
採用面接は、企業と人が出会う最も重要な瞬間のひとつです。
しかし実際の現場では、「本当にこの人を正しく評価できているのだろうか」「自社に合う人材を見抜けているのだろうか」「なぜ内定を出しても辞退されてしまうのだろうか」といった不安や迷いが尽きません。
面接はこれほどまでに広く行われているにもかかわらず、その“やり方”や“考え方”は、意外なほど感覚に頼ったままになっているのが現実です。
そんな採用現場の根本的な悩みに真正面から向き合い、「よい採用とは何か」「よい面接とは何か」をゼロから問い直した一冊が、曽和利光氏による『採用面接100の法則』です。
著者は約30年にわたり人事・採用の最前線に立ち、2万人以上の人材と実際に向き合ってきた経験を持つプロフェッショナルです。
本書では、その膨大な実務経験と心理学をはじめとする学術的な知見をもとに、面接に潜む“思い込み”や“落とし穴”を一つひとつ丁寧に解き明かしていきます。
本書の最大の特徴は、「人は面接で簡単に見抜けない」という現実を真正面から受け止めたうえで、それでもなお面接の精度を少しでも高めるための“現実的な答え”を100個の提言として提示している点にあります。
採用担当者はもちろん、現場で急に面接官を任された管理職、さらにはこれから採用に関わるすべてのビジネスパーソンにとって、本書は“面接という仕事の見方が根本から変わる一冊”になるはずです。
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書籍『採用面接100の法則』の書評

『採用面接100の法則』は、「面接は感覚でやるもの」「人を見る目は経験で磨かれるもの」という、これまでの“なんとなくの常識”を一度すべてリセットし、面接を再設計し直すための実務書です。本書が扱っているのは、単なるテクニック集ではありません。「なぜ面接はうまくいかないのか」「なぜ見誤るのか」「どうすれば少しでも失敗を減らせるのか」という、採用の構造そのものに踏み込んでいます。
この書評では、次の4つの観点から本書の価値を立体的に解説していきます。
- 著者:曽和利光のプロフィール
- 本書の要約
- 本書の目的
- 人気の理由と魅力
それぞれ詳しく見ていきましょう。
著者:曽和利光のプロフィール
曽和利光氏は、心理学と人事実務の両方を本格的に経験してきた、日本でも非常に珍しいタイプの人材採用の専門家です。もともとは心理学者を志し、大学では教育心理学を専攻していました。教育心理学とは、人がどのように学び、理解し、成長していくのかを科学的に解明する分野であり、「人の行動や思考の仕組み」を理論的に捉える学問です。この時点ですでに、曽和氏は「人を感覚ではなく、構造として理解する訓練」を受けていたと言えます。
しかし研究者の道には進まず、就職活動を通じて「人は会社という組織の中でこそ大きく影響を受ける存在であり、ここに心理学を活かせるのではないか」と考え、人事の世界へ進む決断をします。企業人としてのキャリアでは、新卒採用・中途採用・教育研修・評価制度設計など、人事領域の中核となる業務をすべて実務で経験しています。つまり曽和氏は、「面接だけを専門にしてきた人」ではなく、「人が採用され、育ち、評価され、組織の一員として定着していくまでの全プロセス」を当事者として担ってきた人物なのです。
40代以降は独立し、人事コンサルタントとして活動を開始します。ここからは一社に属する立場ではなく、多様な業界・企業規模・経営状況の組織を横断的に支援する役割へと変化していきます。その中で実際に面接を担当し、合否判断に関わった人数が累計2万人を超えている点は、単なる理論家ではなく「現場の修羅場を誰よりも多くくぐってきた実務家」であることを如実に示しています。
印象的なのは、これだけの経験を積んでいながら、著者自身は自分を「面接の達人」だとは一切位置づけていない点です。むしろ面接を重ねるたびに、「人が人を評価することの難しさ」「短時間で人を見抜くことの危うさ」を強く実感し続けてきたと語っています。本書の随所に見られる慎重で誠実な語り口は、この“過信しない姿勢”に強く支えられています。
本書の要約
『採用面接100の法則』は、採用活動の中心に位置づけられてきた「面接」という手法を、感覚や経験だけに依存せず、できる限り再現性の高い仕組みとして再設計するための実務書です。多くの企業では今も、「話してみて何となく良さそうだった」「第一印象が良かった」「受け答えがしっかりしていた」といった曖昧な基準で合否が決まっているケースが少なくありません。本書は、そうした属人的で不安定な判断から脱却するために、面接という行為を一つひとつ構造的に分解し、「どこで判断が歪みやすいのか」「どこを整えれば精度が上がるのか」を体系的に示しています。
本書は大きく五つの領域から構成されています。まず序盤では、学歴フィルター、第一印象、圧迫面接、奇抜な質問といった面接の“常識”とされてきたものが、実際には評価の正確さを下げている可能性が高いことを示します。次に、候補者との対話の進め方、緊張のほぐし方、質問の深掘り、逆質問の扱いといった、面接を「会話の技術」として磨くための考え方が展開されます。
さらに中盤では、主体性・協調性・地頭・誠実性といった、企業が頻繁に使うにもかかわらず定義が曖昧になりがちな評価項目を、心理学的な視点から分解し直します。これにより、「言葉は同じでも評価基準が人によって全く違う」という、面接現場で頻発するトラブルの根本原因が浮き彫りになります。そして後半では、志望度の高め方、Z世代の価値観、辞退を防ぐコミュニケーション、内定の出し方など、「見極める」だけでなく「選ばれる」ための面接技術が語られ、最後は面接を採用戦略全体の中でどのように位置づけるべきかまで踏み込んでいきます。
本書の目的
本書の最大の目的は、「面接の精度を少しでも高め、採用のミスマッチを減らすこと」にあります。著者ははじめにの中で、2万人以上を面接してきた今でも、「面接なんて簡単だ」「短時間で人は見抜ける」と一度も思えたことがないと語っています。むしろ面接の経験を積めば積むほど、自信がなくなっていったという言葉は、従来の“面接至上主義”に対する強い問題提起でもあります。
多くの採用現場では、知らず知らずのうちに「自分は人を見る目がある」「この程度の質問で十分だろう」という思い込みが入り込みます。こうした思い込みは心理学では「認知バイアス」と呼ばれ、誰でも無意識のうちに持ってしまう判断の歪みです。本書は、面接の失敗の多くがこのバイアスによって引き起こされていることを前提に、どうすればその影響を小さくできるかを具体的に示しています。
もう一つの重要な目的は、「面接を属人化させないこと」です。多くの企業では、面接の質が特定の“できる面接官”に依存してしまい、その人が異動や退職をすると採用の質が一気に下がってしまうという問題が起きがちです。本書は、面接を個人の才能ではなく、「組織の技術」として共有可能な形にすることを目指しています。そのために、評価基準の言語化、質問の構造化、面接後の情報共有のルール化といった、極めて実務的な仕組みづくりが重視されています。
さらに本書は、「評価」と「動機形成」を分離せず、同時に扱うことの重要性も目的の一つとしています。採用は「落とす作業」ではなく、「お互いが納得して選び合うプロセス」であるという視点が、全編を通して貫かれています。
人気の理由と魅力
『採用面接100の法則』が長く読み続けられている最大の理由は、「現場で本当に役に立つ内容しか書かれていない」という点にあります。理想論や精神論に逃げず、実際の採用現場で起こる問題だけを正面から扱っているため、読者は自分の職場の状況を重ねながら読み進めることができます。
多くの面接関連書では、「見る目を養え」「やる気を感じ取れ」といった抽象的な表現が並びがちですが、本書では「何をどう聞き、どう解釈し、どこで判断を保留すべきか」という行動レベルの指針まで具体化されています。そのため、読み終えた瞬間から実務に反映させやすいのです。
また、本書は初心者にも配慮された構造になっています。人事や心理学の専門用語が出てきても、難解なまま放置されることはなく、必ずかみ砕いた説明や具体例が添えられています。採用に初めて関わる若手社員や、急に面接官を任された管理職でも、「何から考えればよいのか」が自然と理解できる設計になっています。
さらに大きな魅力として、評価の話と同時に「口説き」「動機付け」まで丁寧に扱っている点が挙げられます。多くの採用本は「どう見抜くか」だけに集中しますが、本書は「どうすれば入社したいと思ってもらえるか」までを面接の重要な役割として位置づけています。この視点が、内定辞退の多発やミスマッチといった現場の悩みに直結する形で役立っています。
加えて、本書は個人のスキルアップだけでなく、組織全体の採用レベルを底上げする「共通のものさし」としても機能します。人事、現場管理職、役員が同じ考え方を共有することで、評価のブレや属人化が減り、採用活動そのものが安定していくのです。この「組織で使える実務書」である点こそが、多くの企業で支持されている最大の理由だと言えるでしょう。
採用がうまくいかない企業ほど、評価基準が人によってバラバラです。
本書は、そのバラつきを是正するための“共通言語”を与えてくれる点に大きな価値があります。
本の内容(目次)

本書は、面接という行為を「評価」「対話」「動機形成」「戦略」という複数の側面から体系的に整理しており、採用担当者が実務で迷いやすいポイントを順序立てて理解できる構成になっています。章ごとに扱うテーマが明確で、読み進めるほど“面接とは表面的な雑談の場ではなく、緻密な判断と設計が求められる専門行為である”ことが実感できるつくりです。
取り扱う領域は以下のとおりです。
- 第1章 今どきもう通用しない? 面接の「常識」論
- 第2章 円滑な対話を実現する 面接コミュニケーション術
- 第3章 人材をどう見極める? 採用基準の設定
- 第4章 入社意思を面接で育む 自社への動機形成法
- 第5章 よい採用面接を目指す 採用戦略の立て方
それぞれの章は、人事の経験年数や立場に関係なく、読むだけで“何に気をつければよいのか、どこが落とし穴になりやすいのか”が自然と理解できるよう工夫されています。
ここからは各章の核心部分をひとつずつ丁寧に解説していきます。
第1章 今どきもう通用しない? 面接の「常識」論
この章では、長年「常識」とされてきた面接の手法が、実はほとんど根拠に基づいておらず、むしろ評価を誤らせる原因になっていることが示されています。第一印象や雰囲気に引っ張られやすい人間の認知特性、学歴フィルターの限界、奇抜な質問の非効率性など、採用現場で当たり前に行われている行為の多くが実は精度を下げてしまう可能性があると説明されています。著者が2万人の面接経験から語る「思い込みの危険性」は、採用担当者に強い問題意識を与える内容です。
また、面接を「候補者の本質を見抜く場」だと過信することのリスクにも触れています。たとえば、仕事ができる人が必ずしも面接が上手とは限らない現象や、話が長い人を不当に低く評価してしまう偏りなど、人間が行う評価には必ずノイズが混じることが具体例と共に示されています。こうしたズレを理解することで、面接官は「見抜く」のではなく「誤りを減らす」視点を持つ必要があることを本章は教えています。
さらに、面接と面談の違い、AIや適性検査との役割分担、圧迫面接の有害性なども明確に整理されています。これらはただの知識ではなく、「なぜその手法をやってはいけないのか」という根拠と共に語られており、実務で誤用しやすい落とし穴を避けるための基礎知識になります。
第2章 円滑な対話を実現する 面接コミュニケーション術
この章は、面接を成功に導くための「対話の設計」に焦点を当てています。特に強調されているのは、候補者が緊張した状態では正しい評価ができないという点です。アイスブレーキングは単なる世間話ではなく、候補者が本来の姿を出すための環境づくりであり、面接の精度を高めるための重要な技法であると説明されています。また質問の仕方も、本当に知りたいのは候補者の「思い」ではなく「行動の事実」であり、具体的なエピソードを引き出す技術が必要であると語られています。
さらに、面接官自身の姿勢や振る舞いが候補者の情報量に直接影響することも述べられています。誇張や違和感を感じた際は「素を出してもいい雰囲気づくり」、対話のキャッチボールを意識することなど、候補者が話しやすくなる工夫が実務レベルで紹介されています。面接後の引継ぎや評定表の書き方にまで踏み込んでいる点も特徴で、評価が個人の印象に流されないようにする配慮が丁寧に整理されています。
また、オンライン面接の注意点、動画面接のメリットとデメリットといった現代ならではのテーマも網羅されています。機材トラブルの想定や、対面とのコミュニケーション性の違いなど、オンライン特有の課題とその対策が実践的にまとめられており、現代の採用活動に直結する内容となっています。
第3章 人材をどう見極める? 採用基準の設定
この章では、面接で人材を見極めるための基準づくりが体系的に解説されています。多くの企業が使う「主体性」「誠実性」「コミュニケーション能力」などの言葉は非常にあいまいで、面接官ごとに解釈が異なるため評価のズレを生み出しやすいという問題が示されています。そこで本章では、これらの概念を細かく分解し、どのような行動がその特性を示すのかを理解する必要性が語られています。
また、人が評価する際に必ず発生する心理バイアスにも深く触れています。ハロー効果、類似性バイアス、第一印象の過大評価など、人間の認知は常に歪みやすい仕組みになっているため、それを理解したうえで評価設計を行わなければ見誤りが起きるという指摘がなされています。採用を成功させるためには「能力を見抜く」よりも「誤りを減らす仕組みをつくる」ことが本質であるという考え方が繰り返し強調されています。
さらに、面接に向いている構造化面接の特徴、複数評価の利点と欠点、話の長い候補者の扱い方、アンラーニングの重要性など、対象に応じた評価ポイントも紹介されています。具体的な行動を引き出す質問の必要性や、固有名詞・数字を使った確認方法など、実務に直結する技術も含まれています。
第4章 入社意思を面接で育む 自社への動機形成法
この章で扱われているのは、「選ぶ」だけではなく「選ばれるための面接」という新しい視点です。特に若年層が企業選択において理念や価値観を重視する傾向が強まっていることを踏まえ、企業側も候補者の志望度を育てる姿勢が求められると説明されています。候補者の意欲は面接を通じて常に変動するため、心理的な安心感をいかに提供できるかが重要な鍵になります。
本章では、面接官の自己開示が信頼関係を構築するうえで有効であることが紹介されています。面接官自身の入社動機やキャリアの話は、候補者に「この会社での未来」をイメージさせる具体的な材料になります。また、逆質問への誠実な回答、不安の解消、価値観のすり合わせなど、候補者が主体的に意思決定できる状況づくりが丁寧に解説されています。辞退防止の観点からも、候補者が「大切にされている」と感じることが極めて重要だと示されています。
加えて、志望度の高め方、意思決定のタイプ別アプローチ、競合他社との比較を促す方法など、実際の選考で起こりうる場面に対応した具体的な工夫も含まれています。内定辞退の原因や、オンライン採用での動機形成の難しさなど、現代の採用に不可欠な視点も網羅されています。
第5章 よい採用面接を目指す 採用戦略の立て方
最終章では、面接を単独のイベントとして捉えるのではなく、採用活動全体の戦略の中に位置づける視点が詳しく語られています。採用市場の状況によって求められるアプローチは変わり、企業が従来のやり方に固執すると、採用の失敗を繰り返す原因になると指摘されています。新卒と中途の面接の違い、適性検査の選び方、面接の回数設定など、採用計画の全体設計が丁寧に整理されています。
さらに、書類提出の在り方、面接官の役割区分、人数の過不足による弊害、アウトソーシングの適切な利用など、実務的な判断ポイントが網羅されています。これにより、面接の質だけでなく、採用プロセス全体の効率や候補者体験を高めるための戦略的思考が身につく構成になっています。
また、採用活動におけるKPI設定やモニタリングの重要性、辞退率の予測、再面接の扱い、内定取り消しのリスク管理、適正な採用コストの考え方など、採用を継続的に改善するための視点も提示されています。この章を読むことで、採用を「属人的な活動」から「企業全体の戦略資源」に進化させるための基盤が理解できます。
対象読者

本書は、採用に関わる立場や経験年数を問わず、多様な読者層に向けて書かれた実務書です。採用は人事部門だけの仕事ではなく、現場の管理職や経営者、さらには候補者本人にとっても人生に大きく影響する重要なテーマです。そのため本書は、評価する側・される側の両方の視点を意識した内容構成となっています。
特に想定されているのは、次のような立場の人たちです。
- 人事・採用担当者
- 現場で面接官を任されている管理職
- これから面接官になる若手社員
- 採用戦略を根本から見直したい経営者
- 転職・就職活動を控えるビジネスパーソン
以下では、それぞれの立場の人にとって、本書がどのように役立つのかを具体的に解説していきます。
人事・採用担当者
採用の中心を担う人事担当者にとって、本書は「面接の精度を高めるための基礎」と「実務に応用できる評価の型」を同時に学べる点が大きな価値になります。面接が広く使われているにもかかわらず、評価精度が高くないという現実を踏まえ、なぜ誤りが起きるのか、どのように改善すべきかを体系的に理解できるため、属人的な判断から組織的な採用へ移行したい担当者にとって必読の内容です。
また、候補者の志望度形成や辞退防止、さらには採用KPIによるプロセス管理など、採用活動全体を俯瞰する視点が得られます。人事担当者の役割は評価だけでなく、「会社としてどのように選ばれるか」を設計することにも及びます。本書はその両面をカバーしており、採用成果を安定させたい担当者にとって強力な支えとなります。
現場で面接官を任されている管理職
管理職は、普段の業務でメンバーを見る経験が豊富である一方、面接となると「直感」や「価値観の合致」で判断してしまう傾向が強いとされています。本書は、そうした思い込みによる誤評価を防ぐために、事実に基づいた質問方法や、第一印象に左右されない評価方法を具体的に示しており、初めて面接官を任された管理職でも再現可能な知識として身につけることができます。
さらに、管理職には「評価者」であると同時に「会社の顔」として候補者の志望度を高める役割も求められます。本書には、自己開示を通じて信頼を形成したり、候補者の不安を解消したりする方法が解説されており、選ぶ姿勢から一歩進んで“選ばれる組織づくり”に貢献したい管理職にとくに適しています。
これから面接官になる若手社員
若手社員にとって面接は未知の業務であり、「何を聞けばよいのか」「どこを判断すべきか」という不安がつきまといます。本書は、面接が経験やセンスではなく、学べる技術であることを明確にし、第一印象に惑わされない判断方法や、事実を引き出す質問の仕組みなど、基礎から理解できる内容になっています。経験が浅くても質の高い面接ができるようになる点が、大きな魅力です。
また、若手社員が面接官を経験することは、自分自身の仕事観や人材観を整理する機会にもなります。本書は、候補者との対話を通じて「人の行動特性を見る力」を磨く方法を示しており、それは日常業務や将来のマネジメントにもつながる重要なスキルです。未来のリーダー候補として成長したい若手にこそふさわしい一冊です。
採用戦略を根本から見直したい経営者
採用を経営課題として捉える経営者にとって、本書がふさわしい理由は、面接を「個人技」ではなく「組織の仕組み」として設計する視点が一貫して示されている点にあります。売り手市場・買い手市場という環境変化、新卒と中途の見極めの違い、採用コストの考え方など、経営判断に直結する内容が随所に盛り込まれています。
また、面接官の人数が増えすぎることで精度が下がることや、内定取り消しを“実質的なリストラ”と捉える倫理的な視点など、人材を「経営資源」として扱うために欠かせない考え方も示されています。採用を現場任せにせず、経営レベルで再設計したい経営者にとって、非常に実務性の高い一冊です。
転職・就職活動を控えるビジネスパーソン
求職者にとって本書は、企業がどのように自分を評価しているのかを「採用側の視点」で理解できる希少な教材です。自己PRよりも事実が重視される理由、第一志望かどうかを聞くことに意味が薄い理由、志望度がどう変動するかなど、面接の裏側で起きている思考プロセスがわかるため、表面的な面接対策ではなく本質的な準備が可能になります。
また、辞退されやすい理由や候補者の不安点など、採用プロセス全体の構造が理解できるため、自分がどこで評価され、どこで不利になるのかを事前に予測できるようになります。自分のキャリア観や強みを正しく整理し、企業と対等な立場で向き合いたいビジネスパーソンにとって大きな武器となる一冊です。
本の感想・レビュー

面接に「正解」があると初めて知った衝撃
正直なところ、面接というものに「正解」が存在するとは、これまで考えたこともありませんでした。人を相手にする以上、曖昧で感覚的なものであり、経験を積んだ人の勘や直感に頼るしかない世界なのだと思い込んでいたのです。しかし本書を読み進めるうちに、その思い込みが静かに、しかし確実に崩れていきました。
著者は、面接を2万人以上行ってきたにもかかわらず、「一度も簡単だと思ったことがない」と語ります。その言葉はとても重く、同時に強い説得力を持っていました。さらに、本書では面接が本来持っている限界や、評価精度が決して高くないという現実を真正面から示したうえで、それでも精度を少しずつ高めていくための考え方が、100の提言として体系化されています。
面接は感覚の世界だと思っていた自分にとって、「理論と実務の積み重ねで近づける世界なのだ」と知ったことは、大きな衝撃でした。正解が存在するというよりも、「正解に近づく道筋がある」と知れたことが、この本から得た最初で最大の発見だったように思います。
感覚頼りの面接がいかに危険かがわかった
読む前の私は、面接とはある種の“人を見るセンス”のようなものだと考えていました。相手の雰囲気、話し方、受け答えのテンポ、そうした感覚的な情報から総合的に判断するものだと思っていたのです。しかし本書は、その感覚がいかに危ういものであるかを、淡々と突きつけてきました。
「面接はポピュラーな手法だが、実は評価精度が高くない」という言葉は、非常に印象に残っています。これまで当たり前のように使われてきた手法が、万能ではないどころか、むしろ誤った判断を生み出しやすい構造を持っているという指摘に、強い緊張感を覚えました。印象や第一感による評価が、いかに簡単に偏りや錯覚を生み出してしまうかが、章全体を通して繰り返し示されています。
自分もまた、知らず知らずのうちにその「罠」に足を踏み入れていた一人だったのだと、読みながら何度も思わされました。感覚だけに頼った面接は、候補者だけでなく、自社にとっても大きなリスクになる。そう気づかされたことで、これまでの自分の面接の在り方を、素直に見直そうと思えるようになりました。
構造化面接の考え方が実務に刺さった
最も「実務にそのまま持ち帰れる」と感じたのが、構造化面接に関する考え方でした。質問内容や評価基準をあらかじめ整理し、同じ物差しで複数の候補者を見るという発想は、言われてみれば当然のことのようにも思えます。しかし、実際の面接現場では、それがいかに守られにくいかも同時に実感しました。
その場の流れで質問が変わり、話が盛り上がった部分ばかりが記憶に残り、評価の軸が無意識に揺れてしまう。そんな面接を、これまで何度も繰り返してきた気がします。本書が示す構造化面接は、そうした曖昧さをできる限り排除し、評価の再現性を高めるための考え方なのだと理解できました。
「評価に適しているが動機形成には難がある」と、長所だけでなく弱さも書かれていた点も印象的でした。理論を万能として扱わず、現実の採用とのバランスを取ろうとする姿勢が、現場の感覚にとても近く、だからこそ実務に強く刺さったのだと思います。
第一印象で人を判断していた自分への反省
この章を読んで、一番強く浮かんだ感情は「反省」でした。面接において第一印象が大切だと、私はどこかで無条件に信じてきました。入室の仕方や声のトーン、姿勢といった最初の数秒の情報が、その人の全体像を映しているような錯覚を持っていたのです。
しかし本書では、第一印象は評価ではなく「仮説」にすぎず、その後の事実によって検証されるべきものだと明確に書かれています。この一文を読んだとき、自分がいかに早い段階で結論を出し、その後の話を都合よく解釈してきたかに気づきました。
印象という曖昧な感覚に、人の評価を委ねてしまう怖さ。その危うさを、これほど静かに、しかしはっきりと教えてくれる本は初めてでした。第一印象に縛られない姿勢こそが、面接には必要なのだと、強く心に残っています。
自己PRよりも「事実」を問う重要性に納得
面接で自己PRを聞くことは、ごく当たり前の流れだと思っていました。自分をどう語るかは、その人の能力の一部であり、そこに人材としての魅力が表れると考えていたからです。しかし本書は、その前提をあっさりと覆してきました。
聞くべきなのは、思っていることやアピールではなく、「やってきたこと」という事実だという視点は、とても腑に落ちるものでした。人は誰でも、自分を良く見せようとしますし、うまく語れる人ほど評価されやすいのが現実です。しかし、それがそのまま仕事の力と一致するとは限らないという指摘には、強くうなずかされました。
どんな場面で、どんな役割を担い、どんな行動を取ったのか。事実を丁寧に積み上げていくことで、初めて見えてくる人物像があるのだと、本書は教えてくれます。面接を見る目が、ゆっくりと「語り」から「行動」へと移っていく感覚がありました。
圧迫面接が百害あって一利なしと理解できた
圧迫面接については、どこかで「強さを見るために必要な場面もあるのではないか」と思っていました。厳しい質問にどう耐えるかで、その人の粘り強さや精神力が見えるのではないかと、無意識に考えていたのです。
しかし本書では、圧迫面接は評価の精度を下げ、面接の目的そのものを阻害すると明確に断じられています。その理由として、恐怖や緊張の中では、人は本来の姿を出せなくなるという点が示されており、読んでいるうちに、自分のこれまでの考えがいかに短絡的だったかを思い知らされました。
面接は人を追い込む場ではなく、人を理解する場である。その前提に立てば、圧迫という手法が本質からズレていることは、もはや疑いようがありません。強さを測るつもりで、実は何も測れていなかったのではないかという問いが、ずっと胸に残っています。
候補者の本音を引き出す空気づくりが学べた
候補者の緊張をほぐすことが、面接の精度を高めるという発想は、とても新鮮でした。これまで私は、面接とはある程度の緊張感があるものだと思っていたからです。緊張の中でこそ本音が出る、というような思い込みもどこかにありました。
しかし本書では、アイスブレーキングが候補者のためだけでなく、面接担当者自身のためにもなると書かれています。場の空気が和らぐことで、自然な対話が生まれ、結果として多くの情報が引き出せるという考え方は、非常に実務的で現実的だと感じました。
緊張を解くことは甘やかすことではなく、正しい情報を得るための準備なのだという視点は、面接という行為の意味を大きく変えてくれたように思います。空気づくりもまた、面接官の重要な仕事なのだと、初めて腹落ちしました。
面接官としての姿勢が根本から変わった一冊
この本を読み終えたとき、私は「面接官であること」の重さを、これまで以上に強く感じていました。人の人生と、会社の未来。その両方に関わる場に立っているという実感が、静かに押し寄せてきたからです。
著者自身が、2万人以上を面接してきてもなお「怖さ」を感じ続けているという事実は、面接という行為の本質を象徴しているように思います。経験を積めば簡単になる世界ではなく、むしろ深く関わるほどに、その難しさが見えてくる世界なのだと感じました。
それでも著者は、だからこそ学び続ける価値があると語り、100の提言という形で知見をまとめています。その姿勢に触れたことで、面接官としての自分もまた、慢心せず、考え続けなければならないのだと強く思わされました。本書は、面接技術だけでなく、姿勢そのものを問い直してくれる一冊だったと感じています。
まとめ

ここまで『採用面接100の法則』の内容や特徴を紹介してきましたが、本書は単なる面接ノウハウ集ではなく、「人を見極めるとはどういうことか」「採用は誰のための行為なのか」といった本質にまで踏み込んだ一冊であることが伝わってきます。採用の失敗に悩んでいる方はもちろん、これから面接に関わるすべての人にとって、考え方の軸を整えるきっかけになるはずです。
最後に、本書を通して押さえておきたいポイントを整理します。
- この本を読んで得られるメリット
- 読後の次のステップ
- 総括
面接は「人を選ぶ場」であると同時に、「人と向き合う場」でもあります。本書を通じてその重みと向き合うことで、採用に対する姿勢そのものが変わり、より納得感のある選択へとつながっていくでしょう。
採用に関わる立場にいる方も、これから面接を受ける側の方も、本書の内容はきっと長く役立つ指針になります。
この本を読んで得られるメリット
ここでは、本書を手に取ることで得られる代表的な利点を整理してみましょう。
評価の精度が飛躍的に高まる
本書の中心となるのは“事実に基づいた評価”という考え方です。多くの面接が第一印象や自己PRに引きずられがちな一方で、本書は「候補者の語る内容が具体的か」「行動の背景にどんな動機があるのか」など、判断材料としての適切な情報の引き出し方を丁寧に解説しています。思い込みやバイアスに左右されやすい評価プロセスを構造的に理解できるため、誰が面接しても大きなズレが生まれにくくなり、組織としての評価の一貫性が向上します。また、面接の精度が高まることで採用ミスを減らし、入社後の活躍確率を高める効果にもつながります。
候補者との信頼関係が築きやすくなる
本書では、面接とは「判断の場」であると同時に「関係構築の場」でもあることを強調しています。特に、候補者が緊張する理由や志望度が揺れ動く心理プロセスについて解説されている点は非常に実践的です。面接官自身が適度に自己開示することで信頼が生まれやすくなることや、候補者が抱いている不安を解消するアプローチなど、コミュニケーション技術として活用できる知識が豊富に含まれています。単なる質疑応答の形式を超えて、対話の質を高めることで企業理解が深まり、辞退率の低下にも寄与するでしょう。
採用活動を“仕組み”で改善できるようになる
本書は面接のやり方だけでなく、採用プロセス全体に目を向けており、採用活動を“再現性のある仕組み”として捉え直す視点を提供してくれます。評価項目を増やすと採用が難しくなる理由、面接官を増やしすぎると判断精度が落ちるメカニズム、KPIによる採用活動の管理方法など、実務に直結する知識が詰まっています。属人的になりがちな採用活動を、誰が担当しても質を保てる体制に変えるための材料がそろっており、組織として強い採用力を育てたい企業には大きなメリットとなります。
候補者から“選ばれる企業”になるための視点が育つ
多くの企業が見落としがちなポイントとして、「志望度は企業が育てるもの」という本書のメッセージがあります。候補者が企業をどう認識するかは、小さな対応や言葉選びの積み重ねで変化するものであり、面接の場こそがその重要な接点になります。自己開示の仕方、逆質問への向き合い方、強みと弱みの伝え方などを通して、企業が候補者にどのように映るかを調整する技術が身につきます。結果として、同業他社と比較されたときの競争力が高まり、辞退を防ぎやすくなる点は、本書ならではの大きな利点です。
採用と組織文化のつながりを理解できる
本書は、採用は単なる人員補充ではなく「組織の未来を形づくる行為」であるという観点を繰り返し提示しています。評価基準の定義方法やカルチャーフィットの見極め方、異質な人材をどう扱うかなど、組織文化との整合性を保ちながら採用するための思考が体系的に整理されています。目先のスキルだけで判断するのではなく、長期的に見て組織の成長に寄与する人材を見抜く視点が身につき、採用担当者だけでなく経営者にとっても有益な知見が得られます。
読後の次のステップ
本書を読み終えた瞬間こそ、知識を「理解」で終わらせず、「行動」に変えていく最も重要なタイミングです。『採用面接100の法則』には、面接の在り方を根本から見直すための視点が数多く示されていますが、それらは実際の現場に落とし込んでこそ真価を発揮します。
ここでは、読後すぐに取り組むべき具体的な次のアクションを、段階的に整理して紹介します。
step
1自分の面接を客観的に振り返る
最初のステップとなるのは、これまで自分が行ってきた面接を、感覚ではなく構造として振り返ることです。本書では、第一印象に左右されやすいことや、自己PRに引っ張られやすい判断の危険性が繰り返し語られています。これまでの面接を思い出しながら、候補者の言葉をどこまで事実として深掘りできていたのか、評価を途中で決めつけていなかったかを冷静に検証することが重要です。この振り返り作業によって、自分の面接にはどんな癖や偏りがあるのかが明確になり、改善すべきポイントが具体化していきます。
step
2質問の仕方を事実ベースに切り替える
次に取り組むべきは、面接での質問そのものの見直しです。本書が一貫して示しているのは、「思っていること」ではなく「やってきたこと」を聞く重要性です。たとえば、価値観や性格を抽象的に問うのではなく、どのような場面で、どのような行動を取り、どんな結果につながったのかという具体的な事実を引き出す質問へと切り替えていくことが求められます。この転換ができるようになると、候補者の話の信ぴょう性や再現性が格段に高まり、入社後の活躍をより現実的にイメージできるようになります。
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3評価と動機形成を分けて考える
多くの面接では、評価と口説きが無意識のうちに同時進行してしまい、どちらも中途半端になりがちです。本書を読んだ後は、この二つを意識的に切り分けて設計することが次の重要なステップになります。評価の時間では冷静に判断材料を集め、動機形成の場面では候補者の不安や迷いに丁寧に向き合うというように、役割を明確にした面接運営を意識することで、面接の精度と志望度の両方を高めることが可能になります。この切り分けができるようになると、面接は単なる選別の場ではなく、採用成功率を高める戦略的なプロセスへと変わっていきます。
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4評価基準を言語化し、共有する
読後にぜひ取り組みたいのが、採用基準の言語化です。本書では、評価項目を増やしすぎることの弊害や、曖昧な基準が判断ミスを生む危険性についても触れられています。これまで「なんとなく良さそう」「雰囲気が合いそう」といった言葉で済ませていた判断を、具体的な行動特性や価値観の言葉に置き換えて整理していくことが重要です。これをチーム内で共有することで、誰が面接しても判断のぶれが小さくなり、採用全体の安定性が高まります。
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5採用を“作業”から“戦略”へ引き上げる
最後のステップは、採用活動そのものの捉え方を変えることです。本書では、KPIの設定、辞退の予兆管理、面接回数の設計、面接官の役割分担など、採用を戦略的に運営するための視点が多数提示されています。これまで場当たり的に行っていた選考を、どこで候補者が離脱しやすいのか、どの工程で問題が起きているのかという視点で見直すことで、採用の再現性は大きく向上します。読後は、面接だけでなく、採用活動全体を一つのプロジェクトとして設計し直す意識を持つことが、次の成長につながります。
総括
書籍『採用面接100の法則』は、面接という誰もが当然のように行っている行為に対して、「それは本当に正しいやり方なのか」という根源的な問いを投げかける一冊です。著者自身が2万人以上の人と向き合ってきた実体験の中で、成功だけでなく数多くの失敗や迷いを重ねてきたからこそ、面接を万能な手段として美化するのではなく、その難しさや危うさまでを正面から描いている点が大きな特徴です。人を見極める行為がいかに不確実で、同時に責任の重い営みであるかを、読者に強く自覚させてくれます。
本書が特に優れているのは、面接を「技量」や「センス」に委ねるものではなく、「構造」と「仕組み」で改善できる対象として整理している点にあります。第一印象や自己PR、圧迫面接、奇抜な質問といった従来の常識を一つずつ解体し、事実に基づく質問、評価基準の設計、バイアスへの対処など、実務で再現可能な形へと落とし込んでいるため、理論だけで終わらず現場で活かせる内容になっています。面接に対する考え方が感覚的なものから論理的なものへと移行することで、採用活動そのものの質が大きく変わっていきます。
また本書は、評価の話だけにとどまらず、候補者の志望度をどう高めるのか、なぜ内定辞退が起こるのか、採用競合とどう向き合うのかといった「選ばれる側としての企業の姿勢」にも深く踏み込んでいます。面接は企業が人を選ぶ場であると同時に、人から選ばれる場でもあるという視点が一貫して流れており、ここに従来の面接本とは一線を画す価値があります。採用という行為が、単なる労働力の補充ではなく、組織の未来を形づくる重要な経営活動であることを、自然と理解させてくれます。
総じて本書は、採用担当者や面接官だけでなく、組織を率いる立場の人にとっても極めて示唆に富んだ実務書だといえます。
面接という日常業務の延長にある行為を通して、人を見るとは何か、組織と人の関係をどう築くべきかという本質的なテーマまで踏み込んでいるからです。
短期的な採用成果だけでなく、長期的な組織づくりの視点を持ちたいすべての人にとって、繰り返し読み返す価値のある一冊として位置づけられるでしょう。
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