
若手が辞めるたびに、給料や人間関係のせいだと考えても、どこか腑に落ちない。『離職防止のプロが2000人に訊いてわかった! 若手が辞める「まさか」の理由』は、そんな見立てのズレを、「存在承認」「貢献実感」「成長予感」という軸から捉え直す本です。
この記事では、この本が若手の本音を語るだけでなく、組織側の原因分析と関わり方をどう問い直しているのかを見ていきます。自分の現場に引きつけて読む価値があるか、本文を追えば判断しやすくなるはずです。
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結論|この本はどんな人に向いている?

この本をひとことで言うと
この本は、若手社員が辞める理由を表面的な不満で片づけず、原因の見立てを整理し直したうえで、現場の対話や育成の改善につなげるための実務書です。給料や人間関係といった分かりやすい理由だけで判断せず、「存在承認」「貢献実感」「成長予感」という軸で離職を見直していくので、何が起きているのかを整理したい人に向いています。単なる若手論ではなく、組織側の受け止め方や関わり方まで含めて考えたい人向けの本です。
向いている人
いちばん合うのは、若手が定着しない理由を感覚ではなく整理して捉えたい人事、採用担当、管理職です。特に、1on1をしても手応えがない、制度を整えても離職が止まらない、若手の本音が見えにくいと感じている人には相性がいいでしょう。前半で原因分析の考え方を学び、後半で承認・傾聴・共感、フィードバック、雑談、場面別の声掛けまで確認できるので、考え方と実務をつなげて学びたい読者にも向いています。
向いていない人
逆に、すぐ使えるテクニックだけを短時間で拾いたい人には、少し回り道に感じるかもしれません。前半ではまず離職理由の再定義と原因分析のズレを正すことに力が割かれており、そこを土台にして後半の実践パートが活きる構成だからです。
制度設計や報酬設計、労務の専門論点を深く知りたい人にも、やや焦点の違いはあります。この本の重心は、賃金や制度の詳細設計そのものではなく、若手が辞める理由の見立てと、承認・傾聴・共感、1on1、フィードバック、日常の声掛けといった現場実装に置かれています。
先に結論(買う価値はある?)
結論から言えば、若手定着に悩んでいて、原因の捉え方から見直したい人には十分に読む価値があります。理由は明快で、離職防止を「何を追加するか」という施策論だけでなく、「そもそも何を見誤っているのか」という認識の問題から整理してくれるからです。前半で離職の見立てを整え、中盤以降で組織のアップデートや具体的な対話のしかたに落としていく流れも、実務書として筋が通っています。
ただし、「お金でも人間関係でもない」という強い打ち出しだけで判断すると、この本の実際の射程を見誤りやすい面はあります。派手な解決策を期待するより、若手をどう変えるかではなく、組織の側がどこを見直すべきかを考える本として手に取ると、価値がわかりやすい一冊です。
要約|この本の内容を3分でつかむ

重要ポイント3つ
第一に、本書は若手社員の離職を、給料や人間関係といった表面の不満だけで理解しない立場を取っています。軸になるのは、「存在承認」「貢献実感」「成長予感」という三つの不足です。辞める理由を浅い言葉で片づけず、本人が職場の中でどう感じているかまで掘り下げて考えるところに、この本の出発点があります。
第二に、問題にしているのは若手本人よりも、企業側の見立ての甘さです。若手が辞める理由を誤認したまま福利厚生や制度だけを足しても、定着にはつながりにくいという見方が一貫しています。本書は序盤でまず原因分析のズレを整え、退職者ヒアリングやアンケートの見方にも注意を促しながら、離職理由をどう見極めるかにかなりの紙幅を使っています。
第三に、そこで終わらず、後半では組織と現場の実践へつなげていく構成が明確です。組織全体のマインドや育成のあり方を見直したうえで、承認・傾聴・共感、1on1、フィードバック、報連相、雑談、場面別の声掛けへと話が進みます。抽象的な問題提起から、現場で使う言葉や関わり方へ落としていく流れが、この本の大きな特徴です。
著者が一番伝えたいこと
著者がいちばん伝えたいのは、若手社員の離職を「最近の若者はこうだ」といった雑な世代論で処理せず、組織の側が原因の捉え方を更新する必要がある、ということだと受け取れます。若手の定着がうまくいかないのは、対策が足りないからというより、何が原因なのかを正しく見られていないからだ、という問題意識が全体を貫いています。
そのため本書は、いきなり会話術や施策集に入るのではなく、前半で離職理由の再定義と分析の誤りを丁寧に整理します。そこを土台にして初めて、後半のコミュニケーション改善や育成の工夫が意味を持つ、という組み立てです。離職防止を一部の管理職の努力に押し込めず、組織そのもののアップデートとして考えるべきだという主張が、本書の核になっています。
読むと得られること
この本を読むと、若手が辞める理由を待遇や配属だけで即断しない視点が身につきます。何となく「最近の若手は難しい」と感じていた状態から一歩進んで、どこに見立てのズレがあるのか、どの観点で原因を整理すべきかを考えやすくなります。人事や管理職にとっては、離職を個人の問題ではなく、関係性や成長実感の設計の問題として見直すきっかけになるはずです。
もうひとつ得られるのは、理解を実務につなげる足場です。若手との1on1や日常の会話、報連相の受け止め方、承認の伝え方など、現場で手をつけるべきポイントが具体的に見えてきます。派手な万能策を示す本ではありませんが、その分、自社の状況に合わせて原因を見極め、コミュニケーションや育成のあり方を整えていくための土台として使いやすい一冊です。
内容の全体像|章(目次)の流れと読みどころ

全体の設計(章の流れをざっくり)
本書の設計は、いきなり対策集を並べるタイプではありません。まず若手社員がなぜ辞めるのかという見立てを立て直し、次に企業側が陥りがちな原因分析のズレを整理し、そのうえで組織全体のアップデートと現場のコミュニケーション実践へ進んでいきます。順番としては「診断」から入り、「考え方の修正」を経て、「処方」と「実装」に落としていく流れです。
この順序があるので、後半の1on1やフィードバック、雑談や声掛けの話も、単なる会話術としてではなく、離職防止の前提を踏まえた実践として読めます。序盤の二章が土台、中盤以降が展開という構図がはっきりしているため、著者が本当に重視しているのはテクニックの数ではなく、原因の捉え方そのものだとわかります。
大見出し目次(短い目次)
- 第1章 若手社員の本音と実情
~彼らが辞める「まさか」の理由 - 第2章 的外れな離職防止策を正す
~企業が陥る負のスパイラルを止める - 第3章 時代に即したマインドとスキルを
~組織全体でアップデートする - 第4章 社内コミュニケーションの活性化
~若手が成長する環境を整える - 第5章 信頼関係を築く若手への声掛け
~雑談と個別対応で結果が変わる
各章の要点
第1章は、若手離職をめぐる思い込みを崩す章です。若手が何を安定と感じるのか、何を成長と感じるのかを捉え直しながら、離職の理由を表面的な不満だけで読まないための土台を作ります。
第2章は、本書全体の橋渡しになる章です。企業が原因分析をどう誤りやすいかを整理し、ヒアリングやアンケートをどう見るべきかまで踏み込むので、ここを読むと後半の具体策が場当たり的な対処ではなくなります。
第3章は、離職防止を個人の努力ではなく組織全体の課題として広げる章です。配属や育成の設計、上司に求められる役割、組織の意識改革などがここでつながります。
第4章は、現場での実践に最も直結しやすい章です。承認・傾聴・共感を軸に、1on1、報連相、フィードバックといった実務的な論点がまとまっています。
第5章は、日常の細部に目を向ける章です。雑談やちょっとした声掛け、困った場面での対応など、最後にかなり具体的なレベルまで降りていくため、実践のイメージを持ちやすくなっています。
忙しい人が先に読むならここ
まず優先したいのは第1章と第2章です。理由は、本書の核が「若手離職の原因をどう見立てるか」にあるからです。ここを飛ばして後半のコミュニケーション技法だけ読むと、使い方は分かっても、なぜそれが必要なのかまではつかみにくくなります。
次に読むなら第4章です。承認・傾聴・共感、1on1、フィードバックといった実務に直結する内容がまとまっており、現場での使い道が見えやすい章だからです。そのうえで、より具体的な声掛けや雑談、部下対応まで必要なら第5章へ進むと流れが自然です。
逆に、第3章は飛ばしてもよい章ではありませんが、急いで全体像をつかみたい人にとっては、第1・2章と第4章をつないだあとに読むと理解しやすい位置づけです。組織全体のアップデートという本書の本丸を支える章なので、最終的にはここも押さえておきたいところです。
感想|読んで印象に残ったことと注意点

特に印象に残ったポイント
いちばん印象に残ったのは、若手社員の離職を「最近の若者はこうだ」といった雑な世代論で片づけず、組織側の見立ての甘さとして捉え直していたことです。タイトルや打ち出しだけを見ると、若手の本音を暴くタイプの本にも見えますが、実際に読んで残るのは、企業や管理職が離職理由をどう誤認しやすいかを丁寧に問い直す視点でした。離職防止の本でありながら、最初に問われるのが施策の多さではなく、原因の捉え方そのものだったのは、かなり印象的です。
その軸として置かれているのが、「存在承認」「貢献実感」「成長予感」という三つの要因です。給料や人間関係だけでは説明しきれない、という言い方は強めですが、読んでいくとそれらを無視するための整理ではなく、表面に見えやすい不満だけで理解したつもりになる危うさを指しているのだとわかってきます。若手が感じる安定や成長の意味が、管理職や従来の組織観とずれているという見方も腑に落ちました。
構成のうまさも、印象を深くした要因だと思います。前半で離職の実態と原因分析のズレを整理し、中盤で組織全体のマインドやスキルの更新へ話を広げ、後半で承認・傾聴・共感、1on1、フィードバック、雑談、場面別の声掛けへと落としていく流れなので、抽象から具体へきれいにつながっています。とくに第1章と第2章を土台にして後半を読むと、単なる会話術ではなく、離職防止の前提を踏まえた実践として読めるところがよかったです。
すぐ試したくなったこと
すぐ試したくなったのは、若手が辞める理由を、待遇や人間関係や配属だけで早合点しない見方です。本書を読む前よりも、「なぜ辞めるのか」を一つの説明で片づけること自体が危ないと感じるようになりました。まずは自分の職場でも、離職理由を整理するときに「存在承認」「貢献実感」「成長予感」のどこにズレがあるのかを仮置きして考えてみたくなります。
もう一つは、若手との日常的なやり取りを見直すことです。1on1や報連相の受け止め方、フィードバック、雑談のような細部まで離職防止の文脈で扱っているので、制度を変える前に変えられることが意外に多いと感じました。承認・傾聴・共感を軸にした関わり方も、きれいごととしてではなく、実際のコミュニケーションを整えるための考え方として示されているので、試したいというより、まず点検したいという感覚に近かったです。
加えて、原因分析のしかた自体も見直したくなりました。事実と意見、きっかけと決め手を分けて見ることや、退職者ヒアリングだけで本音を把握した気にならないことなどは、すぐにでも意識できる視点です。派手な施策より前に、見方を変えることが先だと感じさせたのは、この本の大きな実践性だと思います。
読んで気になった点
一方で、人によって評価が分かれそうな点もあります。まず、すぐに使えるテクニックだけを期待して読むと、前半の認識修正のパートはやや回り道に感じるかもしれません。本書は最初から最後まで一貫して「まず原因を正しく見る」という立場で進むので、手早く会話術だけ拾いたい読者とは少し相性が分かれそうです。
また、「お金でも人間関係でもない」という打ち出しは印象が強いぶん、そこだけ切り取ると誤解を招きやすいとも感じました。実際には、それらが関係ないと言いたいのではなく、表面的な説明だけでは足りないという再整理として読むほうがしっくりきます。さらに、全体の重心は労務制度や報酬設計ではなく、組織運営と対話改善にあります。そのため、制度面の専門的な深掘りを期待すると、少し方向の違いを感じる人もいそうです。
実践編|この本を読んだあと、どう行動する?

今日からできること
本書は、読んで納得して終わるより、職場の見方を少し変えるところから使い始める本です。すぐ試しやすいのは、次のようなことです。
- 若手が辞める理由を、待遇・人間関係・配属だけで即断していないかを振り返る
- いま気になっている若手について、「存在承認」「貢献実感」「成長予感」のどこが弱そうかを仮置きで整理する
- 直近の1on1や面談を思い返し、相手の話を聞く前に結論を急いでいなかったか確認する
- 報連相を受けたとき、自分がまず評価や指示から入っていないか見直す
- 若手への声掛けで、「何を言うか」だけでなく「誰が言うか」が影響していないか考える
- OJT、メンター、上司の役割が曖昧になっていないかを職場内で確認する
- 退職者や不調者の話を聞くとき、事実と意見、きっかけと決め手を分けて捉えるよう意識する
- 雑談をただの空気づくりで終わらせず、関係づくりの一部として見直す
- 若手定着を福利厚生の話だけに寄せず、組織のアップデート課題として考える
試したくなる理由は、どれも大きな制度変更を必要としないからです。本書を読んで残るのは、派手な解決策より、原因の見立てと日常の関わり方を変えることの重みでした。まずは小さく着手して、どこにズレがあるのかを見える化するのが合っています。
1週間で試すならこうする
一週間で使うなら、無理に全部を回すより、「見立てを整える」「会話を変える」「役割を確認する」の三つに絞ると動きやすいです。
- Day1:若手定着について、いま自分が当然視している原因を3つ書き出す
- Day2:気になる若手を1人思い浮かべ、「存在承認」「貢献実感」「成長予感」の観点で現状を整理する
- Day3:直近の1on1や面談で、自分が聞けていたこと・聞けていなかったことを振り返る
- Day4:報連相や日常会話で、相手の話を受け止める順番を意識してみる
- Day5:OJT、メンター、上司の役割分担が曖昧になっていないか、関係者と短く確認する
- Day6:最近の離職や不調のケースを一つ取り上げ、事実と意見、きっかけと決め手を分けて見直す
- Day7:この一週間で見えたズレをまとめ、来週は何を一つ変えるか決める
この流れなら、本書の前半で重視されている「原因を正しく見ること」と、後半で示される「日々の関わり方を変えること」がつながります。読後にいちばん活かしやすいのは、知識を増やすことより、職場で見えているものの解像度を上げることです。
つまずきやすい点と対策
いちばんつまずきやすいのは、後半の具体策だけを早く使いたくなることだと思います。本書は1on1やフィードバック、雑談や声掛けまで実践的ですが、そこだけを抜き出すと、単なる会話術として消化しやすい構成でもあります。対策としては、まず「この若手は何に困っているのか」ではなく、「自分たちは何を見誤っているのか」を先に考えることです。
もう一つは、「お金でも人間関係でもない」という言い方をそのまま受け取りすぎることです。本書のポイントは、それらを無視することではなく、表面に見えやすい不満だけで理解したつもりになる危うさにあります。だから実践するときも、待遇や環境を軽く扱うのではなく、それだけで説明を終わらせない姿勢が大切です。
さらに、すぐ効く万能策を期待すると、前半の認識修正が遠回りに感じられるかもしれません。本書は即効薬というより、原因の見立てを整えたうえで、組織と現場の関わり方を更新していくための本です。最初に一つだけ行動を変え、その変化を見ながら次の一歩を決める使い方のほうが、この本の良さは活きやすいと思います。
比較|似ている本とどう違う?

『組織になじませる力 ~ オンボーディングが新卒・中途の離職を防ぐ』との違い
結論から言うと、本書は「若手がなぜ辞めるのかを見立て直す本」であり、『組織になじませる力 ~ オンボーディングが新卒・中途の離職を防ぐ』は「入社後にどう組織へなじませるかを考える本」と整理すると違いがわかりやすいです。比較の軸でいえば、テーマの広さと重心の置き方が異なります。
本書は、若手離職を給料や人間関係といった表面要因だけで捉えず、原因分析のズレそのものを正すところから始まります。そのうえで、組織全体のアップデート、承認・傾聴・共感、1on1や日常の声掛けへと話を進めていくので、離職防止をかなり広い視野で扱っています。これに対して『組織になじませる力 ~ オンボーディングが新卒・中途の離職を防ぐ』は、書名からもわかる通り、採用後の受け入れや組織適応に重心がある一冊です。
向いている人も少し違います。若手が辞める理由をまず整理し直したい人事や管理職、現場リーダーには本書のほうが合いやすいはずです。逆に、入社後の立ち上がり支援や受け入れ設計を重点的に見直したいなら、『組織になじませる力 ~ オンボーディングが新卒・中途の離職を防ぐ』のほうが目的に合いやすいと思います。
『離職防止の教科書』との違い
こちらは、同じ離職防止を扱っていても、読みどころの置き方が違います。結論を先に言えば、本書は「離職理由の誤認を正し、組織の前提を更新する本」であり、『離職防止の教科書』は「上司の現場対応により近い本」と考えると選びやすくなります。
本書の特徴は、前半で問題の捉え方を組み直してから、後半の具体策へ進むところにあります。だから、1on1やフィードバック、雑談の話も、その場しのぎの会話術ではなく、離職防止の前提を踏まえた実践として読めます。一方で『離職防止の教科書』は、上司としてどう対応するか、現場でどう動くかをより前面に置いて読む本と考えると違いがはっきりします。
向いている人で言えば、原因の見立てから見直したい人、本質的にどこを誤解しているのか整理したい人には本書が向いています。反対に、部下対応をより直接的に学びたい人、上司としての実践にすぐ結びつく視点を求める人には、『離職防止の教科書』のほうが入りやすいかもしれません。
迷ったらどれを選ぶべき?
迷ったときは、いま自分がどこで詰まっているかで選ぶのがいちばん分かりやすいです。入社後の受け入れ設計や組織適応を整えたいなら『組織になじませる力 ~ オンボーディングが新卒・中途の離職を防ぐ』、部下対応や離職心理を現場目線で補強したいなら『離職防止の教科書』が自然です。
そのうえで、本書を選ぶべきなのは、若手が辞める理由を表面的に理解したまま対策していないか不安な人です。人事、管理職、OJT担当、経営者のいずれであっても、まず原因の捉え方を正したい、組織側の見立てと関わり方を更新したいと考えているなら、本書がいちばん合いやすいはずです。逆に、即効性のあるテクニックだけを先に欲しい場合は、比較本のほうが入口として入りやすいかもしれません。
著者はどんな人?|この本を書いた背景

著者プロフィール
井上 洋市朗氏は、株式会社カイラボ代表取締役です。2008年に株式会社日本能率協会コンサルティングへ入社し、大手企業の業務改善などに従事したのち、2012年に株式会社カイラボを設立しました。2013年には、新卒入社後3年以内で退職した早期離職者100人へのインタビューをまとめた「早期離職白書2013」を発行しています。その後も、早期離職対策や定着率向上に関するコンサルティング、研修、講演を続けてきた人物です。
このテーマを書く理由
この本のテーマと著者の経歴は、かなりまっすぐにつながっています。井上氏は、早期離職者へのインタビューを継続してきただけでなく、企業側に向けた支援にも長く関わっており、辞める側と受け止める側の両方を見てきました。しかも本書は、若手離職を単なる世代論で片づけず、原因の見立てから対策までを組み立て直す内容になっています。業務改善の経験、離職者調査の蓄積、定着支援の実務が、このテーマにそのまま結びついている構成です。
この本が信頼できる理由
信頼できる理由は、話題性のある切り口だけで押していないところにあります。本書は冒頭で、若手が辞める理由を思い込みで決めつける危うさを押さえたうえで、長年の調査と現場支援を土台に話を進めています。さらに、原因の整理だけで終わらず、組織のアップデートや日常のコミュニケーション改善まで落とし込んでいるため、抽象論に流れにくいのも強みです。早期離職を当事者の問題としてだけでなく、組織の見立てと関わり方の問題として扱えるのは、この分野で継続して実務に向き合ってきた著者だからこそだといえます。
よくある質問(FAQ)

要約だけ読めば十分?
結論から言うと、読む目的しだいです。まず本の全体像をつかみたい、人に向いているかを判断したいという段階なら、要約だけでも大枠は把握できます。この本の核は、若手離職を給料や人間関係だけで説明せず、原因の見立てを立て直すところにあります。
ただ、現場で使うところまで持っていきたいなら、要約だけでは足りません。とくに本書は、前半で原因分析のズレを整理し、そのうえで後半の対話や声掛けの実務につなげる構成なので、考え方と実践をセットで読んだほうが価値が出やすい本です。
初心者向け? 中級者向け?
人事や管理職の本をあまり読まない人でも入りやすい一冊です。話の流れが、原因の見直しから組織の課題、最後に現場での対応へと進むので、何を前提に読めばいいか迷いにくい構成になっています。
一方で、すぐ使えるテクニック集だけを求めると、序盤はやや回り道に感じるかもしれません。前提知識がまったく不要というより、若手定着をきちんと考えたい初級者から、見立てを更新したい中級者まで向く本、と考えるのが近いです。
どこから読むべき?
いちばん無難なのは、第1章と第2章から読むことです。本書の中心は、若手が辞める理由の整理と、企業側が原因分析をどう誤るかにあるので、ここを飛ばすと後半の実践が単なる会話テクニックに見えやすくなります。
そのうえで、管理職やOJT担当なら後半のコミュニケーションの章へ進む読み方が合います。逆に、すでに現場で1on1や日常会話に悩んでいる人でも、最初の2章だけは先に押さえておくと、後半の具体策が離職防止の前提とつながって見えてきます。
忙しくても実践できる?
全部を一度にやろうとしなければ実践しやすい本です。日常の雑談の見直し、1on1の聞き方、承認・傾聴・共感の整理、退職者ヒアリングの設問修正など、すぐに手をつけやすい論点がいくつもあります。
ただし、本書は即効テクニック集ではありません。短時間で使える要素は多いものの、本当に役立てるには「まず原因を正しく見る」という前提を受け入れる必要があります。忙しい人ほど、最初に見立てを整えてから小さく試す読み方が向いています。
まとめ|結局、この本を読む価値はある?

この本の価値を3つで言うと
この本の価値は、次の3点に集約できます。
- 若手離職の見立てを立て直せること
給料や人間関係だけで説明しがちな離職理由を、表面ではなく構造で見直せます。とくに「存在承認」「貢献実感」「成長予感」という3つの軸で整理し直せるのは大きいです。 - 原因分析と現場対応が一本でつながっていること
前半で誤診を正し、後半で1on1、フィードバック、雑談、場面別の声掛けへ落としていく流れなので、考え方だけで終わりません。実務書としての使いやすさがあります。 - 組織側のアップデートを促すこと
若手をどう変えるかではなく、組織や管理職の関わり方をどう見直すかに重心があります。即効性だけを求める本ではありませんが、そのぶん腰の据わった見直しにつながります。
この本をおすすめできる人
おすすめできるのは、若手が定着しない理由を改めて整理したい人事・採用担当者、部下との関わり方に迷いがある管理職や現場リーダー、OJT担当やメンターのように日々の接点を持つ人です。とくに、施策を増やしているのに手応えが薄い、1on1や日常会話がうまく機能していない、と感じている人には合います。
逆に、制度設計・報酬設計を中心に深く学びたい人には、少し焦点が違うかもしれません。この本は、若手をどう変えるかより、組織の側がどこを見直すべきかを考えるための一冊です。
今すぐやること
今日やることは一つで十分です。15分だけ取り、最近辞めた若手社員、もしくは今フォローが必要だと感じている若手を1人思い浮かべて、その人の状況を「待遇・人間関係・配属」だけで説明していないかを書き出してみてください。
そのうえで、存在承認・貢献実感・成長予感の3つのどこに不足があった可能性があるかを仮置きします。ここまでできるだけでも、対策をいきなり増やす前に、原因の見方を修正する第一歩になります。
次に読むならこの本
『組織になじませる力 ~ オンボーディングが新卒・中途の離職を防ぐ』:若手定着を入社後の適応支援まで広げて考えたいときに自然につながります。
『離職防止の教科書―いま部下が辞めたらヤバいかも…と一度でも思ったら読む 人手不足対策の決定版』:上司の現場対応やタイプ別の対策に、もう少し寄せて読みたい人向けです。
『若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来』:若手離職をめぐる問題設定の違いを、時代背景ごとたどりたいときに向いています。
離職率について学べるおすすめ書籍

離職率について学べるおすすめ書籍です。
本の「内容・感想」を紹介しています。
- 離職率が改善できるおすすめの本ランキング
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- 離職率ゼロ!部下が辞めない1on1ミーティング!
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