
組織開発という言葉を、自社の対話施策やチームづくりとどう結びつければよいのか。『組織開発の探究』は、その答えを手法だけに求めず、思想・歴史・理論・企業事例から組織開発を捉え直す本です。
この書評では、本書の構成、印象に残った論点、実践に持ち帰れる視点、注意点を整理します。406頁の骨太な一冊を読む前に、どこに価値があり、どんな期待で読むと合うのかを判断しやすくするための導入として読んでください。
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結論|この本はどんな人に向いている?

この本をひとことで言うと
『組織開発の探究――理論に学び、実践に活かす』は、組織開発を流行の施策として消費せず、思想・歴史・手法・企業事例まで含めて体系的に学び直すための本です。人事・人材開発担当者、組織変革に関わるマネジャー、職場づくりやチーム開発に携わる人が、「組織開発とは何か」を自分の言葉で説明できるようになるための土台になります。
向いている人
向いているのは、組織開発を基礎から体系的に学びたい人です。職場がうまくまとまらない、対話の場を設けても効果が見えにくい、組織開発という言葉を使っているが中身を説明しきれない、と感じている人には特に合います。
人事・人材開発担当者、マネジャー、組織変革や職場づくりに関わる人にも向いています。本書は、組織開発を「組織やチームを円滑に機能させるための意図的な働きかけ」として捉えつつ、その背後にある哲学、歴史、日本での受容、企業事例までを扱います。実務の前提となる考え方を整理したい人にとって、読み応えのある内容です。
向いていない人
一方で、すぐに使える研修ネタやワークショップの型だけを探している人には、やや重く感じられるかもしれません。406頁の本格的な内容で、思想的源流や歴史的展開にも大きく紙幅が割かれているため、短時間で実務ツールだけを拾いたい読書目的とは少しずれます。
企業事例も収録されていますが、事例集として読むより、理論や歴史を踏まえたうえで現場への接続を考える本です。組織開発を「対話を増やすこと」だけで理解したい人よりも、その前提や限界まで含めて学びたい人のほうが相性はよいでしょう。
先に結論(買う価値はある?)
組織開発を本格的に学びたい人には、読む価値があります。理由は、本書が単なる実践ノウハウではなく、組織開発がどのように生まれ、なぜ日本で一度衰退し、いま再び必要とされているのかまでを扱っているからです。
特に、人事やマネジャーとして組織づくりに関わるなら、ブームに流されずに組織開発を捉える視点は大きな判断材料になります。軽い入門書ではありませんが、組織開発を安易に使わず、歴史と思想を持つ実践として理解したい人には、手元に置いてじっくり読む意味のある一冊です。
要約|この本の内容を3分でつかむ

重要ポイント3つ
1つ目の重要ポイントは、組織開発を「組織やチームを機能させるための意図的な働きかけ」として捉え直している点です。本書は、組織開発を単なる対話の場づくりやワークショップ技法として扱いません。職場やチームがバラバラになり、力を発揮できない状態に対して、どのように関係性や組織のあり方へ働きかけるのかを考える本です。
2つ目は、組織開発の思想と歴史に大きく踏み込んでいる点です。デューイ、フッサール、フロイトといった思想的源流から、集団精神療法、Tグループ、診断型組織開発、対話型組織開発、日本でのODブームと衰退までをたどります。組織開発を「いま流行っている施策」としてではなく、長い歴史を持つ実践領域として理解できる構成です。
3つ目は、理論で終わらず、企業事例と未来の論点まで接続している点です。キヤノン、オージス総研、豊田通商、ベーリンガーインゲルハイム、ヤフーの事例を扱い、最後には人材開発と組織開発の関係、日本企業が直面する人材不足や多様化の問題へ話を広げています。理論、歴史、実践を一冊でつなげて読めるのが本書の特徴です。
著者が一番伝えたいこと
本書が一番伝えようとしているのは、組織開発をもう一度、歴史と思想の土台から理解し直す必要があるということです。日本で組織開発への関心が高まること自体は大きな機会ですが、理論的背景を持たないまま言葉だけが広がると、過去と同じ混乱を繰り返しかねない。だからこそ本書は、組織開発の起源、発展、衰退、復活をたどり直し、読者が自分の言葉で語れるようになることを目指しています。
もうひとつ重要なのは、人材開発と組織開発を切り離さずに捉える視点です。人を育てることと、組織を機能させることは別々の営みではなく、これからの職場では重なり合っていく。多様性が高まるなかで、バラバラになりやすい力をどう束ねるかという問いに、本書は組織開発の意味を見出しています。
読むと得られること
読むと得られる一番大きなものは、組織開発を表面的な言葉でなく、立体的に理解する視点です。組織開発を「対話を増やすこと」「職場を活性化すること」とだけ捉えていると、なぜそれが必要なのか、どこに注意すべきなのかが見えにくくなります。本書を読むことで、組織開発の背景にある人間観、世界観、組織観まで含めて考えられるようになります。
また、自社の組織課題を見直す材料にもなります。個人の能力不足として見ていた問題が、実は関係性や組織の構造に関わる課題かもしれない。多様な働き方が広がるなかで、職場に働く「遠心力」と、それに対抗する「求心力」をどうつくるのか。本書は、そうした問いを持つための視座を与えてくれます。
内容の全体像|章(目次)の流れと読みどころ

全体の設計(章の流れをざっくり)
本書は、いきなり難しい理論に入るのではなく、まず「組織開発とは何をすることなのか」をつかませ、そのあとで思想・歴史・日本での展開・企業事例へ進んでいく構成です。読者を、入口から専門的な理解へ少しずつ連れていく流れになっています。
前半では、組織開発を「組織を機能させるための働きかけ」として理解するための足場を作ります。中盤では、デューイ、フッサール、フロイト、集団精神療法、Tグループ、診断型組織開発、対話型組織開発などをたどり、組織開発がどのような考え方の上に成り立ってきたのかを整理します。後半では、日本での受容と衰退、概念の混同への警戒、企業事例、そして人材開発との接続へ広がっていきます。
大見出し目次(短い目次)
- 第1部 初級編―組織開発を感じる
- 第2部 プロフェッショナル編(1)
- 第3部 プロフェッショナル編(2)
- 第4部 実践編―組織開発ケーススタディ
- 第5部 対談「組織開発の未来」
各章の要点
第1部:組織開発の入口をつかむパート
第1部は、初学者が組織開発の全体像をつかむための導入です。組織開発を、組織やチームを機能させるための意図的な働きかけとして説明し、専門用語に入る前に「何を目指す営みなのか」を理解できるようにしています。ここを読むと、後半の思想史や実践事例が何のためにあるのかが見えやすくなります。
第2部:思想・心理・経営学の源流をたどるパート
第2部は、本書の専門的な土台になる部分です。デューイ、フッサール、フロイトなどの思想的背景から、集団精神療法、経営学、Tグループへと進み、組織開発がどんな人間観や組織観に支えられてきたのかを整理します。実践だけを知りたい読者には少し重く感じられるかもしれませんが、本書らしさが強く出ている部分です。
第3部:発展・混乱・日本での受容を整理するパート
第3部では、組織開発がどのように生まれ、広がり、やがて概念が広がりすぎて混乱していったのかを扱います。日本でのブーム、衰退、再燃にも触れるため、現在の組織開発ブームを相対化して読めるのがポイントです。特に「似て非なるもの」の問題を扱う部分は、組織開発を安易に使わないための警告として重要です。
第4部:企業事例で現場との接点を見るパート
第4部は、理論や歴史を企業の実践に接続するパートです。キヤノン、オージス総研、豊田通商、ベーリンガーインゲルハイム、ヤフーの事例を通じて、組織開発が現場でどのように展開されるのかを考えられます。事例をそのまま真似るというより、どんな課題に対して、どんな働きかけが行われたのかを見る章です。
第5部:これからの組織開発を考えるパート
第5部では、組織開発の未来、人材開発との接続、経営への貢献、人への貢献といった論点へ広がります。人口減少、人材不足、多様な働き方が進む中で、組織の「遠心力」に対して「求心力」をどうつくるかという問いが、本書全体の締めくくりとして浮かび上がります。
忙しい人が先に読むならここ
最初に読むなら、第1部がおすすめです。ここでは専門用語に入りすぎず、組織開発を「組織を機能させる働きかけ」としてつかめるため、その後の歴史パートを読むための足場になります。
次に優先したいのは、第3部です。特に、組織開発が広がる中で何が起きたのか、日本でどう受け止められたのか、なぜ誤用や混同が問題になるのかを扱う流れは、本書の問題意識に直結しています。組織開発を単なる流行語として扱わないためには、この部分を読む意味が大きいです。
実務に引きつけたい人は、第4部の企業事例も先に確認するとよいでしょう。ただし、本書の強みは「事例だけ」ではなく、事例の前に歴史や思想を置いている点にあります。時間が許すなら、第2部で源流を押さえてから第4部に進むと、現場の取り組みをより立体的に理解しやすくなります。
感想|読んで印象に残ったことと注意点

特に印象に残ったポイント
読んで最も印象に残ったのは、本書が組織開発を単なる流行の手法として扱っていないことです。組織開発が再び注目されている状況を前向きに捉えつつも、その言葉が便利なラベルとして消費されてしまう危うさにも強く目を向けています。だからこそ、読み終えたあとには「組織開発を知った」というより、「組織開発という言葉を安易に使えなくなった」という感覚が残りました。
構成面でも、その姿勢はかなりはっきりしています。第1部では、組織やチームを機能させるための意図的な働きかけとして、初学者にも入りやすい入口を用意しています。そこから第2部・第3部に進むと、デューイ、フッサール、フロイト、集団精神療法、Tグループ、診断型組織開発、対話型組織開発、日本でのODブームと衰退へと視野が一気に広がります。
特に残ったのは、第10章で扱われる「似て非なるもの」の問題です。組織開発を広める本でありながら、組織開発らしく見えるものへの警戒も同時に置いているため、全体に誠実さがあります。ブームに乗るための本ではなく、ブームを健全に扱うための本として読めた点が、この本の信頼感につながっていました。
すぐ試したくなったこと
読んでまず試したくなったのは、自分の関わる組織課題を「個人の能力の問題」と「組織や関係性の問題」に分けて考えることです。本書では、組織開発を個人への教育や研修だけではなく、組織が機能する状態をつくる働きかけとして捉えています。その視点を持つだけで、職場の問題をすぐに個人の努力不足へ寄せず、関係性や仕組みの側から見直せるように感じました。
もう一つ試したくなったのは、職場に働いている遠心力と求心力を言葉にしてみることです。多様な働き方や価値観を受け入れることは必要ですが、それだけでは組織がバラバラになる可能性もあります。本書が示すように、多様性を受け止めながら組織として機能するには、何が人を引き寄せ、何が分散させているのかを見える化する必要があると感じました。
第4部の企業事例も、読み方としては「同じことを真似する」より、「どの課題に対して、どのような働きかけが行われたのか」を見るほうが有益です。キヤノン、オージス総研、豊田通商、ベーリンガーインゲルハイム、ヤフーの事例は、それぞれ異なる形で理論と現場をつないでいます。自社に置き換えるなら、施策名ではなく、課題の捉え方と介入の考え方を拾いたくなるパートでした。
読んで気になった点
気になった点を挙げるなら、やはり構成の広さです。406頁の本であり、思想的源流や歴史的展開にかなりの紙幅が割かれています。第2部・第3部は本書の核ですが、すぐ使える研修ネタやワークショップの型を探している読者には、目的地まで遠く感じられるかもしれません。
また、出版社側の打ち出しとしては、思想的源流、100年の歴史、手法解説、5社の企業事例が並んでいるため、実践事例集のような期待を持つ人もいると思います。ただ、実際に読んだ印象では、第4部の事例だけが中心なのではなく、そこに至るまでの歴史や理論を理解することに重心があります。企業事例を早く読みたい人ほど、本書の本当の価値は前半から中盤の遠回りにある、という期待値調整が必要です。
とはいえ、その重さは弱点というより、本書の性格そのものでもあります。組織開発を対話や職場活性化の施策としてだけ見るのではなく、どんな思想に支えられ、どんな混乱を経験してきたのかまで含めて理解する本だからです。軽い入門書ではありませんが、組織開発を自分の言葉で語りたい人には、その負荷も含めて読む意味がある一冊だと感じました。
実践編|この本を読んだあと、どう行動する?

今日からできること
この本は、読後にすぐ大きな施策を始めるというより、まず組織を見る目を整えるために使うのが向いています。最初は、自分の職場やチームを「組織開発」の言葉で見直すところから始めると、読みっぱなしになりにくくなります。
- 自社や自分のチームで、いま「うまく機能していない」と感じる場面を一つ書き出す。
- その課題が個人の能力不足なのか、関係性や組織の問題なのかを分けて考える。
- 「組織を機能させる働きかけ」として、今の施策を説明できるか見直す。
- 職場で働いている「遠心力」、つまり人や力が分散している要因を洗い出す。
- 反対に、メンバーの力を集める「求心力」になっている要素を確認する。
- 対話やワークショップを、組織開発そのものと短絡していないか点検する。
- 診断型と対話型を単純に優劣で見ず、自社の状況に合う使い分けを考える。
- 第4部の企業事例を、手法名ではなく「課題と働きかけ」の対応で読み直す。
- 人材開発と組織開発を別々の施策として扱いすぎていないか確認する。
まずは「いまの課題は個人の問題なのか、組織の問題なのか」を分けるだけでも十分です。そこが曖昧なまま施策を増やすと、組織開発のつもりが単発の研修やイベントで終わりやすくなります。
1週間で試すならこうする
Day1は、チームや職場で気になっている組織課題を一つに絞ります。大きな改革テーマではなく、「会議で発言が偏る」「部門間で情報が流れにくい」など、日常的に観察できるものから選ぶと始めやすいです。
Day2は、その課題を個人・関係性・組織構造のどこに近い問題かに分けてみます。個人のスキル不足だけで説明していないかを確認する日です。
Day3は、職場の「遠心力」を書き出します。働き方、価値観、役割、情報の持ち方など、メンバーの力が分散している要因を見える形にします。
Day4は、反対に「求心力」になり得るものを探します。共通の目的、対話の機会、信頼関係、仕事の進め方など、メンバーの力を集める手がかりを確認します。
Day5は、現在行っている施策を棚卸しします。1on1、会議、研修、職場改善活動などが、どの課題に対する働きかけなのかを言葉にしてみます。
Day6は、第4部の企業事例を一つ選び、自社にそのまま当てはめるのではなく、どのような課題に対してどんな介入が行われているのかを読む視点で整理します。
Day7は、翌週に試す小さな一手を決めます。新しい制度を作るより、会議の問いを変える、関係者同士で課題の見立てを共有するなど、観察と対話の入口をつくる程度で十分です。
つまずきやすい点と対策
まず起こりやすいのは、対話やファシリテーションを始めること自体が組織開発だと思ってしまうことです。本書が注意を促しているのは、手法名だけが広がり、背景や目的が抜け落ちることです。小さく始めるなら、施策を増やす前に「この働きかけは、どの組織課題に向けたものか」を一文で確認するところからで十分です。
次につまずきやすいのは、職場の多様性をよいものとして語るだけで終わってしまうことです。多様な働き方や価値観を受け入れることは大切ですが、本書ではそれが組織を分散させる力にもなりうると整理されています。まずは、メンバーの違いを並べるだけでなく、その違いによってどこで連携が難しくなっているのかを観察すると、求心力を考えやすくなります。
もうひとつは、企業事例をそのまま自社に移そうとすることです。第4部には複数社の実践が出てきますが、読むべきポイントは「同じ施策を真似ること」ではなく、各社が自分たちの課題に合わせて組織開発をどう扱っているかです。自社で試す場合は、事例の名前や制度ではなく、課題の捉え方、関係者の巻き込み方、現場との接続の仕方を1つだけ拾うと無理がありません。
比較|似ている本とどう違う?

まず違いを一覧で整理
『組織開発の探究』は、組織開発を思想・歴史・実践まで含めて体系的に学ぶための本です。近い本と比べると、すぐ始めるための入門書というより、組織開発という言葉を深く理解し直すための一冊といえます。
| 本 | 重心 | 向いている人 |
|---|---|---|
| 本書 | 思想・歴史・実践の体系理解 | 組織開発を自分の言葉で説明したい人 |
| 『入門 組織開発』 | 組織開発の入口 | まず概要をコンパクトに知りたい人 |
| 『いちばんやさしい「組織開発」のはじめ方』 | 現場での着手 | 職場で実践を始めたい人 |
『入門 組織開発』との違い
『組織開発の探究』は、組織開発を「何をするか」だけでなく、「どこから生まれ、どう発展し、なぜ日本で一度衰退し、いま再び必要とされているのか」までたどる本です。一方で『入門 組織開発』は、同じ中村和彦氏による組織開発の入口として扱いやすく、『組織開発の探究』よりもコンパクトな導入書として選びやすい本です。
そのため、組織開発という言葉に初めて触れる人や、まず全体像を短くつかみたい人には『入門 組織開発』が合います。すでに組織開発に関心があり、思想的背景や日本での受容、診断型・対話型の流れまで含めて学びたい人には『組織開発の探究』のほうが向いています。
『いちばんやさしい「組織開発」のはじめ方』との違い
『組織開発の探究』は、理論史や思想的源流にかなり深く入る本です。デューイ、フッサール、フロイト、Tグループ、日本でのODブームと衰退、対話型組織開発まで扱うため、実践の前に「組織開発をどう理解するか」を固める役割が大きいです。一方で『いちばんやさしい「組織開発」のはじめ方』は、職場のモヤモヤ解消や実践開始に寄せた入門書として、現場での着手に重心があります。
すぐに職場で何かを始めたい人や、難しい理論よりも実践への入り口を探している人には『いちばんやさしい「組織開発」のはじめ方』が合います。対して、組織開発を単なるワークショップや対話施策として消費せず、背景にある考え方まで理解したい人には『組織開発の探究』が適しています。
迷ったらどれを選ぶべき?
- 組織開発を深く学び直したい人:本書
- まず概要をコンパクトにつかみたい人:『入門 組織開発』
- 職場での始め方を知りたい人:『いちばんやさしい「組織開発」のはじめ方』
迷った場合、『組織開発の探究』を選ぶべきなのは、組織開発を流行の施策ではなく、歴史と思想を持つ実践として理解したい人です。読む負荷は軽くありませんが、人事・人材開発担当者やマネジャーが、組織開発を自分の言葉で語るための土台をつくるには、最も射程の広い一冊です。
著者はどんな人?|この本の信頼性を確認する

著者プロフィール
中原淳氏は、立教大学経営学部教授。専門は人材開発・組織開発などで、企業・組織における人材開発や組織開発を研究してきた人物です。本書では、人材開発と組織開発の接点を考えるうえで重要な立場を担っています。
中村和彦氏は、南山大学人文学部心理人間学科教授。専門領域は、組織開発、ラボラトリー方式の体験学習、人間関係トレーニングです。米国NTL Instituteの組織開発Certificate Programを修了し、組織開発コンサルティングやアクションリサーチにも取り組んできました。
著者の経験が本書にどう活きているか
本書の信頼性は、組織開発を単独の流行語として扱わず、人材開発、リーダーシップ開発、職場づくりの文脈まで広げて整理している点にあります。中原氏の専門である人材開発・組織開発の視点は、本書後半で示される「人材開発と組織開発の接続」というテーマに直結しています。
一方で、中村氏の専門である組織開発、体験学習、人間関係トレーニングは、本書がTグループ、感受性訓練、対話型組織開発などを扱う土台になっています。理論だけでなく、組織開発コンサルティングやアクションリサーチに関わってきた経験があるため、歴史や思想の説明と、企業事例・実践への接続が同じ本の中で扱われている点にも納得感があります。
よくある質問(FAQ)

要約だけ読めば十分?
大枠を知りたいだけなら、要約だけでも本書の位置づけはつかめます。組織開発を、単なる研修手法ではなく、思想・歴史・実践を含む領域として扱う本だと分かれば、購入前の判断材料にはなります。
ただし、実践に移したい人や、組織開発を自分の言葉で説明できるようになりたい人は、本文まで読んだほうがよいです。本書の価値は、定義だけでなく、なぜ日本で一度衰退し、いま再び必要とされているのかをたどる流れにあります。
初心者でも読める?
初心者でも読めますが、軽い入門書として読むと少し重く感じるかもしれません。第1部では、専門用語に入る前に組織開発のイメージをつかむ導入が置かれているため、最初の入口は比較的入りやすくなっています。
一方で、第2部・第3部では、哲学、心理療法、経営学、Tグループ、診断型・対話型組織開発などに話が広がります。組織開発の歴史や思想的背景まで知りたい人には読み応えがありますが、すぐ使えるワークショップの型だけを探している人には専門的に感じられる場面がありそうです。
どこから読むべき?
基本的には第1部から読むのが無理のない順番です。第1部で組織開発の輪郭をつかんでから、第2部・第3部の思想史や発展史に進むと、本書がなぜ歴史を重視しているのかが理解しやすくなります。
忙しい人は、まず第1部で全体像を押さえ、第10章の組織開発と似て非なるものの問題、第4部の企業事例、第5部の未来を語る対談を先に読むのも一つの方法です。実践者なら、第2部・第3部を重点的に読むことで、自分の実践を理論や歴史の中に位置づけやすくなります。
読む前に注意点はある?
注意したいのは、本書を「すぐ使える組織開発ノウハウ集」として期待しすぎないことです。406頁の本格的な内容で、思想的源流や歴史的展開にも大きく紙幅が割かれています。
また、組織開発を「対話を増やすこと」だけに単純化して読み進めると、本書の重要な論点を取り逃がしやすくなります。診断型組織開発、日本でのODブームと衰退、「似て非なるもの」の暴走、人材開発との関係まで含めて読むことで、この本の意図がよりはっきりします。
まとめ|結局、この本を読む価値はある?

この本の価値を3つで言うと
1つ目の価値は、組織開発を「流行の施策」ではなく、歴史と思想を持つ実践領域として捉え直せることです。組織開発を対話やワークショップだけに狭めず、デューイ、フッサール、フロイトにまでさかのぼる思想的源流や、日本でのブームと衰退まで含めて理解できるため、言葉だけが先行しがちなテーマを落ち着いて整理できます。読後には、組織開発を自分の言葉で説明する土台が残ります。
2つ目の価値は、自社の組織課題を「個人の問題」だけでなく「関係性や組織の機能」の問題として見直せることです。本書は、組織を円滑に機能させる意図的な働きかけとして組織開発を捉え、人材不足や多様な働き方によって生まれる分散の力にどう向き合うかを考えさせます。人事担当者やマネジャーにとっては、施策を始める前に問いを整えるための材料になります。
3つ目の価値は、理論と実践を切り離さずに読めることです。前半から中盤では思想史・発展史をたどり、後半ではキヤノン、オージス総研、豊田通商、ベーリンガーインゲルハイム、ヤフーの事例へ進みます。事例だけを真似るのではなく、どんな課題に対してどんな働きかけが行われたのかを考えやすくなる点が、本書ならではの読みどころです。
この本をおすすめできる人・合わない人
おすすめできるのは、組織開発を基礎から体系的に学びたい人、人事・人材開発や組織変革に関わる人、職場づくりやチーム開発に悩む管理職です。特に、組織開発という言葉は聞くものの、何を指すのか説明しにくいと感じている人には向いています。
一方で、すぐ使える研修ネタやワークショップの型だけを探している人には、少し遠回りに感じられるかもしれません。406頁の本格的な内容で、思想的源流や歴史にも大きく踏み込むため、短時間で実務ツールだけを得たい読者とは期待がずれやすい本です。
読むならどう活かす?
読むならまず、「組織を機能させる働きかけ」とは自社では何を指すのかを、自分の言葉で整理するのがよいと思います。制度や研修を増やす前に、いま起きている問題が個人の能力不足なのか、関係性やチームの機能不全なのかを切り分けるだけでも、本書の視点は活かせます。
もう一つ持ち帰りたいのは、多様化によって職場に働く「遠心力」と、それに対抗する「求心力」を見直す視点です。今日できることとしては、いまの職場でメンバーの力が分散している場面と、逆にまとまりを生んでいる場面を短く書き出すことです。そこから、組織開発を単なるイベントではなく、日々の組織づくりの視点として扱いやすくなります。
次に読むならこの本
- 『人材開発・組織開発コンサルティング』:本書で得た歴史・思想の理解を、人と組織の課題解決プロセスへ接続したいときに読む一冊。
- 『対話型組織開発――その理論的系譜と実践』:本書で触れられる対話型組織開発を、理論・実践法・事例の面からさらに深掘りしたいときの候補。
- 『いちばんやさしい「組織開発」のはじめ方』:本書が重く感じる人や、職場での着手方法をより実践寄りに確認したい人に合う一冊。
組織開発が学べるおすすめ書籍

組織開発を学びたい人におすすめの書籍です。
本の「内容・感想」を紹介しています。
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- 組織の違和感 結局、リーダーは何を変えればいいのか?
- 人材開発・組織開発コンサルティング 人と組織の「課題解決」入門
- 組織開発の探究――理論に学び、実践に活かす
