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【書評】外国人材を競争力に変える法――日本企業が外国人から「選ばれる力」を持つために|要約

【書評】外国人材を競争力に変える法――日本企業が外国人から「選ばれる力」を持つために|要約

外国人材の採用を考えていても、人手不足を埋める発想のままでよいのか、定着や教育まで含めてどう向き合うべきか、迷われる方は多いのではないでしょうか。『外国人材を競争力に変える法』は、外国人材をどう使うかではなく、企業がどうすれば選ばれる存在になれるのかという視点から、その迷いを捉え直す一冊です。

この記事では、本書が事例と実務をどう結びつけながら、日本企業の姿勢そのものを問い直しているのかを丁寧に見ていきます。あわせて、制度解説書とは異なる特徴や実践寄りの読み味も整理し、この本が自社の採用や受け入れ体制を考えるうえで合うかどうかを判断しやすくしていきます。


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結論|この本はどんな人に向いている?

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この本をひとことで言うと

この本は、外国人材をどう採るかだけでなく、企業の側がどうすれば「選ばれる存在」になれるかを考えるための本です。人手不足への対処を外国人雇用の実務だけで終わらせず、採用ルート、就業・生活環境、日本語教育、定着支援、DXまで含めて、受入れ体制そのものを見直したい人に向いています。外国人材を不足分の穴埋めではなく、企業の競争力につながる存在として捉え直す視点が、この本の核です。


向いている人

まず合うのは、外国人材の受入れをこれから検討している経営者や人事責任者です。何から整えればよいのかが見えにくい段階でも、本書は問題意識から実務論点まで一続きで整理しているため、全体像をつかみやすいはずです。

次に向いているのは、製造業、建設業、介護、農業など、人手不足が深刻な現場を預かる管理者です。事例を通じて、受入れの成果だけでなく、教育や生活支援、見えない工数のような負担も視野に入れているため、現場感覚と結びつけて読みやすい本です。

さらに、採用した後の定着や育成に悩んでいる担当者にも適しています。採用だけで解決する話ではなく、日本語学習、文化理解、信頼できる採用ルート、業界の不透明さ、DXによる可視化まで扱っているので、受入れ後の課題を含めて考えたい人に向いています。


向いていない人

一方で、入管手続や法務、制度の細かな運用を網羅的に知りたい人には、やや目的がずれるかもしれません。本書は制度の完全マニュアルというより、経営視点と実践事例を軸にした本だからです。

また、外国人雇用全体をできるだけ中立的に整理した概説書を求める人も、少し相性が分かれそうです。企業の姿勢や受入れ思想に強く踏み込む内容で、キャムコムグループの実践や問題意識が色濃く反映されています。制度理解だけを目的に読むより、企業の向き合い方まで含めて考えたい人のほうが、この本の価値を受け取りやすいと思います。


先に結論(買う価値はある?)

結論から言えば、外国人材の採用と定着を「経営課題」として考えたい人には、買う価値があります。理由は、外国人雇用を単なる人手不足対策としてではなく、選ばれる企業になるための条件として整理しているからです。理念だけで終わらず、企業事例、四つの法則と四つの課題、採用DXまで一冊の中でつながっている点も強みです。

反対に、制度や手続の詳細だけを最短で確認したい場合は、ほかの実務書のほうが合う可能性があります。それでも、採用する前提を見直したい、受け入れる側の姿勢から考えたいという人なら、この本から得られるものは大きいはずです。




要約|この本の内容を3分でつかむ

要約|この本の内容を3分でつかむ

重要ポイント3つ

本書の核心は、大きく三つに整理できます。第一に、外国人材を「安価な労働力」とみなす発想そのものが、いまの日本企業にとって大きな足かせになっているという点です。人手不足や円安といった外部環境だけでなく、受け入れる側の認識の古さが、日本が選ばれにくくなる原因として捉えられています。

第二に、必要なのは採用数を増やすことだけではなく、外国人材から選ばれる企業になることだ、という視点です。本書は冒頭から、企業はすでに「選ぶ側」ではなく「選ばれる側」に回っているという前提を置いています。そのうえで、相手の文化や個性を理解し、安心して働き続けられる環境を整えることが、採用と定着の両方に直結すると論じています。

第三に、その考え方を理念で終わらせず、具体的な事例と仕組みの話まで落とし込んでいることです。農業、建設、介護、製造業の現場事例を挟みながら、受け入れを成功させる法則、つまずきやすい課題、採用ルート、日本語教育、DXによる可視化まで扱っています。経営の話と実務の話が切り離されていないのが、本書の特徴です。


著者が一番伝えたいこと

著者が最も伝えたいのは、外国人材の活用を単なる人手不足対策として考えるだけでは、もう通用しないということです。これからの企業に必要なのは、採れるかどうかではなく、働く相手として選ばれるに足る姿勢と環境を持てるかどうかにあります。賃金や制度だけではなく、受け入れる側の考え方、教育の仕組み、生活支援、コミュニケーションのあり方まで含めて見直さなければ、採用しても定着しないという問題意識が全体を貫いています。

その主張を支えるために、本書は序盤で日本が外国人材にとって以前ほど魅力的ではなくなっている現実を置き、中盤で受け入れの原則と課題を整理し、後半では企業事例やDXの話へ進みます。さらに、インドネシアを新たな人材供給の重要な対象として取り上げ、送り出し側の事情や業界の不透明さにも目を向けています。つまり本書は、外国人雇用の方法を教えるだけでなく、日本企業の向き合い方そのものを問い直す本です。


読むと得られること

この本を読むことで得られるのは、外国人材の採用を「採用活動の一部」としてではなく、「企業のあり方」に関わるテーマとして整理し直せることです。受け入れの成否は、募集条件だけで決まるわけではありません。採用ルートの透明性、就業後の生活支援、日本語学習の機会、現場での教育、見えにくい工数への備えなど、受け入れ前後を通じた設計が必要だと見えてきます。

また、何を整えればよいかが抽象論で終わらないのも本書の実用性です。四つの法則と四つの課題という整理があるため、自社で不足している視点を点検しやすく、事例を通じて現場の問題も具体的にイメージしやすくなっています。採用後の定着や育成に悩んでいる担当者にとっては、問題の所在を言語化する助けにもなるはずです。


内容の全体像|章(目次)の流れと読みどころ

内容の全体像|章(目次)の流れと読みどころ

全体の設計(章の流れをざっくり)

本書は、いきなり制度や手順に入るのではなく、まず「なぜ今このテーマなのか」を強く突きつけるところから始まります。冒頭では、日本が外国人材にとって以前ほど魅力的な就労先ではなくなりつつある現実を示し、その原因を外部環境だけでなく、受け入れる側の発想にも求めています。ここで問題設定をはっきり置くことで、この本が単なる採用ノウハウ本ではなく、企業の姿勢を問い直す本だと分かります。

そのうえで序盤では、インドネシアという新たな人材供給の焦点を提示し、日本側の事情だけではなく、送り出し側の背景や業界の課題にも目を向けます。中盤に入ると、現場事例で人手不足の切実さを見せ、次に受け入れ成功の法則と課題を整理し、さらにDXによる仕組み化へ進みます。つまり本書は、危機感→背景理解→現場事例→実務整理→仕組み化→展望、という順番で読者を導く設計です。考え方と実務を行き来しながら読めるので、経営者にも現場担当者にも入りやすい構成になっています。


大見出し目次(短い目次)

  • まえがき 日本企業が外国人材に「選ばれる力」を持つために
  • プロローグ 優秀な外国人材の新たな宝庫・インドネシア
  • 第1章 人材不足大国・日本 〜なぜ、この企業は外国人材の採用で成功したのか
  • 第2章 外国人材の受入れを成功させる四つの法則と四つの課題
  • 第3章 外国人採用のDXを加速させたキャムコムグループのシステム
  • 第4章 キャムコムグループが切り開いた外国人採用の扉 〜課題を克服した企業
  • 第5章 人材業界の代表として外国人材と企業のために果たすべき「使命」
  • エピローグ 外国人材支援事業の未来とキャムコムグループの「決意」


各章の要点

まえがきは、外国人材を受け入れる前に企業側が考え方を改める必要がある、という前提を置くパートです。ここで本書全体の問題意識が定まり、後の章を読む土台になります。

プロローグは、日本が選ばれにくくなっている理由を国別の事情も交えて整理し、そのなかでインドネシアを重要な存在として位置づけます。背景理解の章であり、後の事例パートへの入口でもあります。

第1章は、農業・建設・介護といった現場で、人手不足と外国人材受入れがどう結びついているかを見せる章です。理屈ではなく現場から必要性を理解させる役割を持っています。

第2章は、本書の橋渡しになる章です。現場事例を踏まえて、成功の条件と課題を整理し、何を整えるべきかを実務の言葉に変えています。考え方と具体策をつなぐ中核部分といえます。

第3章は、受入れを属人的な努力で終わらせず、DXでどう支えるかに踏み込む章です。採用や定着の仕組み化に関心がある読者には重要です。

第4章は、再び企業事例に戻り、課題をどう乗り越えたかを具体的に見せる章です。第2章で整理した原則が、実際の企業でどう機能するかを確かめる位置づけになっています。

第5章とエピローグは、個別企業の話から一段引いて、人材業界や日本企業全体が今後どう向き合うべきかへ視野を広げます。実務書として終わらず、最後にテーマの大きさを示して締めています。


忙しい人が先に読むならここ

ガイドさん
ガイドさん
全部を通読できなくても、まず中核だけ押さえれば本書の価値はつかめます。最初に読むなら、問題提起と実務整理がまとまっている部分から入るのが効率的です。

忙しい人が先に読むなら、まずは冒頭と第2章です。冒頭では、この本がなぜ外国人雇用の手引きではなく、企業の姿勢を問う本なのかがはっきりします。そのうえで第2章に進むと、受入れの法則と課題が整理されているので、全体像を短時間でつかみやすくなります。

次に読む候補は、第1章か第4章です。現場事例を通じて、抽象的だった話が具体的な問題として見えてきます。採用後の教育や生活支援、定着の難しさまで含めて理解したいなら、ここを飛ばさないほうがよいでしょう。

DXや仕組み化に関心が強い人は、第3章を優先してもよいと思います。逆に、まず制度の細部を知りたい人には、この本の読み順そのものより、ほかの制度寄りの本と併読したほうが理解しやすいはずです。本書は、全体として「どう受け入れるか」以上に「どんな企業であるべきか」を考えるための流れで組まれています。


感想|読んで印象に残ったことと注意点

感想|読んで印象に残ったことと注意点

特に印象に残ったポイント

いちばん強く残ったのは、外国人材の受け入れを「どう活用するか」ではなく、「企業の側がどうすれば選ばれる存在になれるのか」という問いで捉えていたことです。人手不足を扱う本ではあるのに、読み終えてまず残るのが採用ノウハウそのものではなく、受け入れる側の姿勢への問い直しだったところに、この本の特徴があると感じました。

そう思ったのは、冒頭で日本が外国人材にとって以前ほど魅力的な働き先ではなくなっている現実を置いたうえで、その原因を賃金や円安だけでなく、受け入れる側の固定観念にまで踏み込んでいたからです。単に環境が厳しくなったという話では終わらず、企業が人を選ぶ側から選ばれる側に移っているという見方が全体を貫いているので、問題提起に一貫性がありました。

もう一つ印象に残ったのは、考え方の話だけでなく、事例、四つの法則と四つの課題、さらにDXによる仕組み化へと無理なくつながっていく構成です。理念だけを語るのではなく、実際の採用ルートや教育、日本語支援、生活支援、定着の難しさまで視野に入っていたので、抽象論に見えにくかったです。読んでいて、現場で本当に問題になることを外していない本だと受け取りました。


すぐ試したくなったこと

読み終えて、いちばん先に見直したくなったのは、自社が外国人材の受け入れをどんな言葉で捉えているかという点でした。人手不足を埋めるための手段としてだけ語っていないか、受け入れた後の生活支援や日本語教育まで含めて考えているかを、まず整理したくなります。そう思えたのは、本書が採用だけで話を終わらせず、定着や教育、日々の支援まで視野に入れていたからです。

もう一つは、見えない工数を最初から数え直すことです。受け入れ後のフォローや現場での負担は、制度の説明だけを読んでいても見落としがちですが、この本はそこを避けていませんでした。採用ルートの透明性、日本語の壁、教育の手間、社内の理解不足まで含めて考える必要があると分かるので、表面的な採用計画のまま進める危うさに気づかされます。すぐ試したいと思えたのは、机上の理屈ではなく、実務に落とす視点がはっきりしていたからです。


読んで気になった点

一方で、読んでいて少し気になったのは、制度の全体像を中立的に整理する本として読むと、やや期待がずれるかもしれないことです。この本は法制度の細かな解説を積み上げるタイプではなく、企業がどう向き合うべきか、どう整えるべきかに重心があります。だから、制度比較や逐条的な理解を求める人には、やや実践寄りに見えると思います。

もう一点は、後半に進むほどキャムコムグループの実践や問題意識が前に出てくるところです。そこが具体性や説得力につながっている面は大きいのですが、読み手によっては、業界全体の一般論としてそのまま受け取るより、一つの実践知として読むほうがしっくりくるかもしれません。私自身、この本は中立的な制度解説書というより、現場からの提言として読むとよさが伝わりやすいと感じました。

それでも、こうした引っかかりを含めて、本書が問いかけている方向はかなり明確です。外国人材を「不足分を埋める人手」としてではなく、「共に働き、共に成長する相手」として捉え直したい人には、十分に読む意味があります。




実践編|この本を読んだあと、どう行動する?

実践編|この本を読んだあと、どう行動する?

今日からできること

ガイドさん
ガイドさん
最初から全部やる必要はありません。まずは、自社の受け入れ方針を言葉にし直すところからでも十分です。

本書は、読んで考え方を変えて終わる本ではなく、受け入れの前提を見直すために使う本です。まず着手しやすいのは、次のような小さな確認です。

  • 自社が外国人材を「不足分を埋める人手」としてだけ見ていないか、採用方針を書き出して確認する
  • 採用後に必要な支援を、教育・日本語・生活面の3つに分けて整理する
  • 現在使っている採用ルートや仲介先について、透明性と説明責任があるか見直す
  • 配属後の受け入れ担当者が誰か、社内で曖昧になっていないか確認する
  • 現場で「高い日本語力」を前提にしすぎていないか、要求水準を棚卸しする
  • 文化や生活習慣の違いを、現場任せにせず共有できているか点検する
  • 定着しづらい理由を、本人側ではなく職場側の設計から見直してみる
  • 受け入れ後の流れを、採用で終わりではなく定着までの一連の設計として見直す

この本の要点は、受け入れは採用の瞬間だけで決まらないということです。だからこそ、今日やるべきことも「採る方法」より「受け入れる準備」を整える方向に寄せると、本書の内容を活かしやすくなります。


1週間で試すならこうする

1週間で形にするなら、無理に大きな改革を目指すより、受入れ体制の棚卸しを一巡させるのが現実的です。

Day1:自社が外国人材を受け入れる目的を整理します。人手不足対策だけで終わっていないかを見直し、「なぜ受け入れるのか」を明確にします。

Day2:採用後に必要な支援を洗い出します。住居、生活面のフォロー、日本語学習、現場での教育など、採用後に発生する項目を一覧にします。

Day3:採用ルートを点検します。送り出し先や受入れパートナーの情報が十分に見えているか、信頼できる判断材料があるかを確認します。

Day4:現場の負担を確認します。教育担当、現場責任者、管理部門にどんな工数が発生するかを書き出し、見えない負担を可視化します。

Day5:社内の温度差を確認します。外国人材登用に対して、どんな不安や誤解があるかを拾い、放置しない前提をつくります。

Day6:定着支援の仕組みを考えます。面談、学習支援、情報共有など、続けて見守るための方法を簡単でもよいので設計します。

Day7:ここまでの内容をまとめて、「今すぐ着手すること」「後で整えること」に分けます。全部を一気にやるのではなく、順番を決めるだけでも前進です。


つまずきやすい点と対策

最初につまずきやすいのは、「外国人材の受け入れ」というテーマを制度の話だけで処理しようとすることです。本書が繰り返し示しているのは、問題の中心が制度だけでなく、企業側の姿勢、教育、日本語支援、生活環境、採用ルートにまたがっているという点です。対策としては、制度確認と同時に、受け入れ後の運用を並行して点検することが欠かせません。

もう一つの難所は、現場が求める条件を当然のものとして扱ってしまうことです。日本流のやり方や高い日本語力を前提にすると、採用も定着もうまくいきにくくなります。ここでは「何を必須にして、何を入社後に育てるか」を分けて考えると、整理しやすくなります。

最後に、人によってはこの本を制度解説書として読もうとして、やや実践寄りだと感じるかもしれません。そんなときは、「制度を学ぶ本」ではなく「受け入れ体制を整える本」と位置づけ直すと使いやすくなります。本書は、読後に知識を増やすためだけでなく、自社の受け入れ設計を見直すために使うと価値が出る一冊です。


比較|似ている本とどう違う?

比較|似ている本とどう違う?

『すぐに使える!事例でわかる!外国人実習・雇用実戦ガイド 第4版』との違い

結論から言うと、制度対応や手続きを深く確認したいならすぐに使える!事例でわかる!外国人実習・雇用実戦ガイド 第4版』、企業の姿勢や受入れ体制まで含めて考えたいなら本書、という選び分けがしやすいです。比較の軸でいえば、いちばん大きい違いは「テーマの置き方」と「実用性の向き」にあります。

本書は、外国人材をどう採るかよりも、企業がどうすれば選ばれる側になれるかを中心に据えています。人手不足、受入れの考え方、定着支援、日本語教育、見えない工数、DXまでを一続きの問題として扱っているので、経営や現場運営に近い読み味です。一方で、『すぐに使える!事例でわかる!外国人実習・雇用実戦ガイド 第4版』は、本書より法務・労務・入管手続寄りで、制度対応を深めたい読者向けと整理できます。

向いている人も少し違います。本書が合うのは、外国人材の受入れ方針そのものを見直したい経営者や人事責任者です。対して、『すぐに使える!事例でわかる!外国人実習・雇用実戦ガイド 第4版』は、実際の運用や制度面をより具体的に詰めたい担当者に向いています。


『外国人雇用のトリセツ』との違い

結論を先に言えば、はじめて外国人雇用に向き合う入口として読みやすいのは外国人雇用のトリセツ』で、本書はその一段先で「受け入れる企業のあり方」まで踏み込む本です。ここでの比較軸は、読みやすさと読者層、そして掘り下げるテーマの深さです。

『外国人雇用のトリセツ』は、中小企業が外国人雇用のメリットや雇い方、働きやすい環境づくりを平易に整理し直すための本として位置づけられています。それに対して本書は、外国人材を安価な労働力として見てしまう発想そのものを問い直し、企業事例、四つの法則と四つの課題、DXまでつなげて考えさせる構成です。読みやすさという意味では入口本より少し重めですが、そのぶん受入れの前提を深く考えたい読者には残るものが大きいはずです。

向いている人で分けるなら、『外国人雇用のトリセツ』は「まず全体像をやさしくつかみたい人」に向いています。本書は「採用後の定着や教育まで含めて体制を見直したい人」や、「人手不足対策ではなく競争力の問題として捉えたい人」に向いています。


迷ったらどれを選ぶべき?

迷ったときは、「いま自分が欲しいのは考え方か、手続か、全体像か」で選ぶのがいちばん失敗しにくいです。

  • 企業の受け入れ姿勢や設計を見直したい → 本書
  • 入管・労務・在留資格などの実務手続を厚く確認したい → 『すぐに使える!事例でわかる!外国人実習・雇用実戦ガイド 第4版』
  • まず基本像を短くつかみたい → 『外国人雇用のトリセツ』

本書の強みは、外国人雇用を「不足分を埋める手段」で終わらせず、「企業がどう選ばれるか」という視点まで引き上げているところです。制度の逐条解説を主目的にすると少し印象が違うかもしれませんが、受け入れの前提そのものを見直したい人には、この本から読む意味がはっきりあります。逆に、今すぐ制度運用を詰めたい段階なら、比較対象から入るほうが効率的です。


著者はどんな人?|この本を書いた背景

著者はどんな人?|この本を書いた背景

著者プロフィール

宮林利彦は、株式会社キャムコム代表取締役です。横浜国立大学の機械工学系を卒業後、警戒レーダーや電波監視システムのプロジェクトマネジメントに携わり、2006年に株式会社綜合キャリアオプション(現キャムコムグループ)へ入社しました。CTOを経て2016年にグループ事業統括、2022年に株式会社キャムコム代表取締役へ就任しています。刊行案内では、本書は初の著書とされています。


このテーマを書く理由

本書がこのテーマを強く扱うのは、著者が外国人材の受入れを机上の課題ではなく、事業の現場で直面してきた問題として捉えているからです。キャムコムグループは2019年に外国人材事業を始めていますが、その過程で、採用や雇用の不透明さ、労働環境や賃金をめぐる課題が山積している現実に向き合うことになりました。

そのうえで本書は、日本が外国人材から見て以前ほど自明に選ばれる就労先ではなくなっているという危機感を出発点にしています。単に採用ノウハウを整理するのではなく、企業側の意識や受入れ体制を変えなければ状況は改善しない、という問題意識が全体を貫いているのは、著者自身が現場でその難しさを見てきたからだと読み取れます。


この本が信頼できる理由

この本の信頼性は、制度の一般論だけに寄らず、現場事例、受入れの法則と課題、採用ルート、日本語教育、生活支援、定着、DXまでをつなげて論じている点にあります。農業、建設、介護、製造業といった人手不足業種の事例を交えながら、外国人材受入れを経営課題として具体化しているため、抽象論に終わりにくい構成です。

同時に、本書は中立的な制度解説書というより、キャムコムグループの実践と問題意識が色濃く反映された実務書でもあります。だからこそ、法務や手続きの網羅性を求める本とは役割が異なりますが、「企業はどう変わるべきか」という問いに対しては、著者の立場と経験がはっきりしているぶん、読者は論点をつかみやすい一冊になっています。


よくある質問(FAQ)

よくある質問(FAQ)

要約だけ読めば十分?

結論から言うと、目的次第です。外国人雇用の全体像を短時間でつかみたいだけなら、要点整理だけでも本書の問題意識はかなり見えてきます。とくに、企業が外国人材を「選ぶ側」ではなく「選ばれる側」になっていること、そして受け入れの姿勢そのものが問われていることは、要約でも把握しやすい部分です。

ただ、自社で何を見直すべきかまで考えたいなら、要約だけでは足りません。本書は、事例、受け入れの原則、課題、DXという流れで話がつながっているので、通して読むほど「考え方」と「現場の論点」が結びつきやすくなります。


初心者向け? 中級者向け?

結論としては、完全な入門書というより、初心者から中級者にかけての実務寄りの本です。文章の軸は明快で、問題意識もつかみやすい一方、制度の全体像を一から網羅するタイプではなく、経営視点と受入れ体制づくりに重心があります。

そのため、外国人雇用に初めて触れる人でも読めますが、「何から始めるか」を知りたいだけの段階だと少し実践寄りに感じるかもしれません。反対に、採用や定着、日本語支援、現場の負荷まで含めて考えたい人には、ちょうどよい深さです。


どこから読むべき?

結論から言えば、最初に読むなら冒頭部分と、受入れの法則と課題を整理した章です。冒頭では、なぜ今このテーマが重要なのか、なぜ企業側の意識転換が必要なのかが置かれており、そのあとに続く法則と課題の章が、本書全体の考え方を最も効率よくつかませてくれます。

時間に余裕があれば、その次に企業事例の章へ進むと理解しやすいです。考え方だけで終わらず、農業、建設、介護、製造業の現場で何が起きているかを踏まえることで、本書が理念だけでなく実務の本でもあることが見えてきます。


忙しくても実践できる?

結論として、忙しくても実践はできます。ただし、一気に制度整備まで進めるというより、まずは自社の発想を点検し、採用後の支援や教育、見えない工数を洗い出すところから始めるのが現実的です。

本書の内容は軽いチェックリストではありませんが、行動の起点は大きくありません。受入れ方針を言葉にし直す、採用ルートの透明性を確認する、日本語教育や生活支援を採用計画とセットで見るといった見直しなら、忙しい担当者でも着手しやすいはずです。


まとめ|結局、この本を読む価値はある?

まとめ|結局、この本を読む価値はある?

この本の価値を3つで言うと

第一に、外国人雇用を「人数を埋める話」ではなく、「企業が選ばれる力を持てるか」という問いに引き上げてくれることです。人手不足対策の本に見えて、実際には日本企業の姿勢や価値観そのものを問い直す本になっています。

第二に、理念だけで終わらないことです。採用ルート、日本語教育、生活支援、定着、DX、人権配慮まで視野に入っており、何を整えればいいかを考えやすい構成です。事例と原則を行き来しながら読めるので、現場の判断にもつなげやすい一冊です。

第三に、読む前の期待を適切に整えやすいことです。本書は制度の全体を網羅する解説書ではなく、実践知と問題意識が色濃く反映された実務書です。だからこそ、制度の細目を調べる本ではなく、受け入れ設計の軸をつくる本として読むと価値がはっきりします。


この本をおすすめできる人

おすすめできるのは、外国人材の受入れをこれから検討する経営者や人事責任者、すでに受け入れているものの定着や教育に課題を感じている担当者、そして製造・建設・介護・農業のように人手不足が深い現場の管理者です。

とくに向いているのは、外国人材を「足りない人数を埋める人手」としてではなく、「共に働き、共に成長する相手」として捉え直したい人です。逆に、入管実務や法務手続だけを網羅的に確認したい場合は、これ一冊で完結させるより、別の実務書と組み合わせて読むほうが合っています。


今すぐやること

ガイドさん
ガイドさん
最初から全部見直す必要はありません。まずは、自社の考え方を言葉にするところからで十分です。

今日やることは一つで構いません。30分だけ時間を取り、「自社は外国人材を何のために受け入れるのか」を一文で書き出してください。できれば、人手不足の補充という言い方だけで終わらせず、定着、教育、成長、現場づくりのどこまで責任を持つのかも添えると、本書の価値がすぐ実務に変わります。


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カネマツ

年間約80冊の実用書・ビジネス書を読み、自己啓発、仕事術、採用・面接、人材育成、マーケティング分野を中心にレビューしています。採用や人材育成の実務経験をもとに、要約だけでなく、向いている人、実用性、類書との違いまで整理して紹介しています。記事は実読を前提に、必要に応じて出版社公式情報や改訂版情報も確認しながら執筆しています。

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