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【書評】世界標準の採用|要約と感想でわかる採用設計の読みどころ

【書評】世界標準の採用|要約と感想でわかる採用設計の読みどころ

採用がうまくいかないとき、その原因を知名度や景況感だけで片づけてしまっていないか。『世界標準の採用』は、そんな違和感から出発して、面接のテクニックだけでなく、面接官の選び方や応募者への向き合い方まで含めて、採用全体を経営の仕組みとして見直していく本です。

この記事では、この本が採用の問題をどこまで広く捉えているのか、世界標準を軸にしながら日本企業の文脈へどう落とし込んでいるのかを見ていきます。読み終えるころには、自社の採用をどこから見直すべきか、そしてこの本が自分に必要な一冊かを判断しやすくなるはずです。


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もくじ
  1. 結論|この本はどんな人に向いている?
  2. 要約|この本の内容を3分でつかむ
  3. 内容の全体像|章(目次)の流れと読みどころ
  4. 感想|読んで印象に残ったことと注意点
  5. 実践編|この本を読んだあと、どう行動する?
  6. 比較|似ている本とどう違う?
  7. 著者はどんな人?|この本を書いた背景
  8. よくある質問(FAQ)
  9. まとめ|結局、この本を読む価値はある?

結論|この本はどんな人に向いている?

結論|この本はどんな人に向いている?

この本をひとことで言うと

『世界標準の採用』は、採用を「人事の業務」ではなく「経営システム」として見直したい人のための本です。面接のコツだけを拾う本ではなく、なぜ優秀な人材が採れないのかを、採用の歴史、組織の設計、候補者体験、評価の仕組みまで含めて整理し直す役割を持っています。読むことで、自社の採用課題を場当たり的に見るのではなく、仕組みの問題として捉え直しやすくなります。


向いている人

合っているのは、採用がうまくいかない理由を「応募が少ない」「面接が弱い」で終わらせたくない人です。特に、経営者、事業責任者、CHRO、人事責任者のように、採用を会社の成長と切り離せない立場にいる人には相性がいいと思います。

また、採用の方針や体制が整っていない、面接官によって判断がぶれる、候補者体験が弱い、といった悩みを持つ実務担当者にも向いています。前半で全体像をつかみ、中盤でTA、探索、面接官育成、エンゲージ、評価へと話が進むので、課題を構造で理解したい人ほど使いやすいはずです。


向いていない人

逆に、すぐ使える面接質問集や、短時間で拾える採用テクニックだけを求めている人には少し重く感じられるかもしれません。本書は採用のコツを断片的に並べるタイプではなく、採用の歴史、構造、組織設計、実務運用まで視野に入れたつくりだからです。

転職者向けの面接対策本のような読み味を期待する人にも、方向性はやや違います。気軽な入門書というより、採用を経営課題として扱うための本なので、読む側にも「自社の採用をどう設計するか」を考える前提が求められます。


先に結論(買う価値はある?)

結論から言えば、採用を仕組みから立て直したい人には買う価値があります。理由は明確で、世界の採用変化を説明するだけで終わらず、日本企業がどこで遅れ、何をどう整えるべきかまで、システムと技術の両面から整理しているからです。しかも最後は、日本独自の勝ち筋としてポテンシャル・モデルにも踏み込んでおり、単なる海外事例の紹介で終わっていません。

一方で、軽く読める本ではありません。情報量は多く、射程も広いので、手早く小技だけを持ち帰りたい人には過剰に感じる可能性があります。それでも、採用の見方そのものを変えたいなら、この厚みには意味があります。自社の採用を「誰が、どんな思想で、どう設計するのか」まで考えたい人なら、十分に手に取る理由のある本です。




要約|この本の内容を3分でつかむ

要約|この本の内容を3分でつかむ

重要ポイント3つ

第一に、本書は採用を人事部門の実務ではなく、経営の中心課題として捉え直す本です。序盤では、世界の採用がGoogleやLinkedIn以後にどう変わったのかを押さえつつ、日本企業がなぜその変化に乗り遅れやすいのかを整理していきます。単に「人が採れない」という悩みを扱うのではなく、その背景にある組織の考え方や体制の遅れまで視野に入れているのが特徴です。

第二に、問題提起だけで終わらず、採用を支える仕組みと技術を分けて整理している点が本書の核です。中盤では、TAシステム、探索、面接官育成、エンゲージ、ホリスティックな設計といった土台づくりを扱い、そのうえでソーシング、要件定義、リファラル、カルチャー、リファレンスチェックなどの具体論へ進みます。採用活動を一連の流れとして見直せるように組み立てられているため、断片的なノウハウ集とは読み味が異なります。

第三に、世界標準を紹介するだけで終わらず、日本企業の勝ち筋まで視野に入れていることです。終盤では、ポテンシャル・モデルを軸に、日本独自の採用革新という論点が置かれています。海外の成功例をそのままなぞるのではなく、日本企業が何を武器にできるのかまで考えさせる構成になっています。


著者が一番伝えたいこと

本書全体を貫いているのは、「いい人が採れない」のは、単に人を見る力が足りないからではなく、人を採る仕組みそのものが弱いからだ、という主張です。冒頭で描かれる採用現場の失敗は、面接官の選び方、意思決定の進め方、候補者への向き合い方が噛み合わないと、採用全体が崩れていくことを具体的に示しています。

そのうえで本書は、採用を人事の仕事として閉じず、経営の中心に引き上げようとします。必要なのは面接の小手先の改善ではなく、探索から評価、候補者体験、責任設計までを含んだ全体の再設計だ、というのが著者の核となる考えです。さらに、世界標準を紹介するだけで終わらず、日本企業の文脈でどう再構成するかまで踏み込んでいるため、単なる海外事例の紹介本とは位置づけが異なります。


読むと得られること

この本を読むことで得られるのは、採用の問題をより大きな枠で見直すための視点です。応募数が足りない、面接が弱い、辞退が出るといった個別の悩みを、それぞれ別のトラブルとして扱うのではなく、採用システム全体の設計不備として整理しやすくなります。結果として、自社の採用プロセスを探索、面接、候補者体験、判断基準、責任分担といった単位で棚卸しする発想につながります。

実務面では、面接官の選定と育成、候補者との接点設計、リファラルやスカウトの位置づけ、属人化した判断基準の言語化など、見直すべき論点が具体的に見えてきます。採用を「人事の作業」ではなく「会社がどんな人をどう迎えるか」という経営のテーマとして考えたい人にとっては、課題の見え方そのものが変わる本です。


内容の全体像|章(目次)の流れと読みどころ

内容の全体像|章(目次)の流れと読みどころ

全体の設計(章の流れをざっくり)

本書の組み立ては、いきなりノウハウを並べるのではなく、まず「なぜ採用がうまくいかないのか」を読者に腹落ちさせてから、仕組みと技術へ進む流れになっています。冒頭では、採用の失敗が単発のミスではなく、面接官の設計、意思決定、候補者への向き合い方といった複数の問題の連鎖で起きることを具体的に見せます。そこから、世界で起きた採用の変化と日本企業の遅れを整理し、そのうえでTA、探索、面接官育成、候補者体験、評価といった実務へ降りていくので、「なぜ必要か」と「何を変えるか」が分断されません。

終盤に日本独自の採用革新が置かれているのも、この本の設計上のポイントです。世界の変化を理解して終わるのではなく、日本企業はそこから何を自前で組み立てるべきかまで視野に入っているため、単なる海外事例の紹介にはとどまりません。全体としては、問題提起から構造理解、実装、そして独自提案へと、読者の見方を段階的に動かしていく作りです。


大見出し目次(短い目次)

  • 第1章 採用革命の物語
  • 第2章 文明開化はまだか
  • 第3章 世界標準のシステム
  • 第4章 世界標準の技術
  • 第5章 わたしたちの採用革命
  • 終章 日本企業の今とこれから


各章の要点

第1章と第2章は、本書の土台になるパートです。ここでは世界の採用革命の背景と本質、日本企業がそれにどう乗り遅れたのかが整理されます。後ろの章で出てくるTAや面接官設計の話を理解するための前提づくりであり、単なる時代背景の説明ではありません。

第3章は、採用を動かす前に何を整えるべきかを扱う橋渡しの章です。探索、面接官育成、エンゲージ、責任設計まで含めて、採用を一つのシステムとして設計する考え方がまとめられています。ここがあることで、第4章の実務論が小技の寄せ集めにならず、全体の中で位置づけられます。

第4章は、具体的な運用に踏み込む実践パートです。要件定義、スカウト、リファラル、カルチャーの見方、リファレンスチェックなど、現場で詰まりやすい論点が並びます。そして第5章で、日本独自の採用革新としてポテンシャル評価の話に進み、最後は制度や市場環境まで視野を広げて締めくくる流れです。


忙しい人が先に読むならここ

ガイドさん
ガイドさん
全部を通して読むのが理想ですが、時間が限られるなら中盤から入っても全体像はつかめます。

まず優先したいのは、第3章と第4章です。本書の価値がもっとも濃く出ているのはこの中盤で、採用をどう設計し、どう運用するかがまとまっているからです。手早く実務に引きつけたい人は、ここから読むのがいちばん効率的です。

そのうえで、第1章と第2章に戻る読み方が合っています。中盤で具体策をつかんでから前半に戻ると、なぜその仕組みが必要なのか、なぜ日本企業が同じ失敗を繰り返しやすいのかがより納得しやすくなります。終盤の第5章は、世界標準を知ったうえで日本企業の独自解まで考えたい人に向いています。冒頭の導入は短くても強いので、最初に読んでおくと、本書全体の問題意識をつかみやすいはずです。


感想|読んで印象に残ったことと注意点

感想|読んで印象に残ったことと注意点

特に印象に残ったポイント

いちばん印象に残ったのは、この本が採用を人事部門の仕事として狭く扱わず、企業の競争力を左右する経営課題として描いていたことです。採用の本というと、面接の受け答えや見抜き方など、どうしても個別の技術に目が向きがちですが、本書はそこにとどまりません。なぜ人が採れないのか、その背景にある組織の考え方や体制の弱さまで掘り下げていくので、読んでいて視点を引き上げられる感じがありました。

とくに冒頭の採用現場のエピソードは強く残りました。あれは単なる失敗談ではなく、面接官の選び方、意思決定の進め方、候補者への向き合い方といった複数の問題がどう連鎖していくのかを、かなり生々しく見せてくれます。そのうえで、世界の採用革命、日本企業の遅れ、TAシステム、面接官育成、エンゲージ、ソーシング、ジャッジへと話がつながっていくので、大きな構造の話と現場の技術の話が途中で分断されません。読後に「採用の失敗は現場の工夫不足だけでは説明できない」と強く意識させられたのは、この流れがうまくできていたからだと思います。


すぐ試したくなったこと

読み終えてすぐに試したくなったのは、自社の採用を工程ごとに分けて見直すことです。応募が少ない、面接が弱い、辞退が多いといった悩みを個別の問題として眺めるのではなく、探索、面接、候補者体験、判断基準、責任の置き方という単位で棚卸ししてみたくなりました。そう思えたのは、本書が危機感を示すだけでなく、どこを整えればいいのかまで視界を開いてくれるからです。

特に気になったのは、面接官の選定と育成、そして採用判断の基準を言葉にする部分です。採用がうまくいかない理由を、担当者の力量や属人的な勘に寄せすぎていたのではないか、と立ち止まらされました。候補者との接点の作り方や辞退を防ぐ設計まで含めて考える必要があると感じたのは、この本が「採る前」と「見極める場面」を切り離さずに扱っているからだと思います。


読んで気になった点

気になった点もあります。まず、扱っている範囲が広く情報量も多いので、気軽に読める本ではありません。採用の背景、構造、システム、技術、日本独自の提案まで射程に入っているぶん、短時間でポイントだけ拾いたい人にはやや重たいはずです。特に、面接のコツだけを求めて読むと、前半の問題提起や歴史の整理は遠回りに感じるかもしれません。

もう一つは、「世界標準」という言葉の強さです。読み始めた段階では、海外のやり方をそのまま取り入れる話なのかと少し構えました。ただ、読み進めると終盤では日本独自の採用革新に話が及ぶので、単純な模倣ではないと分かってきます。そうした意味で、最初の印象だけで判断すると少しもったいない本ですが、読む側にもある程度の腰の据わり方は求められると感じました。




実践編|この本を読んだあと、どう行動する?

実践編|この本を読んだあと、どう行動する?

今日からできること

ガイドさん
ガイドさん
最初から全部変えようとしなくて大丈夫です。まずは、採用を「人事の作業」ではなく「会社の課題」として見直すところからで十分です。

この本は、読んで終わるより、自社の採用をどう見直すかに落とし込んでこそ意味が出る本です。すぐ始めるなら、まずは大きな改革よりも、採用を分解して見える化することから入るのが現実的だと思います。今日からできることとしては、次のような動きが取りやすいです。

  • まず、自社の採用課題を「応募が少ない」「辞退が多い」だけで終わらせず、どの工程で詰まっているかを書き出す
  • 採用を「探索」「面接」「候補者体験」「判断基準」「責任の置き方」に分けて、どこが弱いかを整理する
  • 面接官が誰になっているかを確認し、役職や経験に見合った設計になっているか見直す
  • 面接で何を見ているのかを一度言語化し、担当者ごとのばらつきがないか点検する
  • 候補者との接点を振り返り、連絡の速さや面接時の印象が雑になっていないか確認する
  • 辞退が多い場合は、条件だけでなく、選考中の体験設計に原因がないか考える
  • リファラルやスカウトを場当たり的に使っていないか見直し、採用戦略の中での役割をはっきりさせる
  • 現場任せになっている判断を減らすために、採用で譲れない基準を一枚にまとめる


1週間で試すならこうする

1週間で動くなら、毎日ひとつずつ採用の見え方を変えていくのがやりやすいです。いきなり制度設計に入るより、現状把握から始めたほうが、この本の内容も実務に落とし込みやすくなります。

  • Day1:今の採用の悩みを3つだけ書き出す
  • Day2:その悩みを「探索」「面接」「候補者体験」「判断」のどこに属するか仕分けする
  • Day3:面接官の顔ぶれを確認し、誰がどの段階で出るのが適切か見直す
  • Day4:候補者への案内、面接日程調整、面接当日の流れを確認し、離脱を招きそうな箇所を洗い出す
  • Day5:採用で見ている基準を言葉にし、担当者のあいだでズレがないか確かめる
  • Day6:リファラル、スカウト、エージェント活用の位置づけを整理し、足りない打ち手を考える
  • Day7:1週間で見えた問題を「今すぐ直すこと」と「設計から見直すこと」に分けて、次の打ち手を決める

この流れのよさは、採用を感覚ではなく工程で見られるようになることです。本書を読んで感じるのは、採用の失敗は一つの場面のミスではなく、複数の設計不備が積み重なって起きるということでした。だからこそ、行動も一気に変えるより、構造をほどく順番で進めたほうがうまくいきます。


つまずきやすい点と対策

最初につまずきやすいのは、つい面接テクニックの改善だけに話を寄せてしまうことです。本書はそこを広げて、採用体制、候補者体験、意思決定まで含めて見直す必要があると示しています。対策としては、「面接の質問を変える」前に、「誰が、どんな役割で、どんな順番で会うか」を先に整えることです。

もう一つの難所は、論点が広くて重いことです。採用を経営課題として扱う本なので、気軽なハウツー本のつもりで読むと手が止まりやすいかもしれません。だからこそ、全部を一度に実装しようとせず、責任の所在、面接官の質、候補者体験の3点に絞って着手するのが現実的です。

本書は、読んで満足するより、採用の流れを分解して自社に当てることで力を発揮します。採用を人事任せの仕事として終わらせず、組織の未来をつくる仕事として扱う。その視点を実務に落とすことが、この本のいちばん自然な使い方だと思います。


比較|似ている本とどう違う?

比較|似ている本とどう違う?

『人事と採用のセオリー 成長企業に共通する組織運営の原理と原則』との違い

結論からいうと、採用を軸に経営の再設計まで踏み込みたいなら『世界標準の採用』、採用を含む人事全体の原理原則から土台を押さえたいなら人事と採用のセオリー 成長企業に共通する組織運営の原理と原則』が向いています。

違いの軸は、まずテーマの広さです。前者は採用そのものを中心に据え、世界の採用変化、TA、面接官育成、候補者体験、評価、日本独自の採用革新までを一冊でつないでいます。対して後者は、採用を含む人事・組織運営の原理原則を補強する本として位置づけられており、採用だけに深く潜るというより、より広い組織運営の視点から考えたい読者に合います。

読み手の違いもはっきりしています。採用の仕組みそのものを立て直したい経営者、人事責任者、採用改革の担当者には『世界標準の採用』が噛み合いやすいです。いっぽうで、採用を単独で見るのではなく、組織づくり全体の中で位置づけたい人には『人事と採用のセオリー 成長企業に共通する組織運営の原理と原則』のほうが入りやすいはずです。


『採用に強い会社は何をしているか 52の事例から読み解く採用の原理原則』との違い

結論を先に言うと、構造から採用を捉え直したいなら『世界標準の採用』、事例ベースで実務の手触りをつかみたいなら採用に強い会社は何をしているか ~52の事例から読み解く採用の原理原則』が向いています。

ここでの比較軸は、実用性の出し方と読みやすさです。『世界標準の採用』は、世界の採用革命から入り、日本企業の遅れを整理し、そのうえでシステム設計や技術論へ進むため、背景理解と全体設計に強みがあります。そのぶん内容は濃く、軽い読み物というより、腰を据えて読む実務書です。対して『採用に強い会社は何をしているか ~52の事例から読み解く採用の原理原則』は、事例を通じて惹きつけ、見立て、辞退防止を学ぶ本として整理されているので、現場の工夫や具体像をつかみやすい比較相手です。

向いている人も少し違います。採用がなぜうまくいかないのかを組織の設計までさかのぼって考えたい人には『世界標準の採用』が合います。逆に、採用実務を具体例から理解したい人、事例を通じて運用のヒントを得たい人には『採用に強い会社は何をしているか ~52の事例から読み解く採用の原理原則』のほうが入りやすいでしょう。


迷ったらどれを選ぶべき?

迷ったときは、「何を知りたいのか」で選ぶのがいちばんわかりやすいです。採用を経営課題として捉え直し、自社の採用体制そのものを見直したいなら『世界標準の採用』。人事・組織運営の原理原則を国内文脈で整理したいなら『人事と採用のセオリー 成長企業に共通する組織運営の原理と原則』。事例を通して実務の感覚をつかみたいなら『採用に強い会社は何をしているか 52の事例から読み解く採用の原理原則』、という選び分けになります。

読みやすさだけで選ぶなら、『世界標準の採用』はやや重めです。実際、採用の小さなコツだけを求める人には射程が広く感じられるはずです。ただ、そのぶん採用の見方そのものを変える力は強い。採用を「うまく面接する話」から「組織の未来をつくる設計の話」へ引き上げたいなら、最初に選ぶ一冊としての意味ははっきりしています。


著者はどんな人?|この本を書いた背景

著者はどんな人?|この本を書いた背景

著者プロフィール

小野壮彦は、グロービス・キャピタル・パートナーズのディレクターです。新卒でアクセンチュアに入社後、1999年にプロトレードを起業し、M&Aで楽天へ事業譲渡。その後、ヴィッセル神戸への経営参加やベンチャー企業役員を経て、2008年にエゴンゼンダーへ入社しました。エゴンゼンダーでは経営人材へのアセスメント、コーチング、ヘッドハンティングを担当し、2016年にパートナー就任。2017年からはZOZOに参画し、2019年末に現在の立場へ移っています。既刊には『経営×人材の超プロが教える 人を選ぶ技術』があります。


このテーマを書く理由

この本が採用の「やり方」だけでなく、採用の「仕組み」そのものに踏み込むのは、著者が人を見極める側と、組織をつくる側の両方を経験してきたからだと受け取れます。前著では人を見る技術を扱っていましたが、その後に寄せられた相談の中で、見極め以前に採用方針や体制が整っていない企業が多いという問題意識が強まっていったようです。

本書はその延長線上にあります。なぜ人材が採れないのかを個々の面接技法に還元せず、採用システム、面接設計、候補者体験、意思決定のあり方まで含めて捉え直そうとしているのは、著者自身が実務の現場でそのズレを見てきたからだと考えると、内容の方向性がよくわかります。


この本が信頼できる理由

この本の信頼性は、著者が採用を一つの立場からだけ見ていない点にあります。ヘッドハンティングや経営陣評価の経験があり、同時に事業会社でのマネジメントや新規事業にも関わってきたため、採る側の事情と、組織を動かす側の事情の両方を踏まえて話が組み立てられています。

もう一つは、本書の問題設定が実務の悩みに直結していることです。採用難が深まる中で、面接の巧拙だけではなく、責任の置き方、面接官設計、候補者体験、意思決定まで含めて捉え直す必要があるという視点は、一貫しています。理屈だけを語る本ではなく、現場で使える形に落とし込もうとする姿勢が明確なので、このテーマを任せられる一冊として読めます。


よくある質問(FAQ)

よくある質問(FAQ)

要約だけ読めば十分?

結論からいうと、目的が「この本が自分に合うかを判断したい」だけなら、要約だけでもある程度は足ります。採用を人事実務ではなく経営システムとして捉え直す本であり、どんな論点を扱うのかは要約でもつかめます。

ただし、「自社の採用をどこから見直すべきかまで考えたい」「採用の失敗がなぜ起きるのかを構造で理解したい」という目的なら、要約だけでは足りません。本書は、問題提起から背景理解、仕組み、技術、日本独自の提案へとつながる構成に価値があるため、流れごと読むことで納得感がかなり変わってきます。


初心者向け? 中級者向け?

どちらかといえば、採用に課題意識を持っている人向けです。前提知識がまったくなくても読めない本ではありませんが、軽い入門書や面接のコツ集を期待すると、扱う範囲の広さと情報量の多さに少し重さを感じやすいと思います。

一方で、人事担当者、採用責任者、経営者、事業責任者のように、採用を仕組みとして見直したい人にはかなり向いています。抽象論だけで終わらず、TA、面接官育成、候補者体験、評価、責任設計まで話が下りてくるので、実務と結びつけて読みやすいタイプの中級書と考えるとわかりやすいです。


どこから読むべき?

結論として、通読できるなら冒頭から読むのがいちばん納得感があります。最初の失敗事例が、面接官の選び方、意思決定、候補者体験の問題を一気に見せてくれるため、その後に続く採用革命やシステム論が腹落ちしやすくなるからです。

忙しい人は、第3章と第4章から入る読み方でも問題ありません。TAシステム、面接官育成、エンゲージ、ソーシング、ジャッジといった実務に直結する論点を先に押さえ、その後で前半に戻ると、「なぜそれが必要なのか」という背景までつながります。新しい視点が欲しい人は、終盤のポテンシャル・モデルから入るのも一つの読み方です。


忙しくても実践できる?

結論として、忙しくても実践はできます。ただし、一気に全部取り入れる本ではなく、採用を一続きのシステムとして見直す入口に使うのが現実的です。たとえば、採用の最終責任者は誰か、面接官の選抜と育成が設計されているか、候補者体験を点検できているか、といった問いから始めるだけでも使い方として成立します。

反対に、短時間で効く小手先のテクニックだけを求める人には向きません。内容は濃く、扱う範囲も広いので、読む負荷はあります。それでも、採用を組織の未来をつくる仕事として見直したい人なら、忙しい中でも読む意味は十分にある本です。


まとめ|結局、この本を読む価値はある?

まとめ|結局、この本を読む価値はある?

この本の価値を3つで言うと

第一に、採用を面接や人事運用の話で終わらせず、企業の競争力を左右する経営課題として捉え直せることです。読後に残るのは知識の増加というより、採用の設計そのものを見直したいという緊張感でした。

第二に、構造の話と実務の話が分断されていないことです。世界の採用革命と日本企業の遅れを押さえたうえで、TA、面接官育成、エンゲージ、ソーシング、ジャッジへ進むので、「なぜそれが必要か」と「どう整えるか」がつながって見えてきます。

第三に、危機感だけで終わらないことです。内容は重めですが、その重さは小手先の採用本では届かない領域まで踏み込んでいる証拠でもあります。軽い入門書ではありませんが、本気で採用を変えたい組織には読む価値があります。


この本をおすすめできる人

おすすめできるのは、採用に課題を感じている人事担当者だけでなく、経営者、事業責任者、採用設計を担うマネジャーです。とくに、「よい人が採れないのは現場の工夫不足だけではないのでは」と感じている人には合います。

逆に、面接の受け答えや見抜き方だけを手早く知りたい人には、やや射程が広く感じるはずです。この本は、会社がどんな人をどんな姿勢で迎え入れるかを、仕組みのレベルで考えたい人向けの一冊です。


今すぐやること

今日やることは一つで十分です。今週のどこか30分だけ確保して、自社の採用プロセスを紙かメモに「探索」「面接」「候補者体験」「判断基準」の4つに分けて書き出し、いちばん詰まっている箇所を1つだけ特定してください。

本書の価値は、読んで知識を増やすことより、採用の詰まりを構造で見つけ直せることにあります。まず1か所でも言語化できれば、採用を経営課題として扱う最初の一歩になります。


次に読むならこの本

人事と採用のセオリー 成長企業に共通する組織運営の原理と原則』 ― 採用単体ではなく、人事や組織運営の原理原則まで視野を広げたい人に向いています。

採用に強い会社は何をしているか 52の事例から読み解く採用の原理原則』 ― 事例ベースで採用実務を具体化しながら理解を深めたい人の補完先です。

経営×人材の超プロが教える 人を選ぶ技術』 ― 同じ著者の前著として、採用後段の「見極め」に焦点を当てて読みたい人に合います。




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カネマツ

年間約80冊の実用書・ビジネス書を読み、自己啓発、仕事術、採用・面接、人材育成、マーケティング分野を中心にレビューしています。採用や人材育成の実務経験をもとに、要約だけでなく、向いている人、実用性、類書との違いまで整理して紹介しています。記事は実読を前提に、必要に応じて出版社公式情報や改訂版情報も確認しながら執筆しています。

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