を思い通りに動かす」方向に寄っていないところです。フィードバックを評価ではなく情報提供として捉えたり、1 on 1を業務管理ではなく成長支援として扱ったりする視点には、押しつけではないマネジメントを目指す姿勢が感じられました。一方で、すぐに使える短いフレーズ集を期待して読むと、少し違うと感じるかもしれません。リードマネジメントや欲求理解といった前提も含めて読む本なので、手軽な言い換えテクニックだけを求める人にはやや遠回りに映る可能性があります。
部下に言いたいことがあるのに飲み込んでしまう人、任せた仕事を結局自分で抱えてしまう人、1 on 1やフィードバックに苦手意識がある人には合いそうです。反対に、成果管理の方法だけを知りたい人や、即効性のある会話テンプレートを探している人には向きにくいかもしれません。読み終えてみると、「優しくすること」と「成長に関与しないこと」は違うのだと、静かに突きつけられる本でした。
「言えない優しさ」を見直したくなる一冊
兼松 学