
就職や転職を考えるとき、何が評価されるのかを突き詰めていくと、学歴や地頭、面接のうまさだけで人の価値は決まるのか、と立ち止まりたくなることがあります。『採用基準 地頭より論理的思考力より大切なもの』は、その違和感に対して、採用を入口にしながら、これから本当に必要とされる人材像を問い直す本です。
この記事では、本書が単なる採用ノウハウ本ではなく、人材の見方や働き方の捉え方をどう組み替えていくのかを見ていきます。読むことで、この本が自分に必要なのは面接対策としてなのか、それとも長く価値を出す力を考えるためなのかが判断しやすくなるはずです。
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結論|この本はどんな人に向いている?

この本をひとことで言うと
『採用基準 地頭より論理的思考力より大切なもの』は、選考テクニックを学ぶ本というより、長く価値を出せる人材をどう見るか、その基準をリーダーシップの観点から捉え直すための本です。採用の話を入口にしながら、実際には「優秀さとは何か」「これから伸ばすべき力は何か」を整理する内容になっており、就活・転職・若手の成長・人材育成まで視野が広いのが特徴です。
向いている人
まず合うのは、就職や転職を前にして、企業が本当に見ているものを知りたい人です。学歴や地頭、論理的思考力だけでは説明しきれない評価軸を知りたい人には、かなり判断材料になります。
次に向いているのは、働き始めてから「何を伸ばせば価値を出せるのか」が曖昧な若手ビジネスパーソンです。本書は、リーダーシップを一部の管理職だけの話にせず、仕事をする全員に関わる力として捉えています。そのため、役職の有無にかかわらず、自分の仕事の持ち方を見直したい人にも読みやすいはずです。
さらに、採用や育成に関わる立場で、人を見る基準を表面的な能力からもう一段深く考えたい人にも向いています。スクリーニング基準と採用基準を分けて考える視点は、実務上の整理にもつながります。
向いていない人
一方で、ケース面接の解き方や面接での受け答えなど、すぐ使える選考ノウハウだけを求めている人には、やや遠回りに感じられると思います。タイトルから受ける印象よりも、内容の重心はリーダーシップ論と人材観の整理にあります。
また、現在のマッキンゼーの制度や最新の採用フローを詳しく知りたい人にも、目的とのずれが出やすい本です。読むべき本ではありますが、即効性のある攻略本として手に取ると期待と噛み合いにくいでしょう。
先に結論(買う価値はある?)
結論から言うと、「どうすれば受かるか」ではなく、「どんな人が長く価値を出せるのか」を知りたい人には買う価値があります。理由は明快で、採用の話を入口にしながら、優秀さを地頭や論理的思考力だけで測らない視点を提示し、その先にあるリーダーシップの意味まで整理してくれるからです。
特に、就活本だと思って読み始めても、最終的には働き方やキャリアの考え方まで見直すことになる、という点がこの本の強みです。採用対策の即効性よりも、長く通用する基準を手に入れたいなら、手に取る意味は十分あります。
要約|この本の内容を3分でつかむ

重要ポイント3つ
本書の第一のポイントは、「採用基準」にまつわる思い込みを崩していくことです。マッキンゼーのような外資系コンサルティングファームでは、学歴や地頭のよさ、ケース面接の出来が決め手だと思われがちですが、本書はその理解を出発点から問い直します。序盤では、そうした通俗的な見方がなぜ広まったのかを整理しながら、選考で見えやすい能力と、本当に採りたい人材の条件は同じではないと示していきます。
第二のポイントは、採用したい人材の核が「将来のリーダー」であると明確に置かれていることです。ここでいうリーダーシップは、役職や肩書きの話ではありません。本書は、目標を掲げる、先頭を走る、決める、伝えるといった具体的な行動に分けて、リーダーに求められる役割を整理しています。そのため、管理職向けの抽象論ではなく、仕事をする全員に関わる話として読める構成になっています。
第三のポイントは、採用の話で終わらないことです。後半では、日本企業や教育の中で「優秀な人」がどう誤って理解されてきたのか、「グローバル人材」という言葉がなぜ曖昧なのかといった論点に広がっていきます。終章では、それらが個人の働き方やキャリアの持ち方にどうつながるかまで射程を伸ばしており、本書全体が人材論とキャリア論をつなぐつくりになっています。
著者が一番伝えたいこと
本書を通して著者が伝えようとしているのは、これからの時代に必要なのは、学歴や地頭のよさだけで測れる人材ではなく、自分で目標を掲げ、価値を出し、周囲を動かしながら前に進める人だということです。マッキンゼーの採用現場で人を見てきた立場から、その基準は特別な企業だけのものではなく、日本社会が本来必要としている人材像とも重なる、という方向に話を広げています。
そのため本書は、採用のテクニックを教える本として読むより、優秀さの定義そのものを組み替える本として読むほうがしっくりきます。冒頭では、採用現場で求める人材像が正確に理解されていないという問題意識が置かれ、そこからリーダーシップの意味、学び方、そして人生やキャリアへの影響へと話がつながっていきます。この流れがあるからこそ、単なる採用ノウハウ本とは違う読後感が残ります。
読むと得られること
読後に得られるのは、「どうすれば評価されるか」という表面的な発想から一歩離れて、「どんな力を育てれば長く価値を出せるのか」を考えられるようになることです。特に、優秀さを学歴や面接の出来だけで見ていないか、自分の中の基準を見直すきっかけになります。採用基準とスクリーニング基準を分けて考える視点や、リーダーシップを役職ではなく行動として捉え直す考え方は、自己分析にも仕事の進め方にもつながりやすい部分です。
また、若手のうちから何を伸ばすべきか迷っている人にとっては、自分の仕事を自分で主導するとはどういうことかを考える入口にもなります。採用や育成に関わる人なら、人をどう見るかという視点の整理にも役立つはずです。逆に、すぐ使える面接対策だけを求める人にはやや遠回りに感じられるかもしれませんが、長く通用する人材像を理解したい人にとっては、読む意味のはっきりした一冊です。
内容の全体像|章(目次)の流れと読みどころ

全体の設計(章の流れをざっくり)
本書は、いきなり「理想の人材像」を語るのではなく、まず著者自身がなぜこのテーマを語る立場にあるのかを示し、そのうえで世の中に広がっている誤解を一つずつ解いていく構成です。冒頭では、採用と人材育成の現場に長く関わってきた視点から、「頭のよさ」中心で人を見てしまう発想に違和感があることが提示されます。
そのあとで本書は、採用したい人材の核心を「将来のリーダー」と定め、リーダーシップとは何か、どんな行動として現れるのかを中盤で具体化していきます。さらに後半では、学び方や育て方、日本社会における人材観のずれに話を広げ、最後は個人のキャリアや人生の持ち方にまで接続します。序盤で誤解を外し、中盤で定義を固め、終盤で実践と意味づけに進むため、読み手が迷いにくい設計です。
大見出し目次(短い目次)
- 序章 マッキンゼーの採用マネジャーとして
- 第1章 誤解される採用基準
- 第2章 採用したいのは将来のリーダー
- 第3章 さまざまな概念と混同されるリーダーシップ
- 第4章 リーダーがなすべき四つのタスク
- 第5章 マッキンゼー流リーダーシップの学び方
- 第6章 リーダー不足に関する認識不足
- 第7章 すべての人に求められるリーダーシップ
- 終章 リーダーシップで人生のコントロールを握る
各章の要点
序章は、著者のキャリアの流れと採用現場での経験を示す章です。なぜこの本が単なる就活本ではなく、人材観そのものを問い直す本になっているのかが、ここで土台づけられます。
第1章は、採用基準をめぐる誤解を整理する章です。ケース面接、地頭、分析力、優等生的な評価など、よくある理解を順番にほぐすことで、後の議論を受け取るための前提を整えています。
第2章は、本書の中心に入る橋渡しの章です。採用したいのは将来のリーダーだという軸がここで明確になり、スクリーニングと本来の採用基準の違いも整理されます。
第3章は、リーダーシップの定義をぶらさないための章です。成果主義や役職、調整役と混同しがちな概念を切り分けることで、第4章の具体論につなげています。
第4章は、リーダーが果たすべき役割を具体的な行動に落とし込む章です。本書の中でも、抽象論で終わらず実務感が出る部分で、読みどころの一つです。
第5章は、その力をどう身につけるかを扱います。価値を出す、立場を取る、自分の仕事の責任を引き受けるといった実践的な方向に話が進み、読者が自分に引き寄せやすくなります。
第6章と第7章は、議論を個人から社会へ、そして再び個人へ返す流れです。日本の組織や教育が抱える人材観の問題を押さえつつ、結局は誰にでもリーダーシップが求められるという結論へ向かいます。
終章は、ここまでの話をキャリアや人生の選び方に接続する章です。採用論から始まった本が、最終的には自分の生き方をどうコントロールするかという問いに着地するため、全体の輪郭がここで完成します。
忙しい人が先に読むならここ
時間が限られているなら、最初に読むべきなのは第2章です。ここで本書の中心にある「どんな人材を求めているのか」という軸がはっきりします。採用基準とスクリーニング基準の違いも含めて、タイトルから期待される問いへの答えが最も端的に出てくる章です。
次に読むなら第4章と第5章が適しています。第4章は、リーダーシップという言葉を役割に分解してくれるので、抽象論で終わらず理解しやすいです。第5章まで進むと、それをどう身につけるかという実践寄りの話につながるため、本書が単なる理念の本ではないことが分かります。
そのうえで余裕があれば、第1章と終章を読むと全体がつながります。第1章は誤解をほどく章なので、本書の立ち位置を取り違えにくくなりますし、終章まで読むと、採用の話がなぜキャリアや人生のコントロールの話に着地するのかが見えてきます。全体を通して読むのが理想ですが、まずは第2章、第4章、第5章が読みどころの中心です。
感想|読んで印象に残ったことと注意点

特に印象に残ったポイント
いちばん印象に残ったのは、この本が「採用基準」という題名から受ける印象より、ずっと広いテーマを扱っていたことです。読み始める前は、マッキンゼーがどんな人を採るのかを説明する本だと思っていましたが、実際にはそれ以上に、「これからの時代に必要とされる人材とは何か」を問いかける内容として受け止めました。採用の話から始まりながら、最後には働き方や生き方の見方にまでつながっていくところに、この本の奥行きがあります。
中でも強く残ったのは、地頭やケース面接の出来が、そのまま採用の決め手ではないという視点でした。優秀さを学歴や論理的思考力の高さで測りたくなる場面は多いと思いますが、本書はそこで立ち止まり、その先にある資質としてリーダーシップを置いています。この考え方が腑に落ちたのは、著者が長く採用と人材育成に関わってきた立場から語っているためで、きれいごとではなく、実際に人を見てきた人の整理として読めたからです。
すぐ試したくなったこと
読んですぐにやってみたくなったのは、自分が「優秀な人」をどんな基準で見ているのかを見直すことでした。これまでは、どうしても分かりやすい能力や結果で判断しがちだったのですが、本書を読んでからは、それだけでは不十分だと考えるようになりました。何ができるかだけでなく、その人が自分で目標を持ち、価値を出し、周囲に働きかけられるかまで見ないと、本質はつかめないのだと思わされます。
もう一つは、リーダーシップを役職や肩書きのある人だけのものとして捉えないことです。本書では、仕事に関わるすべての人に必要な力として描かれていて、その見方はかなり実践的でした。だからこそ、自分の仕事を自分で主導するとはどういうことか、日々の働き方の中で考え直してみたくなりました。大げさな行動計画ではなく、まずは「自分は受け身になっていないか」を意識するところから始めたくなる本です。
読んで気になった点
一方で、読む人を少し選ぶ本でもあると思いました。題名からは、マッキンゼーの採用の仕組みや面接の攻略法が詳しく分かる本を想像しやすいのですが、実際の重心はそこにはありません。採用のテクニックを学びたい人にとっては、最初は少し方向が違うと感じるかもしれません。
もう一つ気になったのは、リーダーシップをすべての人に必要な力として捉える前提です。この見方には納得できる部分が大きい一方で、人によっては少し厳しく感じるはずです。とはいえ、それも含めて、この本は「どうすれば評価されるか」だけを教えるのではなく、「どのような人が長く価値を出していけるのか」を考えさせる本なのだと思います。読後に残るのは、答えをもらった感覚より、自分の見方を問い直された感覚に近いです。
実践編|この本を読んだあと、どう行動する?

今日からできること
本書は、読んで納得して終わるより、自分の仕事や見方に引きつけて使うと価値が出やすい本です。今日から試しやすいのは、次のような動きです。
- 自分が「優秀な人」をどんな基準で見ているか、紙に3つ書き出す
- その基準が、学歴・地頭・話し方のうまさに偏っていないか見直す
- 今の仕事で、自分が決められることを一つだけ選ぶ
- 誰かの指示待ちになっている業務を一つ見つける
- その業務で、自分なりの目標を一文で置いてみる
- 会議や打ち合わせで、受け身ではなく自分の立場を一回は言葉にする
- 「この仕事のリーダーは誰か」ではなく、「自分はどこを主導できるか」で考える
- 人を見るときに、目先の能力だけでなく、伸びる余地や周囲への働きかけにも目を向ける
- 採用や評価に関わるなら、ふるい分けの基準と、本当に求める人物像を分けて考える
大切なのは、リーダーシップを役職の話にしないことです。本書を行動に変える第一歩は、「自分の仕事を自分で動かす」という感覚を持つことだと思います。
1週間で試すならこうする
1週間で試すなら、考え方の整理と小さな実践を交互に置くと続けやすいです。
- Day1:自分にとっての「優秀さ」の定義を書き出す
- Day2:その定義の中で、地頭や肩書きのような見えやすい要素に偏っていないか確認する
- Day3:今週の仕事から一つ選び、自分なりの目標を置く
- Day4:その仕事で、自分が先頭に立てる場面を一つ作る
- Day5:会議や相談の場で、自分の判断や立場を一度は明確に伝える
- Day6:一週間を振り返り、「指示待ちだった場面」と「自分で動けた場面」を分けて書く
- Day7:来週はどの仕事で主導権を持つか、具体的に一つ決める
この流れなら、本書の主張を抽象論のまま終わらせずに済みます。特に、目標を置く、決める、伝えるという動きは、仕事の中で試しやすい部分です。
つまずきやすい点と対策
いちばんつまずきやすいのは、リーダーシップを大きな話として受け取りすぎることです。本書は、すべての人に必要な力としてリーダーシップを捉えていますが、その分、人によっては少し厳しく感じるかもしれません。対策としては、「組織を引っ張る」ではなく、「自分の担当を自分で前に進める」に置き換えると入りやすくなります。
もう一つは、この本を面接対策や採用ノウハウの本として読んでしまうことです。そう読むと、すぐ使えるテクニックが少なく感じて、活かし方が見えにくくなります。対策は、受かるための本ではなく、長く価値を出す人の条件を考える本として使うことです。
比較|似ている本とどう違う?

『経営×人材の超プロが教える 人を選ぶ技術』との違い
結論から言うと、『採用基準 地頭より論理的思考力より大切なもの』は「どんな人を採るべきか」という基準の考え方を深める本であり、『経営×人材の超プロが教える 人を選ぶ技術』は「人をどう見極めるか」という選抜実務に寄った本として捉えると違いがわかりやすいです。
テーマの軸で見ると、本書は採用を入口にしながら、実際にはリーダーシップ、人材観、キャリア形成まで話を広げています。一方で比較対象は、エグゼクティブサーチの視点からハイクラス人材の見極めを補強する本として位置づけで、関心の中心はより「選ぶ技術」に近いと考えられます。実用性の向きも少し違っていて、本書は自分の成長の方向や評価軸を見直したい人に向き、比較対象は採用面接や人材見極めの精度を上げたい人に向いていそうです。
向いている人で分けるなら、自分は何を伸ばすべきか、企業は何を見ているのかを考えたい学生や若手には本書のほうが入りやすいはずです。逆に、採用や登用の場面で、より選抜寄りの視点を補いたい人には『経営×人材の超プロが教える 人を選ぶ技術』のほうが目的に合いやすいでしょう。
『人事と採用のセオリー 成長企業に共通する組織運営の原理と原則』との違い
結論から言えば、『採用基準』は個人の資質に焦点を当てた本で、『人事と採用のセオリー 成長企業に共通する組織運営の原理と原則』は人事全体を俯瞰するための本です。同じく人材や採用を扱っていても、見ている範囲が違います。
比較の軸で言うと、読者層と実用性の出方が異なります。『採用基準』は、就活生や若手ビジネスパーソン、採用や育成に関心がある人が、自分の成長や人の見方を考え直すのに向いています。採用基準とスクリーニング基準の違い、リーダーシップを全員に必要な力として捉える視点など、個人の行動や認識の変化につながりやすいのが特徴です。これに対して『人事と採用のセオリー 成長企業に共通する組織運営の原理と原則』は、採用だけでなく配置・評価・報酬まで含む原理原則を補えると整理されており、組織運営まで広く見たい人に向いています。
そのため、個人の働き方や人材観を見直したいなら『採用基準』、人事制度や組織運営の全体像まで視野に入れたいなら『人事と採用のセオリー 成長企業に共通する組織運営の原理と原則』を選ぶほうが目的に合いやすいです。採用を「制度」の問題として見るか、「人材像」の問題として見るかで、選び分けるのが分かりやすいと思います。
迷ったらどれを選ぶべき?
迷ったときは、「自分は人を見る基準を知りたいのか、それとも選ぶ技術や制度を知りたいのか」で選ぶのがいちばんわかりやすいです。本書が向いているのは、採用の話から出発しつつ、結局は優秀さの定義やリーダーシップの捉え方まで整理したい人です。就活本や採用本として手に取っても、最後に残るのは「どんな人が長く価値を出せるのか」という問いなので、個人の成長やキャリアに引きつけて読みたい人に強い一冊です。
採用の現場で見極めの精度を上げたいなら『経営×人材の超プロが教える 人を選ぶ技術』、組織全体の採用・人事運営まで含めて考えたいなら『人事と採用のセオリー 成長企業に共通する組織運営の原理と原則』が合いやすいでしょう。反対に、「企業は何を見ているのか」「自分は何を伸ばせばいいのか」を最初に整理したいなら、まず読むべきなのは『採用基準 地頭より論理的思考力より大切なもの』です。
著者はどんな人?|この本を書いた背景

著者プロフィール
伊賀泰代は、キャリア形成コンサルタントです。兵庫県出身で、一橋大学法学部を卒業後、日興證券引受本部を経て、カリフォルニア大学バークレー校ハース・スクール・オブ・ビジネスでMBAを取得しています。1993年から2010年末までマッキンゼー・アンド・カンパニー・ジャパンで、コンサルタント、人材育成、採用マネージャーを務めました。2011年に独立し、現在はキャリアインタビューサイト「MY CHOICE」を運営しながら、リーダーシップ教育やキャリア形成に関する啓蒙活動に取り組んでいます。
このテーマを書く理由
本書のテーマと著者の経歴は、かなり強く結びついています。著者はマッキンゼーで長く採用と人材育成に関わり、多くの候補者と向き合ってきました。その経験の中で、世の中が思い描く「優秀な人」のイメージと、実際に現場で見ている評価軸のあいだにずれがあることを問題として捉えています。
本書が採用の話だけで終わらず、リーダーシップやキャリア形成にまで広がっていくのは、そのためです。単に「どうすれば受かるか」を語るのではなく、これからの時代に必要な資質は何か、日本ではなぜそれが正しく理解されにくいのかを整理しようとしている点に、著者の問題意識が表れています。
この本が信頼できる理由
この本が信頼しやすいのは、採用を外から眺めた印象論ではなく、実務の中で積み上げられた視点から書かれているからです。しかも本書は、単に「マッキンゼーではこうだった」と語るだけではなく、採用基準とスクリーニング基準の違い、リーダーシップをどう行動に落とすか、日本で人材像がどう誤解されているか、と論点を順に分けて考えています。
加えて、現在の制度そのものを解説する本ではないと最初に線を引いている点も大きいです。語れる範囲と語れない範囲を分けたうえで、自分が確かに見てきたテーマに絞っているため、過度に内幕話へ寄らず、人材観の本として読むだけの土台があります。
よくある質問(FAQ)

要約だけ読めば十分?
結論から言うと、目的しだいです。どんな本かを短時間でつかみたいだけなら、採用の話を入口にしながら、実際にはリーダーシップを軸に人材像を捉え直す本だと分かれば、要点の把握としては十分です。
ただし、「なぜ地頭やケース面接の出来だけでは足りないのか」「なぜその話が働き方やキャリアの話にまで広がるのか」まで納得したいなら、要約だけでは少し足りません。本書は、誤解をほどいてから核心に進む順番に意味があるので、前半から中盤まで読むことで説得力が出てきます。
初心者向け? 中級者向け?
結論としては、初心者にも入りやすい一方で、読み終えたあとに考える量は多めの本です。採用やリーダーシップの専門知識がなくても読めますが、内容の重心は面接対策のような即効性の高いノウハウではなく、人材観そのものを見直す方向にあります。
そのため、就活や転職の前に「何が評価されるのか」を整理したい人には入り口として役立ちますし、すでに働いていて育成や採用に関わる人にはより深く刺さりやすい本です。反対に、すぐ使える手順だけを求める場合は、やや抽象度が高く感じるかもしれません。
どこから読むべき?
最初から順に読むのがいちばん分かりやすい本ですが、時間が限られるなら優先順位はあります。まず読むなら、採用基準にまつわる誤解を整理する前半と、「将来のリーダーを採る」という中心命題を置く中盤です。ここを押さえると、本書が何を否定し、何を軸にしているのかが見えます。
そのうえで、実際の行動に引きつけたいなら、リーダーに必要なタスクを扱う章と、学び方を具体化する章に進むのが自然です。全体の奥行きを知りたい場合は、最後の人生やキャリア意識にまで話を広げる終盤まで読むと、本書が単なる採用論で終わらない理由がつかみやすくなります。
忙しくても実践できる?
全部を大きく変えようとしなければ十分実践できます。本書から持ち帰りやすいのは、自分が「優秀さ」をどんな物差しで見ているかを見直すことや、リーダーシップを役職ではなく、目標設定・意思決定・伝達の行動として捉え直すことです。どれも、今日の仕事の進め方を少し変えるところから始められます。
一方で、この本の実践はチェックリストをこなして終わるタイプではありません。すぐ効く面接ノウハウではなく、「どのような人間になれば価値を出せるのか」という問いに向き合う本なので、短時間でも繰り返し考える使い方のほうが合っています。
まとめ|結局、この本を読む価値はある?

この本の価値を3つで言うと
第一に、採用の本でありながら、面接対策ではなく「長く価値を出す人の条件」を考えられることです。地頭や論理的思考力だけに寄せず、その先にあるリーダーシップまで視野を広げてくれるので、就活本として読むよりも長く残る一冊です。
第二に、採用・育成・働き方が一つの線でつながることです。本書は、どんな人を選ぶかという話で終わらず、仕事をどう主導するか、どう成長するか、どんなキャリアを築くかまで話が進みます。読む前よりも、「評価される人」ではなく「価値を出せる人」で考えやすくなります。
第三に、タイトルから受ける印象とのズレが、むしろ本書の価値になっていることです。現行の採用制度や面接攻略を知りたい人には合いませんが、日本で誤解されがちな優秀さの基準を問い直したい人には、読む意味がはっきりあります。
この本をおすすめできる人
おすすめできるのは、就職や転職の前に「企業は何を見ているのか」を整理したい人、若手のうちに伸ばすべき力を考えたい人、そして採用や育成の基準を見直したい人です。表面的な能力や肩書きではなく、長く活躍する人の条件を考えたい読者には特に合います。
逆に、ケース面接の解き方や選考突破の即効ノウハウだけを求めるなら、期待とは少し違うかもしれません。本書の強みは、目先の攻略ではなく、働き方やキャリアの土台になる見方を与えてくれるところにあります。
今すぐやること
今日やることは一つで十分です。今夜15分だけ取り、「自分は人を評価するときに何を見ているか」を紙かメモアプリに3つ書き出してみてください。そのうえで、その3つが学歴・地頭・面接のうまさに偏っていないかを見直し、最後に「目標設定・意思決定・伝達」のどれを明日ひとつ意識するかまで決めると、本書の内容が読むだけで終わりません。
次に読むならこの本
- 『生産性 マッキンゼーが組織と人材に求め続けるもの』:本書で得た人材観を、組織運営や仕事の進め方まで広げたい人に向いています。
- 『人事と採用のセオリー 成長企業に共通する組織運営の原理と原則』:採用だけでなく、配置・評価・報酬まで含めて人事全体を俯瞰したいときの次の一冊です。
- 『経営×人材の超プロが教える 人を選ぶ技術』:候補者をどう見極めるかという選抜実務の視点を、別の専門領域から補強したい人に合います。
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